DXは進め方が重要!課題を解決しながら企業変革を実現するステップとは?
この記事の目次
DX推進の担当になったものの、「なかなか思うように進まない」というのはよく聞かれる話です。取り組みを本格化するには、何がDXの妨げになっているのかを知る必要があります。
そこで本記事では、企業のDXが進まない理由と、効果的に進めるための方法について説明します。あわせて、DXを実現するためのステップとポイントについても紹介していくので、ぜひお役立てください。
進まない日本企業のDX
日本企業におけるDXの推進状況は、あまり芳しくありません。まずは、その現状と理由について説明します。
国内におけるDX推進状況
IPA(情報処理推進機構)が2021年10月に公開した「DX白書2021」によると、DXに取り組んでいる企業はアメリカが79.2%なのに対し、日本は55.8%でした。
また、スイスIMD(国際経営開発研究所)の「世界のデジタル競争力ランキング」2022年版では、63の国と地域のなかで日本は34位という結果でした。
国内で何らかのDX施策に取り組んでいる企業は半数以上にのぼるものの、海外と比較すると日本のDXはまだまだ遅れているのが現状だといえるでしょう。
日本企業のDXが進まない理由
では、日本企業のDXが進んでいない理由は、どこにあるのでしょうか。
経済産業省がまとめた「DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜」によると、約7割の企業は「レガシーシステムがDXの足かせ」になっていると感じています。DXの基盤となるべき新技術の導入を、老朽化したシステムが阻害しているのです。
また、DXそのものへの理解不足もDXが思うように進まない理由として挙げられます。例えば、経営層がDXの必要性を理解しておらず、「思い切った改革ができない」ようなケースです。従業員のDXリテラシーが低いために、「有望なアイデアが出てこない」といったケースもあります。
DXを進めるには
日本企業がDXへの取り組みを本格化するには、DXそのものへの理解を深めることが先決です。ここでは、「DXそのものへの理解」とは具体的にどのようなことなのかを説明していきます。
– そもそもDXとは何かを知る
– DXの必要性を理解する
– DXにメリットを見出す
そもそもDXとは何かを知る
DX(デジタルトランスフォーメーション)はもともと、明確な定義のない曖昧な概念です。しかし、「企業にとってDXとは何か」と考える場合には、いくつかの定義が存在します。
弊社では、企業にとってのDXをわかりやすく次のように定義しています。
「デジタル技術を活用して顧客に付加価値を与えられる組織・文化を創り続けること」
この定義から、DXは組織全体にわたるドラスティックな変革だということが読み取れるでしょう。単にデジタル技術を導入することが目的なのではありません。また、短期間・単発の改善ではなく、継続的な変革であることがわかります。
そのため、DXの推進では技術ばかりに注目せず、変革の起点となる「人・組織」にフォーカスする必要があるのです。
DXの意味や定義については、こちらの記事でも詳しく説明しているので、あわせて参考にしてください。
DXの必要性を理解する
デジタル技術が急速に進歩し、企業を取り巻くビジネス環境は大きく変化しました。同時に、顧客のライフスタイルやニーズも変わり続けています。
デジタル化された市場は、移り変わりが早いのが特徴です。企業が競争力を失わないためには、デジタル技術とデータにもとづくスピーディな経営判断が求められます。
それでも、市場において現状で優位な立場にある企業は、「DXは必要ない」と考えてしまうことが少なくありません。しかし、すでにDXに取り組んでいる他社との競争を想定しないのはリスクだといえるでしょう。DXに取り組まない企業は、将来的に競合企業に追いつけなくなる恐れがあるのです。
DXの必要性については、こちらの記事でも詳しく説明しているので、あわせて参考にしてください。
DXにメリットを見出す
DXの必要性を理解してもなお、取り組みをスタートできない企業もあります。「競争力を失わないため」というだけでは、前向きな発想とはいえないからでしょう。
DXを進めるには、DXのメリットについて知ることも大切です。例えば、次のようなメリットがあるとわかれば、DXに対して前向きになれるかもしれません。
– 業務効率や生産性が向上する
– これまでよりも価値の高いビジネスモデルを生み出せる
– より柔軟で新しい働き方を実現できる
– 災害発生などによる業務停止のリスクを低減できる
DX推進のメリットについては、こちらの記事でも詳しく説明しているので、あわせて参考にしてください。
課題を解決しながらDXを実現するステップ
DXのメリットを享受するには、進め方が重要です。しかし、DXは企業ごとに固有の取り組みであり、固定的な手順は存在しません。とはいえ、どの企業のDXにも、ある程度は共通する部分があるでしょう。
そこで、DXを実現するために必要となることの多いアクションを、以下の8つのステップにまとめました。
– ステップ1:経営層が変革の意思をもつ
– ステップ2:デジタル技術の知識を獲得する
– ステップ3:現状の課題と解決のアイデアを収集する
– ステップ4:DX実現までのロードマップと評価指標を決める
– ステップ5:社内で人材を育成できる体制を整える
– ステップ6:変革の基盤となるITシステムを構築する
– ステップ7:全社最適の取り組みを進める
– ステップ8:継続的に取り組む
各ステップは必ずしも順番通りに実行する必要はなく、前後したり並行で進めたりしてもかまいません。これらを参考にしながら、自社に最適な手順を構築してください。
ステップ1:経営層が変革の意思をもつ
まずは、経営層がDXに対して本気になることが大切です。あわせて、その意気込みを社内に示すことも経営層の重要な役割だといえます。
DXは全社一丸の取り組みであり、専任チームに「丸投げ」してもうまくいきません。自社のミッションとビジョンにもとづいて、DXで何を達成すべきなのかを明確にし、組織全体で共有する必要があります。また、そうすることでDXが優先度「低」の取り組みとみなされ、後回しにされるのを防げます。
DX推進における経営層の役割については、こちらの記事でも詳しく説明しているので、あわせて参考にしてください。
ステップ2:デジタル技術の知識を獲得する
DXにおいて、デジタル技術は必須の要素です。デジタル技術に関する理解は、DXに欠かせない「リテラシー」の一部だといえます。
DXを進めるには、デジタル技術で何ができるのかを知ることが重要です。それぞれの技術で「実現できること」と「実現できないこと」を具体的にイメージできるようにしておきましょう。またデジタル技術は日進月歩なので、最新技術にキャッチアップすることも大切です。なかでも、AI技術は発展がめざましく、DXの「核」として多くの企業に採用されています。
DXリテラシーについては、こちらの記事でも詳しく説明しているので、あわせて参考にしてください。
ステップ3:現状の課題と解決のアイデアを収集する
DXは、あくまで自社の課題を解決するためのものです。他社の事例をそのまま真似ても、うまくいく可能性は低いでしょう。
DXで解決すべきリアルな課題は、多くの場合、業務の現場にこそあるものです。それらを解決するためのアイデアもまた、現場の発想から生まれる可能性が高いでしょう。このとき従業員にDXの「リテラシー」があれば、デジタル技術の知識と現場のノウハウを結合し、アイデアを実現可能なアクションとして具体化できます。
ステップ4:DX実現までのロードマップと評価指標を決める
DXの適切なアクションを決めるには、自社の現状を把握しておかなければなりません。さまざまな分析手法(フレームワーク)を用いて、DXで目指すべきゴールと現在の状況とのギャップを確認しておくのです。コンサルタントの力を借りて、客観的な視点を取り入れながら分析するのも一つの方法でしょう。
現状を把握できたら、ゴールまでに必要な中間目標(マイルストーン)を設定します。あわせてKGI・KPIなどの評価指標も設定し、達成状況を判定できるようにしておくとよいでしょう。
現状把握とマイルストーンの設定については、こちらの記事でも詳しく説明しているので、あわせて参考にしてください。
ステップ5:社内で人材を育成できる体制を整える
DXは、企業にとって長期的な活動となります。どこかの部署だけが頑張ればよいと考えていては、組織に定着させることはできません。
組織的・継続的にDXに取り組むには、人材育成の体制づくりが重要です。まずは、社内学習の仕組みを提供するところからはじめるとよいでしょう。課題解決に必要な知識を従業員が自発的に学べるように、DXやデジタル技術に関する学習教材を充実させるのがおすすめです。
DXの実現に適した組織づくりについては、こちらの記事でも詳しく説明しているので、あわせて参考にしてください。
ステップ6:変革の基盤となるITシステムを構築する
DXは全社的な取り組みであるため、その基盤となるITシステムも全社統一のものとしなければなりません。スピーディで的確な経営判断は、一元管理されたデータによって可能になります。現行システムが部門ごとに分断されているケースでは、システムとデータの統合が必要となるでしょう。
また、DXを継続させるには、ニーズに応じて改変できる柔軟なシステムであるほど望ましいといえます。柔軟性の低いレガシーシステムを抱えている場合は、思い切った刷新が求められることもあります。
ステップ7:全社最適の取り組みを進める
ITシステムに限らず、DXのアクションも全社的に統合していく必要があります。現場から生まれた課題解決のアイデアを、自社のミッションやビジョンと整合させていくということです。DXを現場ごとバラバラの最適化で終わらせず、全社最適の取り組みとするのが狙いです。
その過程では、さらなる人材育成が必要となるでしょう。全社的なリテラシー教育を実施し、組織としての基礎力を引き上げていきます。また、部門を超えてDXを牽引できる人材を育成し、DX推進のリーダーになってもらうのです。
ステップ8:継続的に取り組む
DXへの取り組み方にも、柔軟性をもたせることが大切です。DXの推進状況を定期的に見直し、軌道修正することが継続的な取り組みを可能にします。それには、マイルストーンごとに設定しておいた評価指標が役立つでしょう。
DXを成功させている企業の多くが「アジャイル」を取り入れている点も、注目に値します。スモールスタートで小さな改善を積み重ねていくことで、計画した時点では予測するのが難しい不確実性を柔軟にコントロールできる手法です。
アジャイルな手法については、こちらの記事でも詳しく説明しているので、あわせて参考にしてください。
経済産業省によるDX推進の参考資料
ここまで、DXを実現するステップについて説明してきました。DXを進めるうえでは、経済産業省による以下の資料も参考になるでしょう。
– DX推進ガイドライン
– DX推進指標
DX推進ガイドライン
経済産業省による「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」は、先に公開された「DXレポート」での提言を受けて策定された資料です。DXを実現するためのアプローチや、必要なアクションについて整理されています。
本ガイドラインは、「DX推進のための経営のあり方、仕組み」と、「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」の2部構成になっています。日本企業の現状を知るとともに、変革を失敗に終わらせないために経営者が押さえるべきことを理解するのに役立つでしょう。
DX推進指標
「DX推進指標」もまた、「DXレポート」での指摘などを踏まえて策定された資料です。自社のDXが適切に進んでいるかどうかについて、自己診断を実施できます。
「DX推進ガイドライン」に対応する2部構成となっていて、それぞれに定性指標と定量指標が設定されています。また、DX推進の成熟度を、それぞれ6段階で評価できるようになっているのが特徴です。
IPAでは、この指標にもとづいて各社の自己診断結果を収集・集計しています。これをベンチマークとすれば、自社のDX推進状況を他社と比較できるでしょう。こうした客観的な状況把握は、次のアクションにつながる気づきを得るためのヒントとなるものです。
DX推進のポイントを3つ紹介
DXは適切な進め方をしないと、部門ごとにバラバラの改善しかできなかったり、一過性のブームで終わってしまったりといった失敗につながることが少なくありません。DXの実現に向けてすべての人が一丸となり、継続的に取り組むには、押さえるべきポイントがあります。
ここでは、DXの実現に向けた進め方のポイントを3つ紹介します。
– 自社にフィットしたブレのない戦略を
– DXに取り組む全社員にリテラシー教育を
– システムの内製を目指せる体制を
自社にフィットしたブレのない戦略を
DXには、他社の事例をそのまま採用したような施策ではなく、自社の経営戦略にフィットする取り組みが求められます。経営戦略から乖離したDXは、方向性を見失いがちで失敗につながりやすいからです。
重要なのは、自社の「あるべき姿」や「目指すべき理想像」にもとづいて、組織としての強みや特徴を活かせる施策を実行していくことです。このとき、投資対効果を最大化することがポイントとなるでしょう。効果を出し続けることが、持続的な変革を可能にするからです。
とはいえ、客観的な視点がなければブレのない戦略を維持することは難しいでしょう。弊社の「DX戦略コンサルティング」サービスでは、お客様に最適なDX戦略の立案をサポートしますので、ぜひご活用ください。
DXに取り組む全社員にリテラシー教育を
DX実現までの各ステップには、人材育成が重視される場面が多くあります。デジタル技術に関する知識の獲得からはじまり、従業員が自己学習できる仕組みづくりや更なる教育によってリーダーを育成するまで、さまざまな教育プログラムが必要になるでしょう。
DXが推進力を失わないようにするためには、全社一斉のリテラシー教育を実施できるかどうかがポイントです。DXの「わからない」をなくすとともに、現場の従業員がDXを「自分ゴト」ととらえ、積極的に活動できる土壌を作ることが求められます。
弊社ではDXリテラシーの向上をはかるとともに、現場視点のアイデアを吸い上げて収益化につなげられる「DXリテラシー講座」を提供していますので、ぜひご活用ください。
システムの内製を目指せる体制を
柔軟に改変できる全社統一のITシステムを構築するには、内製が望ましいといえます。そのためには技術者の確保が欠かせませんが、デジタル技術を変革に活かせるスキルを備えた人材は社会的にも不足しているのが現状です。そのため、今いる人材を自社が求める「DX人材」へと育成していくのが堅実な方法でしょう。
とはいえ、人材育成は時間を要するものです。現時点では外部ベンダーのリソースを活用しながら、ITシステムの構築と人材育成を並行せざるを得ない現実があります。ゆくゆくは内製化することを目指しつつ、自社にノウハウが溜まる形で外部ベンダーを活用していくのがポイントです。
弊社では、AI受託開発とDX/AIの技術アドバイスをおこなう「AI実装支援」サービスを提供しています。内製化に向けたノウハウを獲得しながら、スピーディな開発を実現したいお客様に最適なサービスですので、ぜひご活用ください。
まとめ:DXの実現には人材育成を軸にした進め方が重要
DXは、デジタル化が進む市場を生き抜くために企業に求められる、全社的・継続的な変革です。そのメリットを享受するために、自社に適したステップで取り組みを進めていきましょう。加えて、DXには組織をあげた人材育成計画が欠かせません。全社一斉のリテラシー教育には、「DXリテラシー講座」をご活用ください。
また、効果的な人材育成のためには、ひとりひとりにフォーカスしたプランニングとフォローアップの体制も重要です。個々の成長をトラッキングしながら自社に必要な人材を育てることを可能とする、弊社の「DX人財プランニング」サービスもあわせてお役立てください。
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