日本企業のDXはなぜ遅れている?課題を解決しDXを力強く推進する方法 - 株式会社STANDARD

日本企業のDXはなぜ遅れている?課題を解決しDXを力強く推進する方法

DX・AIプロジェクト推進

この記事の目次

  1. 国内におけるDXの取り組み状況
  2. 日本企業が解決すべき経営課題と解決方法
  3. DX推進を阻む3つの壁とは?
  4. 自社DXを力強く推進する方法
  5. まとめ

日本のDX推進が遅れている理由の深い所には「経営層の自社DXへのコミットメントが弱い」という課題が潜んでいます。今回は日本全体のDXの現状、自社DXの推進が遅れてしまう理由について解説し、自社DXを力強く推進するために経営層の理解が必要であることを説明していきます。

国内におけるDXの取り組み状況

DXへの取り組み状況は、日本全体としてどうなっているのでしょうか。自社におけるDXの課題解決について考える前に、まずは国内におけるDXの取り組みの現状について知っておくことが大切です。

経済産業省が「DXレポート」で言及した日本企業の経営課題

経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート」では、日本の多くの中小企業が直面している「レガシーシステムの残存」「データ活用基盤の構築」といった経営課題に言及があり、DXの取り組み以前の問題に焦点が当てられました。とりわけ2025年までにDXが実現できない場合、日本全体で2025年以降毎年12兆円の経済損失が生じる可能性があること(2025年の崖)が話題となり、多くの企業がDXと向き合う機会となりました。

しかし一斉にスタートしたように思われた企業のDXの取り組みは、多くの企業で「未着手」あるいは「散発的な施策に終わっている」現状が「DXレポート2」(2020年12月発表)により分かっています。こうした現状に対し、経済産業省は企業の経営者(経営層)が「DX=レガシーシステムの刷新」「現時点で競合優位性が確保できていればこれ以上のDXは不要である」といったように本質ではない解釈を行ったことに起因している、と分析しました。またDXレポート2で参照された調査は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)による調査で、DX推進指標の自己診断結果を提出した500社の回答結果をもとに作成されています。したがって水面下には「自己診断を行っていない」あるいは「自己診断を行える状況にない(DX未着手)」企業が数多く存在すると推測でき、日本全体におけるDXの取り組みは不十分であると解釈できるでしょう。

2022年の調査ではDXに取り組む日本企業は55.9%に増加

2022年11月に一般社団法人日本能率協会が発表した「日本企業の経営課題 2022」の調査結果によると、調査対象689社のうち、DXに取り組んでいる企業は55.9%でした。実に半数を超える企業が、すでに何らかのDX施策を実行しているという結果です。また、2020年の同調査では28.9%だったことから、DXに取り組む企業がここ数年で大幅に増加しているとわかります。

これらの結果を規模別で比較してみると、すでにDXに着手している大企業(従業員数3,000人以上)は82.1%、中堅企業(従業員数300人以上3,000人未満)は58.3%、中小企業(従業員数300人未満)は36.1%でした。

一方、取り組みの成果状況については「おおいに成果が出ている」「成果が出ている」「ある程度の成果が出ている」と回答した企業が70.7%となっています。ただし、このうち「ある程度の成果がでている」と回答した企業が53.8%を占めていることから、大きな成果に至っていない企業がまだまだ多い現状がうかがえる結果となりました。

日本企業が解決すべき経営課題と解決方法

日本企業が解決すべき経営課題と解決方法

日本がDX後進国となっている理由には、主に以下の5つの経営課題があります。

  • 課題1:レガシーシステムの保守・運用が足かせになっている
  • 課題2:ベンダーロックインの状況が迅速な経営判断を阻害している
  • 課題3:DXを主導できる人材が不足している
  • 課題4:経営層のDXへの理解が不足している
  • 課題5:DXの取り組みが部署間で連携できず継続が難しい

いずれの課題も経営層による自社DXへのコミットメントが弱いことが原因で放置されるものといえます。DXの実現に向けた取り組みはこれまでの課題や困難を乗り越える機会となるため、DX推進が遅れている企業の経営層はDXとの向き合い方を改める必要があるでしょう。

ここからは、それぞれの課題とその解決方法について説明していきます。

課題1:レガシーシステムの保守・運用が足かせになっている

DXレポートでも取り上げられたように、日本の約8割の企業が「レガシーシステム刷新の課題」を抱えています。レガシーシステムが残存していることで、レガシーシステムの保守・運用に多くのIT人材(人的リソース)が割かれ、自社DXを力強く推進する適切な人材が確保できなくなってしまいます。またレガシーシステムの保守・運用は属人性が高く、維持管理コストが高騰する懸念があるため、早急に改善する必要があります。企業の経営層またはDX推進者はレガシーシステムの刷新、あるいは塩漬けといった判断を行い、デジタル競争時代に柔軟に対応できるITシステムの構築に着手しましょう。

関連記事:IT化とは?失敗しない進め方やDXとの違いをわかりやすく解説!

解決方法1:ITインフラに求められる条件を明確にする

同じシステムを長期間にわたり使用しているからといって、そのすべてがレガシーシステムだとは限りません。ポイントは、今後も使い続けるべきシステムなのか、刷新すべきシステムなのかを見極めることだといえます。

レガシーシステムの問題点は、「機能の追加や変更をするのに余計な手間がかかる」「セキュリティを維持して使い続けようとするだけでもコストがかさむ」など無駄が大きいことです。一方、DXの基盤とするシステムに求められるのは機能の追加や変更を素早く低コストで行える「柔軟性」と、全社的なデータ活用のための「一貫性」を備えていることだといえます。これらの条件を満たせないシステムは、DXを機に刷新を検討すべきでしょう。

関連記事:DX推進に役立つデジタルツールの選び方と独自システム構築のポイント

課題2:ベンダーロックインの状況が迅速な経営判断を阻害している

自社の基幹システムの保守・運用をベンダー企業に丸投げしている企業は多いことでしょう。以前は自社にIT人材を抱える必要がない点でメリットがありましたが、DX時代においては長期的なシステム運用計画がDX推進の足かせとなる場合があります。とりわけ自社の基幹システムをベンダー企業の独自製品に依存している場合、データの自由な取り出しや、市場環境の変化にともなうシステムサイドの変更・調整などに時間がかかり、迅速な対応が遅れてしまいます。結果的に「他サービス・システムとの連携がうまく行かない」「システム自体の移行が難しい」といった状況を招き、経営アジリティが低下してしまうのです。「DXを推進したくても、DXを推進するためのITシステムが構築できない」という状況はベンダーロックインによって生まれることがあります。

解決方法2:ITシステムの内製化を見据えて体制を整える

ベンダーロックインは、DXの基盤となる重要なシステムの開発やメンテナンスを社外のリソースに委ねてしまっている状況だといえます。「社内にリソースがないから」というのが、こうした状況に陥ってしまう要因の場合も少なくないでしょう。しかし、「柔軟性」と「一貫性」を備えたシステムの構築には、内製するのが理想的だといえます。すぐには難しい状況だとしても、内製化を見据えた開発体制を整えていくことはできます。そのためには、ITベンダーとの関係性を見直し、「共創関係」を模索していくことが肝心です。

関連記事:DXの内製化はなぜ必要?注目される背景と内製化を成功に導く秘訣をご紹介

課題3:DXを主導できる人材が不足している

様々な分野・業界でDXの動きがありますが、DXの取り組みはここ5年程度で出てきたものであり、DXを経験している人材を採用・確保するのは難しいのが実情です。したがって多くの企業が自社DXを手探りで始めており、自社でDX人材を育成している状況があります。DXを主導するDX人材は①DXプロジェクトを推進する管理職や経営層と、②DXの現場を支える技術者の2つに大きく分かれるため、それぞれの役割を理解した上で適任者を社内から選定する必要があるでしょう。以下の記事では自社でDX人材を育成する社内研修方法を紹介しています。

関連記事:DX推進の人材は育成できる!即戦力を生み出す社内研修に必要な条件とは

解決方法3:継続的な社内教育でDX人材をさらに増やす

DXの人材不足を解消するには、継続的な社内教育が効果的です。DXへの取り組みは、はじめは小規模な推進チームを中心とした施策でスタートして、しだいに組織全体へと広げていくケースが多いでしょう。そのため、DXのための人材育成を単発の施策だと考えてしまうと、DXが本格化していくにしたがって人材不足の課題に繰り返し直面することになってしまいます。また、DX人材の採用が難しい状況は、今後もしばらくは変わらないと予想されています。したがって、DXを牽引できる人材を、社内でコンスタントに育てていける環境づくりが重要だといえるのです。

関連記事:DXエンジニアの不足を解消!人材が社内で育つ企業になるには?

課題4:経営層のDXへの理解が不足している

経営層のDXに対する理解不足によって、自社DXの取り組みが「進まない」あるいは「散発的な施策に終始している」という状況が生まれてしまいます。後述するようにDX推進には3つの壁(アイデアの壁、投資判断の壁、技術開発の壁)があり、いずれも経営層によるDXへのコミットメントがあって初めて乗り越えられる壁となります。まずは様々な業界・分野で求められているDXとは何か、自社に必要なDXとは何か、といった事柄に経営層が関心を持つことが大切です。

解決方法4:組織のビジョンを経営者が自ら示す

DX推進によくある壁を乗り越えて施策を前進させるには、経営層と現場が一丸となって取り組むことが大切です。そのためには、経営者がDX実現に対して強い意欲をもつとともに、そのことを自ら示していく必要があります。まずは、DXによって実現すべき組織のビジョンを明確化しましょう。そして、自分の言葉で従業員や関係者に説明し、同じビジョンを共有できるようにするのです。あわせて、DXを推進できる現実的な組織体制を構築し、壁を乗り越えられるだけの力を現場に与えることも重要だといえます。

関連記事:【DX推進】企業変革における経営層の重要な役割とは?

課題5:DXの取り組みが部署間で連携できず継続が難しい

自社DXは一部署・部門だけの改革で成功することはほとんどなく、社内のあらゆる部署・部門を巻き込んで成立します。したがって社内全体のDXリテラシーが低い場合(あるいはDXリテラシーの程度が可視化できない場合)、様々なシステム・サービスの連携や、中長期的なDX推進スケジュールへのコミットメントが中途半端なものとなり、DXの取り組みが継続しません。よく言われる「DXの取り組みが散発的なものに終わった」という現象は、社内全体のDXリテラシーが低いことで起こります。DX推進に関わる人材は予期せず増えることもあるため、予め「全社的なDXリテラシーの向上を図る講座・ワークショップ」等を計画することがポイントとなります。

解決方法5:DXリテラシーの本質を知る

DXが散発的な取り組みで終わってしまう要因がDXリテラシーの低さにあるとすれば、DXリテラシーを向上させることが継続的なDXにつながるといえます。ただし、この施策を適切に進めるには、事前に「DXリテラシーとは何か」について知っておく必要があるでしょう。ごく簡単に説明するなら、「なぜ企業がDXを必要とするのか」を理解し、「最新のデジタル技術で何ができるのか」を把握したうえで「実行可能なアイデアを出せる能力のこと」だといえます。より詳しくは下記の関連記事で確認してみてください。

関連記事:DXリテラシーとは? | 誰に必要なのか、何を学ぶことなのか?徹底解説!

DX推進を阻む3つの壁とは?

DX推進を阻む3つの壁とは?

日本がDX後進国となっている理由は先述した通りですが、いざ自社DXを推進する折になって直面する壁が3つあります。

  • アイデアの壁:どのような技術をどう使えばよいのか分からない
  • 投資判断の壁:実現性や投資対効果に不安が残り投資に踏み切れない
  • 技術開発の壁:開発リソースや技術力の不足によりプロジェクトがうまく進まない

いずれも越えるべき壁といえますが、最初に越えるべき壁は「アイデアの壁」です。まずはDXで主に用いられるAIやRPAといった最新技術で何ができるのか、そして自社と同じ事業を展開する企業の事例はどのようなものなのか、を知ることから始める必要があります。自社が実現したいDX目標を立てた後、どの技術が必要で、どんな投資を行うべきなのか、を検討していきます。とはいえ初めて取り組むDXの推進計画は「プロの意見を聞きたい」というのが本音かと思いますので、弊社のDX戦略コンサルティングの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

自社DXを力強く推進する方法

いざ自社DXを推進するにあたって、目の前には先述した3つの壁が立ちはだかります。こうした困難を力強く乗り越えていくには、自社DXをいくつかのステップに分けて考えることが大切です。まずは①アイデアの壁を越えるために、DXリテラシーを向上させるワークショップを計画し、自社DXの事業アイデアの解像度を高めていきます。次に②DX推進に意欲的な人材を選定し、自社主導のDXを推進するためのチーム・プロジェクトを立ち上げましょう。そこで③事業アイデア実現のために必要な人材・技術を特定し、これらの獲得に向けた取り組みを推進します。

最後に自社DXに必要な要素を簡潔にまとめましたので参考にしていただければと思います。

  • DXリテラシーの向上:全社的なDXリテラシーの向上が部署・部門連携を下支え
  • DX戦略の策定:事業アイデアを経営戦略に落とし込む
  • 現場でのコミット:DX推進に意欲的な人材の選定・育成
  • 技術開発リソース:DX推進に必要な技術の開発・運用を担う人材の選定・育成

まとめ

日本のDXの推進状況は、2018年に経済産業省からDXレポートが発表されて以来好ましくない状況が続いています。しかしこうした状況下でも、着実に自社DXを計画し、ステップを進めている企業が存在します。市場における競合優位性をいち早く確保すべく、まずは全社的なDXリテラシーの向上を図り、社内の機運を高める所から始めてみてはいかがでしょうか。株式会社STANDARDが「DXリテラシー講座」にてお手伝いさせていただきます。

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