成功事例で解説!DXを自走させるポイントと実現までのステップとは
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DXを推進してはいるものの、具体的な取り組み内容については手探り状態で「うまくいっているのか自信がもてない」という企業も少なくないようです。近年ではDXの成功事例を耳にする機会も増えてきていますが、他社の事例をそのまま自社に適用するというのも簡単なことではありません。
そこで本記事では、弊社が関わったDXに関する4つの事例をとりあげ、推進のポイントといえる要素を抽出して紹介します。そのうえで、DXの成功につながるアクションを実行のステップに分けて解説していきます。
DXは「人」からはじまる
「DXが思うように進んでいない」と感じるような状況下では、その「理由もよくわかっていない」というケースもあるでしょう。DXへの取り組みを前進させるためには、まずは「DXの起点はテクノロジーではない」という点について理解しておかなければなりません。DXにおいて、さまざまなデジタル技術は欠かせない要素ではありますが、それだけでは足りないのです。
DXとは、ビジネスプロセスや組織・文化までもを含めたドラスティックな変革です。このような変革をもたらす起点となるのは、いつでも「人や組織」であると考えられます。デジタル活用は、そのための「手段」のひとつに過ぎません。この点については、詳しく説明している記事もあるので、あわせて参考にしてみてください。
DX推進を成功させた4つの事例
このあとは、人の力がいかに重要かがよくわかる例として、弊社の関わったDX事例を4つピックアップして紹介します。
- <事例1>運輸業:外部リソースを活用しながら内製化へ
- <事例2>製造業:実践的な技術教育で付加価値の創出へ
- <事例3>金融業:リテラシーの底上げでビジネス課題の解決へ
- <事例4>SIer:DX推進の環境を整え経済産業省の「DX認定」取得へ
<事例1>運輸業:外部リソースを活用しながら内製化へ
運送業大手として知られるヤマト運輸株式会社様は、デジタル技術を活用したシステム開発で運送業の業務改善や効率化などに取り組んでいます。DX推進における、人材の重要性がわかる事例として紹介します。
DXは技術力だけでは進まない
同社には、これまでもAIやIoT、ブロックチェーンなどの技術を活用してきた実績がありました。その延長として、AIを活用したDXについても今後実現したいことが具体的にあったといいます。
しかし、実証実験や試作に必要となる工数に対し、収益化前の段階から稼働できるリソースが不足していました。また、時間のないなかでも「新技術の習得と開発を同時並行で進められないか」という考えがあったそうです。
そこで、このような試作段階からプロジェクト推進が困難な状況を打開するため、弊社にシステム開発への協力をご依頼いただきました。
最新技術の知見と開発リソースがカギに
今回の開発では、弊社が保有する人材と最新技術に関する知見をご活用いただきました。また、「開発後は自社で更新や運用ができるシステムとすること」を前提とし、協力体制のもとに開発を進めました。
その結果、当初想定していた「半年」の開発期間を「1ヵ月」にまで短縮することに成功しています。開発工数の大幅な圧縮にともない、検証スピードもアップしました。また、すべてを外注するのではなく、「一緒に開発する」というスタイルに価値を感じたといいます。開発ノウハウの獲得をあきらめる必要がなかったため、システム運用の難易度も下げることができました。
本事例は、外部の人的リソースを活用する際には、ノウハウ蓄積のためにも人材同士の協力関係が重要だということを示す好例といえるでしょう。より詳しいインタビュー記事もありますので、あわせて参考にしてください。
<事例2>製造業:実践的な技術教育で付加価値の創出へ
株式会社OKIアイディエス様は、メカトロニクスからソフトウェアまでグローバルトップの技術を有し、システム提案やコンサルティング、開発設計から量産製造までをワンストップで提供されている会社です。DX推進において、デジタル技術を習得することの重要性がわかる事例として紹介します。
動機はAIに関するノウハウ不足の解消
AIは、急速な発展を続けているデジタル技術のひとつです。とくに近年では「ディープラーニング」による人工知能モデルの実用化も進み、多方面で活用範囲が広がっています。
半導体の回路設計などを手がける同社でも、顧客からAIに関する相談を受ける機会が増え、AI開発のニーズの高さを認識していました。AIの知見があれば、より高度な提案を具体的に行ったり、これまで以上に幅広い要望に応えたりすることが可能になります。一方で、AIに関するノウハウが社内に不足していると感じる面もありました。
そこで、AIの実践的な知識を獲得するために、弊社の「AIエンジニアリング講座」をご利用いただきました。
技術を知ることでアイデアが生まれやすい土壌に
同社では、講座受講前の段階ではAIについて明確にイメージできているわけではなかったそうです。しかし、講座を通してAIの知識を獲得すると、既存のライブラリやフレームワークを活用してAI機能を実現できるスキルも得られたといいます。
その結果、同社がもつ高い技術力にAIを組み合わせた、具体的なアイデアが生まれるようになりました。AIに対する見方や考え方も変わり、より総合的かつ正しい判断にもとづいて、今後の提案に活かされていく見込みです。
本事例は、社内の人材が新しいデジタル技術の知識を手に入れることで、イノベーションの可能性が広がった好例だといえるでしょう。詳しくは、インタビュー記事もありますのであわせて参考にしてください。
<事例3>金融業:リテラシーの底上げでビジネス課題の解決へ
株式会社Blue Lab様は、みずほフィナンシャルグループ傘下のみずほ銀行とWiL LLC.が、金融業の枠を超えた次世代のビジネスモデル創造・事業化を進めることを目的に設立された会社です。DX推進における、組織的なリテラシーの向上と平準化を行うことの重要性がわかる事例として紹介します。
課題は独学による前提知識のばらつき
同社はこれまでも、事務作業の自動化や営業成績の向上支援のために、AIテクノロジーを積極的に使用しています。必ずしも人がやる必要のない業務をAIによって自動化したり、データ分析の結果を教育に活用したりという施策で金融業務のレベルアップを図ってきました。
一方、さまざまなAIプロジェクトを進めるなかで、メンバーが増加するにつれて知識のばらつきが目立ってきたとのことです。メンバーそれぞれが必要なときにだけ必要な情報を自分で調べて学ぶというスタイルだったことが、その理由として考えられます。
そこで、AIプロジェクトに必要な知識を体系的・効率的に学べる「AI_STANDARD」の2講座を導入いただきました。
技術とビジネスの両方の視点が改革の後押しに
講座を受講したエンジニア以外のビジネスサイドのメンバーからは、実際に手を動かしながらAIが学習する一連のプロセスを体系的に学ぶことができ「AIに関連する業務への理解が深まった」との感想をいただいております。また、すでにAIで技術開発を進めていたエンジニアからも、著作物の権利の扱いや契約に関して「ビジネス的な目線も身についた」とのポジティブな意見をいただきました。
たとえAIを使う業務に直接たずさわっていないとしても、フィンテックにおいてAIは重要な技術要素です。講座の受講により、「AIについて理解を深めておかなければならない」という危機感が解消され、「ビジネス課題をいかにAIで解決できるか」を「自分ごと」としてとらえられるようになったといいます。
本事例は、組織全体でリテラシーの向上・平準化を行うことが、改革の後押しにつながるとわかる事例だといえるでしょう。より詳しいインタビュー記事もありますので、あわせて参考にしてください。
<事例4>SIer:DX推進の環境を整え経済産業省の「DX認定」取得へ
福島コンピューターシステム株式会社(FCS)様は、福島県内に本社を置く独立系のシステムインテグレーター(SIer)として、各企業に適したシステムの開発・提供をしている会社です。全社的なDXリテラシーの獲得によって、DX推進の環境を整えた事例として紹介します。
従来の開発方法では顧客の要望に応え続けられない
同社ではこれまでにも、福島イノベーション・コースト構想への参画や再生可能エネルギー関連のシステム開発などを通して、福島の復興に積極的に関わってきました。DX推進に本格的に舵を切るきっかけになったのは、お客様からの「マルチクラウド対応してほしい」「開発はアジャイルで進めてほしい」という要望でした。
そこで、従来の開発方法や企業の姿勢を見直すべく、固定観念にとらわれない社歴の短い人やITに関わらない業務に携わっているメンバーでDX推進チームを結成したといいます。加えて、DXに対する知識や認識を社内で共通化させるため、弊社の「DXリテラシー講座」を導入いただきました。はじめは経営層のみでの受講でしたが、講座の有用性を確認いただいたあとは全社的に展開する運びとなりました。とくに、デジタル技術の活用についての解説が参考になったといいます。
継続的な取り組みにより「DX認定事業者」に
「DXリテラシー講座」を通して出てきたアイデアは、PoC(Proof of Concept/概念実証)を行う予定です。講座で習得した知識や経験を活かしながら、新規ソリューションの開発も視野に入れて顧客に「新しい提案」ができる企業にしていきたいといいます。
また、DX推進の環境が整ってきたため、経済産業省の「DX認定」を目指してさらなる環境整備を進めるとのことでした。その後、2023年1月1日付で、同社は「DX認定事業者」に認定されています。
本事例は、全社的なDXリテラシーの獲得により、DX推進に必要な社内環境の構築がスムーズに進められたとわかる事例だといえるでしょう。本事例の詳細についてはインタビュー記事もありますので、あわせて参考にしてください。
なお、DX認定の詳細や取得方法などについては、こちらの記事でも解説しています。
事例から見えてくるDX推進のポイント
ここまでで紹介した4つの事例は、いずれも独自の課題を解決することに主眼を置くものでした。「自社にも取り入れたい」と思っても、単純に真似をすることはできないでしょう。しかし、DXの成功事例には注目すべき共通のポイントがあります。ここからは、企業ごとに異なる施策にも応用しやすい、以下の4つのポイントについて説明していきます。
– ポイント1:まずはデジタル化のための知識獲得から
– ポイント2:アイデアは現場から生まれる
– ポイント3:技術動向のキャッチアップと人材確保がスピードを向上させる
– ポイント4:システムの内製化が自社開発の継続を可能にする
ポイント1:まずはデジタル化のための知識獲得から
AIをはじめとするデジタル技術について知ることは、DXの基礎といえる取り組みです。なぜなら、デジタル技術はDX推進のためのツールであると同時に、新たなDXのアイデアを生み出すきっかけにもなるものだからです。
まずは、さまざまな技術についての知識を得て、ある程度使えるようにしておくことがポイントだといえます。これにより、デジタル活用で「実現できること」と「実現できないこと」とを具体的にイメージできるようになるでしょう。
ポイント2:アイデアは現場から生まれる
DXは、企業が抱える何らかの課題を解決するために取り組んでこそ意義があります。このとき、解決が期待される個々の課題も、それらを実際に解決するためのリソースやスキルも、多くは現場に集中しています。裏を返せば、DXにつながるようなアイデアは、現場から生まれる可能性が高いといえるのです。
また、そうして生まれたアイデアは、現場の人にとって「決して他人事ではない」という点も重要です。このような主体性のあるアイデアをいかにして発見し、組織として集約させていくかが課題だといえます。
ポイント3:技術動向のキャッチアップと人材確保がスピードを向上させる
現場から生まれたアイデアを実行に移す際には、スピードが問われることも少なくないでしょう。なぜなら、試作段階の開発をいかにしてスピーディかつ的確に乗り越えるかが、収益化の目処をつけられるかどうかの分かれ目になるからです。
そのためには、最新技術の動向を常にキャッチアップしておくことが役立つでしょう。また、必要なときに十分な開発リソースを投入できるかどうかもポイントとなります。
ポイント4:システムの内製化が自社開発の継続を可能にする
DXの成功は、ITシステムのコントロールを握れるかどうかに大きく左右されます。開発リソースを外部に頼らざるを得ないケースもありますが、そのためにシステムがブラックボックス化してしまっては、後々まで問題が残ってしまうでしょう。
したがって、システムの内製化を目指すことがDX実現のための重要なポイントだといえます。自社のみで開発と運用を継続でき、社内にノウハウが蓄積されていく状況を作り出せれば、デジタル技術の活用方法もしだいに洗練されていくでしょう。
関連:DXの目的とは?システムの内製化を目指せるコンサル会社の選び方
DXを成功させるためのステップ
ここまでで説明したポイントを踏まえて、ここからはDXを成功させるためのアクションを、以下の4つのステップに分けて説明していきます。
- ステップ1:DXとデジタル技術のリテラシーを獲得する
- ステップ2:現場の課題を解決するアイデアを集める
- ステップ3:収益性を見極めて実行に必要な人材を投入する
- ステップ4:ITシステムをコントロール下に置きながら構築する
ステップ1:DXとデジタル技術のリテラシーを獲得する
DXの推進にあたって「デジタル技術について知ること」はもちろん重要ですが、そのような知識を限られた従業員にだけ押しつけてもうまくはいきません。なぜなら、DXではデジタル技術をビジネスと結びつけて考える必要があるためです。「リテラシー」と呼べるようになるまで、DXに対する関係者全員の意識と知識レベルを引き上げることが大切です。
まずは、全社員がDXとデジタル技術のリテラシーを獲得することを目指すとよいでしょう。これにより、経営層から現場の従業員までが高い目線でDXについて議論できるようになり、DX推進が現実味を帯びてきます。DXを成功させるための最初のステップとして、とても重要なアクションだといえます。
ステップ2:現場の課題を解決するアイデアを集める
次のステップは、現場が抱えているさまざまな課題と、それらを解決するためのアイデアを集めることです。
DXのリテラシー化は、DXそのものとデジタル技術についての理解が全社的な共通事項になることを意味しています。これには、社内のどこからでもDXにつながる「気づき」が生まれやすくなるという効果があります。現場固有のノウハウと新しいデジタル技術の知識との掛け算により、さまざまなアイデアが出てくることが期待できるのです。
現場の気づきに積極的に耳を傾けアイデアの「量」を確保することが、大きな成果を見込めるDX施策の発見につながるでしょう。
ステップ3:収益性を見極めて実行に必要な人材を投入する
アイデアを集めたら、次は事業展開後の収益性を見極めて実行に移す段階です。
そのためには、アイデアの「質」について検証できなければなりません。企業の理念やビジョンと合致するかどうかはもとより、どの程度の収益性が見込めるかを定量的に評価することが求められます。自社の強みや資産を有効活用しながら、最小限のコストで大きな収益をあげられるアイデアを選ぶ考え方が基本となるでしょう。
実行に移すアイデアが決まったら、そのための人的リソースを確保します。スピーディな実行のためには、最新技術の動向に明るい人材を十分に投入する必要があります。
ステップ4:ITシステムをコントロール下に置きながら構築する
最後は、ITシステムをコントロール下に置きながら構築していくステップです。
DXの推進には、その基盤となるITシステムの存在が欠かせません。柔軟に改変しながら使い続けられる、全社共通の一貫したシステムが必要となるでしょう。そのようなシステムを実現するには、試作段階から開発ノウハウを蓄積し、本番運用開始後もシステム全体を自社でコントロールできる状況を作ることが大切です。
最初からシステムを内製できればベストですが、難しければ内製化を支援してくれるパートナー企業と組む方法もあります。このとき、ノウハウの獲得やシステムの内製化には、人材が欠かせないということを忘れないようにしましょう。
企業変革を持続させる「DX人材プランニング」
DXは、人を起点とする組織の変容です。そのため、デジタル技術の知識とスキルを全社共通のリテラシーとするとともに、アイデアが生まれやすい土壌を作ることが大切だといえます。あわせて、ノウハウの蓄積とシステムの内製化をあきらめない姿勢も重要なポイントです。
また、企業にとってDXは長期にわたる取り組みとなるものです。本記事で紹介した事例集からもわかるとおり、その実現には従業員のモチベーション向上や学習・成長といった「人」の力を高めていくための施策が欠かせません。このような人材育成もまた、継続的な取り組みである点を忘れないようにしましょう。新人はもちろんのこと、既存の従業員にも身近で利用しやすい学習環境を社内に構築し、成長を促し続ける取り組みが大切です。
弊社の「DX人材プランニング」は、企業が目指すべき人材像を独自に定義し、次世代のDX人材を創出していけるようにするためのソリューションです。育成カリキュラムの策定・実行を伴走しながらサポートするとともに、ひとりひとりの成長を個別にトラッキングできる仕組みづくりを進めていきます。人材の評価は、「ビジネス」「技術」「マインド」の3つの観点から行うことが可能です。従業員を持続的な企業変革の原動力へと育てていくために、ぜひご活用ください。
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