DXの関連技術やデジタル技術要素「ABCD」とは?自社DXに必要な技術について
DXの実現に向けて必要な技術にはAIやRPA、クラウドなどがありますが、「どの技術が自社DXに関係するのか」しっかり理解できていない方もいることでしょう。そこで今回は多くの企業に共通するデジタル技術要素「ABCD」を解説し、どのようなステップでDXを推進していく必要があるのか、その概要を紹介していきます。
DX実現に必要とされるデジタル技術要素「ABCD」とは?
DX実現に必要とされるデジタル技術要素には主に以下の4つがあります。
- AI(人工知能)
- BI(ビジネスインテリジェンス)
- CX(カスタマーエクスペリエンス)
- DI(データインテグレーション)
これら4つのデジタル技術要素は各社によって若干解釈が異なるものであり、「AI」以外の要素は当該記事で紹介する内容とは異なっている場合もあります。本記事では「B」として「BI:ビジネスインテリジェンス」、「C」として「CX:カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)」、「D」として「DI:データインテグレーション(データ統合)」を紹介し、DX実現に向けて必要なデジタル技術要素として解説を加えます。
DX実現に向けて必要なデジタル技術要素「ABCD」については是非ユーザー自身で比較・検討いただき、各社が定義する情報の共通点や普遍的な部分を取り出すことをおすすめします。
A:AI(人工知能)
「DXといえばAI(人工知能)」と言われるほど、DXにおいてAIの存在は大きいものです。AIを搭載した業務支援ツールは、単純作業の自動化によって社員の業務負担を軽減したり、蓄積したデータを活用可能な形に抽出したりと、様々な場面で活用できるよう設計されています。AIの特徴は機械学習であるため、ある作業工程(データ)を同じように再現することに長けており、またそれらのデータを反復的に学習することによって、様々な状況をトリガーとした判断を可能とします。このような行為を繰り返すことによって、高度なAIは事前にプログラミングされた処理パターンを実行するだけでなく、過去のデータから将来のある時点のデータを予測することができるようになるのです。
もちろんAIにも様々なレベル・性質を持ったAIが存在し、先述したような作業の自動化を得意とするAIもあれば、事前に入力された情報をもとに画像識別や音声識別などを自動的に行うAIも存在します。基本的にAIは学習させるデータ量が多ければ多いほど、様々な判断・処理を実行できるようになります。例えば後述するようなBI(ビジネスインテリジェンス)などは、大量のデータから経営判断を下すために必要な情報を抽出するために用いられるツールですが、単に傾向やパターンによる分析を行うだけでなく、AIの機械学習を用いた処理・推論によって分析レベルを引き上げられることが期待されています。
B:BI(ビジネスインテリジェンス)
BI(ビジネスインテリジェンス)とは、大量のデータの分析結果から、経営判断に活用するための情報を抽出・可視化する考え方を指します。現在はIT化されたBIツールを用いて大量のデータを蓄積・分析することが多く、蓄積されたデータのレポーティング機能や、多角的な分析を可能にするデータマイニング機能などを使って出された情報が、経営の意志決定に活用されます。DX実現において、BIツールによる業務上の意志決定や経営判断は重要な要素であり、デジタル技術要素として必要不可欠といえるでしょう。同じく「B」の要素として「ビックデータ」を掲げる企業もありますが、ビックデータの解析・分析を通じてビジネスに活かすことが重要になりますので、ここではBIとしてご紹介させていただきます。
C:CX(カスタマーエクスペリエンス)
デジタル技術要素の「C」としてCX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験)が挙げられます。昨今様々な業界で、デジタル技術を活用して既存の業界構造を変化させるデジタルディスラプション(デジタルによる破壊)が発生しています。従来は可視化できなかった顧客行動や、マーケティングに関わる指標をデジタルの力で収集・蓄積し、顧客への価値提供に還元する企業が増えてきました。
今後さらなる競争の激化が懸念される中、新規顧客の獲得以上に、既存顧客が一生のうちに企業にもたらす利益(LTV)を重視する企業が増えているのも事実です。マーケティング施策や経営戦略を短期ではなく長期で見通し、最適化を図る動きが活発化しています。そのような長期的な戦略は、企業が時間をかけて実現すべき目標である「DX」とも軌を一にするものであり、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の向上は、企業のDX実現に欠かせないキーワードとなっています。
D:DI(データインテグレーション)
DI(データインテグレーション)とは「データ統合」の意味であり、様々な部署・部門に散らばった情報を統合する意図があります。DXを実現するには、社内外に散らばった情報を効率的に収集・蓄積・活用するための基盤を作ることが重要です。そのためにレガシーとなった基幹システムの刷新・塩漬けは検討すべき課題であり、オンプレミス型のデータ管理からクラウド型のデータ管理へと移行すべきかどうかも同時に検討する必要があるでしょう。上述したBI(ビジネスインテリジェンス)やCX(カスタマーエクスペリエンス)を実現するためにも、データ統合はまず取りかかるべき課題となります。
DXに用いられる技術とは?一例をご紹介
DXに用いられる技術について、下記にまとめましたので参考にしていただけますと幸いです(一部先述した内容と重複する技術がございます)。
- AI
人工知能。機械学習を主要技術として、学習したデータをもとに大量のデータ処理や、将来予測などを行う
- RPA
人間が行う作業を代替する自動化ロボット。AIなどを実装して単純作業を自動化し、業務負担軽減を実現する。仮想知的労働者ともよばれる
- IoT
モノがインターネットと繋がること、またそうした機能を備えた機器。遠隔でモノの操作を行ったり、端末から様々な情報を収集したりすることが可能
- クラウド
ユーザーが物理的なインフラやソフトウェアを持たずに、インターネットを経由してサービスを利用できる技術。
- サイバーセキュリティ
サイバー攻撃から自社・ステークホルダーの情報を守るために実施されるセキュリティ対策
- 5G
第5世代移動通信システム。通信速度の飛躍的向上と、遅延時間の大幅な削減を可能にする通信技術
サイバーセキュリティ:サイバー攻撃から自社・ステークホルダーの情報を守るために実施されるセキュリティ対策
- VR(仮想現実)/AR(拡張現実)
仮想世界や拡張世界をインターネットを通じてユーザーに提供し、新しい顧客体験を生み出す技術
- ブロックチェーン
分散型台帳を実現する技術。台帳情報を共有することにより、情報の正確性を担保し、改ざんなどの不正を防ぐ仕組みを採用。情報が共有されているため、ブロックチェーン上のコミュニティの意志決定が加速し、スマートコントラクト(契約の自動化)も実現できる
自社DXの実現に向けて必要な工程とは?
自社DXの実現に向けて必要な工程として、下記のステップが挙げられます。
- STEP1:業務のデジタル化
- STEP2:業務効率化・自動化
- STEP3:DX推進チームの設置(DX戦略の立案)
- STEP4:部門間連携を実現するシステムの導入
- STEP5:DXプロジェクトへの継続投資
これら全ての工程が当てはまるのではなく、自社の状態に合わせて適切なステップからDXの取り組みを進めていくことがポイントです。例えば「STEP1」は、既存の業務が紙資料をベースに行われている場合や、データ管理・共有を紙資料・ホワイトボードなどを使って行われている場合に必要とされる工程となります。まずはアナログ業務をデジタル技術を使った業務へと移行し、業務の効率化・自動化を実現、DX推進チームの設置へと進んでいきます。
こうしたステップの過程で、例えば先述した「AI」や「RPA」、「IoT」や「クラウド」などの技術を活用し、業務工数の削減や、業務省力化などを実現します。
STEP1:業務のデジタル化
DXの実現に向けて、まずは業務をデジタル化しなければなりません。紙資料をベースにした作業や、データの管理方法をPC上に移行するところから始めていきます。業務上の重要な書類や、経営資料などは慎重に管理する必要があるため、業務自体はPCなどを使った作業に移行しつつも、データ管理の方法は専門家やパートナーから意見を仰ぎましょう。
STEP2:業務効率化・自動化
業務のデジタル化を行うと同時に、新たに作業工数を整理することがポイントです。業務をデジタル化するだけでなく、デジタルの力を使って業務工数を削減したり、自動化したりする工夫が求められます。昨今は様々な業務に合わせてクラウド型の業務支援ツール(SaaS)が提供されているため、それらを活用して業務の効率化を図りましょう。また業務の自動化はExcelのマクロ機能や、AI搭載型のRPAツールなどを使って実現します。
STEP3:DX推進チームの設置(DX戦略の立案)
業務のデジタル化や効率化、自動化を通じて業務工数を整理した後は、いよいよDXの実現に向けた取り組みを進めていきます。現状では各部署・部門が個別最適で業務の効率化や自動化を行っている状況です。そこにリーダーシップを発揮して各部署・部門を牽引するDX推進チームを設ける必要があります。DX推進チームの役割は、各部署・部門の取り組みを全社的な取り組み(DX)に集約させることであり、施策内容の修正・検討や、舵取りなどが求められます。この段階から「DX人材」や「IT人材」が必要となりますので、人材の確保や育成を進めていかなければなりません。
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STEP4:部門間連携を実現するシステムの導入
経営層やDX推進チームの主導により「DX戦略」を策定した後は、部署・部門のデータを共有・連携するシステムを導入しなければなりません。DX実現に必要なデジタル技術要素として「BI(ビジネスインテリジェンス)」や「DI(データインテグレーション)」を挙げましたが、これらを実行するには部門間連携を実現する基盤が整っている必要があります。各部署・部門で収集した情報を適切な形で蓄積し、必要な情報として抽出・可視化する仕組みが求められます。このような状況になると、様々なデータから施策の重要度や将来性などが分かるようになり、経営判断にもデータを用いることが可能となります。そうして社内でDXの成果が出始め、最終的には顧客へと価値が提供されていきます。
STEP5:DXプロジェクトへの継続投資
DXの成果が出始めた後も、DXプロジェクトには継続的に投資しましょう。なぜならDXは顧客への価値提供が最終的な目標となるため、ある時点で目標を達成しても、日々変化する市場環境に合わせて新たに改善を図っていくことが求められるからです。ある程度の成果が出たから終わりにするのではなく、継続的にDXプロジェクトを推進し、変化に強い経営を実現していきましょう。
まとめ
DX実現に向けて様々な最新のデジタル技術が必要とされますが、いきなりAIやRPAといったツールを使いこなすのは難しいでしょう。たとえ経営層がDXの重要性を理解しても、現場の社員のコミットメントが得られなければ、企業のDXは思うように進みません。これから自社DXの推進を検討している担当者の方は、是非一度「全社的なDXリテラシーの向上」を検討し、DXの各工程がスムーズに進行するよう対策を講じておくことをおすすめします。
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