DXが進まない理由を5つに凝縮!DXを力強く推進する秘訣もご紹介
2020年12月に経済産業省が公表した「DXレポート2」にて、DXの取り組みに関するアンケートに回答した500社のうち、約9割以上が「未着手」「散発的な施策に終わっている」と回答したことが分かっています。多くの企業でDXが進まない理由はどこにあるのでしょうか。今回はDXレポートの内容を踏まえつつ、DX推進を妨げる因子について知っていきましょう。
日本におけるDXとは?DXの主なステップ
自社DXが進まない理由を知る前に、まずは日本におけるDXについて理解を深める必要があります。日本におけるDXの現状を効率的に知るには、経済産業省が公表したDXレポート群を確認するとよいでしょう。後述していますが、日本におけるDXにはおよそ4つの段階があり、そのうちSTEP1(業務のデジタル化)と、STEP2(レガシーシステムの刷新)の2つが特徴的なステップとなります。他国に遅れをとっている日本のDXが、一般的にどのようなステップで推進されるのか確認していきましょう。
【DXの主なステップ】
- 業務のデジタル化
- レガシーシステムの刷新
- DXを推進する人材の確保・育成(内製化)
- 自社DXの推進・効果検証
STEP1:業務のデジタル化
日本におけるDXのファーストステップは「業務のデジタル化」として位置づけられています。ここで注意したいのは業務のIT化ではなく、業務のデジタル化をファーストステップとしている点です。前者は既存業務にITを導入することが目的になりますが、後者にはITの導入によって業務全体を最適化する意図が含まれています。最新のツールやIT機器を導入しても、働き方そのものがアナログのままでは「業務のデジタル化が実現した」とはいえないでしょう。DXのSTEP1として、IT導入を好機と捉えた業務フローの改善が求められます。
STEP2:レガシーシステムの刷新
経済産業省が2018年9月に公表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』でも指摘されたように、日本企業の多くがDX実現の前に「レガシーシステム刷新の問題」にぶつかります。昨今のIT技術の進化や、様々なビジネスモデルの登場に対してレガシーとなった自社の基幹システムは刷新の時機を迎えているのです。しかしレガシーシステムの刷新の問題は、自社システムの設計・運用を依頼しているベンダー企業との関係性の問題でもあり、自社だけで検討・対策できるものではありません。レガシーシステムの刷新にあたっては、これまで続けてきたベンダー企業との関係性を再構築することが重要であり、DXの舵取りを自社で行うためにも、ある程度のIT人材を自社で抱える必要が出てきます。ベンダー企業と今後の関係性について話し合う折には、これらの取り組みがDXの文脈であることを伝え、「共創関係の構築」へと双方が歩み寄ることが理想といえるでしょう。
STEP3:DXを推進する人材の確保・育成(内製化)
レガシーシステム刷新の問題を通じてベンダー企業との関係性を再構築する方針を固めた後は、自社DXを力強く推進する人材を確保する必要があります。しかしDX人材の需要は非常に高く、社外の人材を確保できないケースもあるでしょう。したがってDX人材は社内で育成する方針を固め、「内製化のために必要なリソースは何か」を後から考えることが重要です。DX人材の内製化にあたっては、DXリテラシー引き上げのための講座・ワークショップや、DX支援を行う外部パートナーのコンサルティングサービスを利用するとよいでしょう。
STEP4:自社DXの推進・効果検証
自社DXの舵取りをDX人材の内製化によって実現した後は、自社DXの推進・効果検証のフェーズへと入っていきます。DXの目的はIT導入でもなければ、業務のデジタル化でもありません。DXの最終的なゴールは「顧客価値の創造」にあります。自社のDXがしっかりと最終目的地へと向かっているかどうか、定期的にモニタリングすることが重要です。
DXが進まない主な理由
日本におけるDXのステップは大きく分けて4つに分かれますが、主にSTEP1~STEP3にかけて躓く企業が多いのが現状です。自社DXが進まない理由のうち、そのほとんどが経営層の理解不足に起因しています。まずは企業の経営層がDXについて理解を深め、自社DXを主導する姿勢を社員に見せることがポイントとなるでしょう。
【DXが進まない5つの理由】
- 経営層のDXに対する理解不足
- 社員全体のDXリテラシーが低い
- DX推進の要となる「DX人材」の不足
- ベンダーロックインによる経営アジリティの低下
- DX推進を阻む「3つの壁」を越えられない
経営層のDXに対する理解不足
経営層のDXに対する理解が不足している場合、自社DXで重要とされるトップダウンの施策が実行しづらくなります。後述するようにDXに際して様々な投資を行うほか、数年スパンの経営戦略を立て、そこから逆算してあらゆる施策を計画するのが一般的です。したがって経営層によるDXの理解が不足していると、戦略の練り直しや、施策の途中変更などが都度発生するようになります。そうした状況が長く続くと、様々な施策が散発的なものに終始してしまい、結果として一貫性の欠いた取り組みに終わってしまう可能性があるのです。
関連記事:【DX推進】企業変革における経営層の重要な役割とは?
社員全体のDXリテラシーが低い
経営層のDXに対する理解不足も問題ですが、社員全体のDXリテラシーが低いままでは自社DXが加速していくことはないでしょう。実際に施策を実行する社員が「そもそもAIや先進技術を使ってどのような価値を生み出せるのか」について理解がなければ、上層部が意図する結果を期待することは難しくなります。たしかにDXはトップダウンの施策実行が重要となりますが、フェーズが上がるにつれて現場社員の声・提案も取り入れていく必要があり、社員のDXリテラシーの向上が急務となります。早期にDXリテラシーの向上を図ることによって、「なぜこの施策を行っているのか」「改善の余地はないのか」といった当事者意識を持った社員を増やすことが可能です。
DX推進の要となる「DX人材」の不足
DXの最終目標が「顧客価値の創造」であるだけに、DX推進の要となる「DX人材」には様々な技量が求められます。大まかには①DXの現場を支える技術者と、②DXプロジェクトを推進する管理職や経営層が必要であり、それぞれにAIやDXに関する深い理解がなくてはなりません。またDXの取り組みが「IT導入」や「業務のデジタル化」といったフェーズで頓挫しないよう、管理者は注意深く監視するとともに、フェーズごとに適切な指標(KPI)を設けることが求められます。このようにDX人材には高い技量が求められるほか、業界・分野の垣根を越えるような施策の提案・実行が必要となるため、少しの失敗で諦めない「根気の強さ」も兼ね備えていなければなりません。DX推進には1名~数名のリーダーシップを発揮するDX人材が必要であることを覚えておきましょう。
関連:DX推進の人材は育成できる!即戦力を生み出す社内研修に必要な条件とは
ベンダーロックインによる経営アジリティの低下
ベンダー企業の独自技術を採用した製品・システムを採用することで他社製品への乗り換えが難しくなってしまう現象をベンダーロックインといいます。ベンダーロックインそのものが一概に悪いとはいえませんが、ユーザー企業主導のDXにおいては他社製品・システムの導入・連携時に足かせとなることがあり、DX推進を妨げる1つの要因として認識されています。ベンダーロックインの状態がユーザー企業にとって好ましくない場合、ユーザー企業のDXは「レガシーシステム刷新」の問題から抜け出すことが難しく、経営アジリティの低下へと繋がってしまいます。
DX推進を阻む「3つの壁」を越えられない
DX推進には主に3つの壁が存在します。まずは「アイデアの壁」にぶつかる企業が多いことでしょう。他社のDX事例を参考に自社DXを考えることになりますが、多くの場合具体的な事業イメージが湧きません。なぜならDXの取り組みは「自社の状況」に即して実施されるものであり、似たような取り組みでも自社の基幹システムの状況や人的リソース、技術開発にかけられる予算など、様々な要素を検討しなければならず、DX推進の各フェーズで自社固有の問題が発生してしまうからです。はじめは他社事例を参考に構想しますが、その早い段階で多くの問題が見つかり、自社DXの事業アイデアは解像度が低いまま放置されてしまいます。
次にぶつかる壁が「投資判断の壁」です。自社DXがどのくらいの投資対効果を生むのか、またどのような価値を自社DXによって生み出すのか、具体的な数値目標として落とし込む必要があります。さらに投資対効果を考える上で欠かせないのが「現場社員との対話」です。実際に技術開発を行い、DX施策を進めていく社員と同じ目線で対話が重ねられなければ現場のコミットは得られません。投資判断の壁を越えるには、投資対効果だけでなく、現場社員との対話を通じた実現可能性にも目を向ける必要があるのです。
事業アイデアの解像度を上げ、投資判断の壁を乗り越えた先に待っているのが「技術開発の壁」です。自社DXの推進に必要とされる技術を「誰が・どのように開発するのか」を決める必要があります。社内にAIシステムや先進技術を開発・運用する人材がいない場合は、DX支援を行う外部パートナーに協力を依頼し、内製化を目的とした実装支援へと踏み切りましょう。状況に応じてベンダー企業との共創性も意識するとよいでしょう。
関連記事:日本のDXはなぜ遅れている?自社DXを阻む3つの壁と推進方法について
DXを加速させる秘訣は企業文化の変革にある
経済産業省が2020年12月に公表した「DXレポート2」では、各企業のDXの取り組みに関するアンケート結果が公開されました。経済産業省は、回答企業の9割以上が「未着手」や「散発的な施策に留まっている」と回答したことを受けて、コロナ禍における企業DXは「企業文化の変革に踏み切ったかどうか」が分かれ道になったと考察しています。多くの企業が自社DXに足踏みしているなか、力強く推進している企業には「市場環境の変化への柔軟な対応」がみられ、それは「企業文化の変革として確認できた」ということになります。DXの本質に関して詳しく知りたい方は以下の記事で解説しておりますので、ご覧いただけますと幸いです。
関連:DXの本質は企業文化の変革にある!DX時代を生き抜く4つのポイントとは
まとめ
DXが進まない理由の多くは経営層のコミットメントが得られないことに起因しますが、次々と表面化する問題を後回しにしてしまっては変化の激しい昨今の市場を生き抜くことは難しいでしょう。重い腰を上げ、1つずつ課題をクリアしていく姿勢が今必要とされています。弊社では、まずは自社DXの事業アイデアの解像度を上げていただくため、全社一斉で行う「DXリテラシー講座」を推奨しております。全社的なDXリテラシーの向上を図ることで、経営層と社員の「自社DXの目線」を合わせることが可能です。最短1日で網羅的に学習できるカリキュラムも用意しておりますので、是非ファーストステップとしてご検討ください。
から始めるDXの内製化と成功事例