DXとは?重要なポイント・実現に向けた課題と解決策を解説
近年ますます注目を集めるDX(デジタルトランスフォーメーション)。しかし、「そもそもDXとは何なのか分からない」という人もいるのではないでしょうか?実は、DXとデジタル化は似て非なる概念。また、「DXを進めていく上で、何から手を付ければいいのか分からない」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか?
この記事では、DXとはなにかを解説した上で、DXの事例を2つ紹介します。導入するメリットや、導入を阻む課題も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
そもそもDXとは?
そもそも、DXとは何なのでしょうか?ここからはDXの定義と、デジタル化(IT化)との違いについて解説していきます。
DXの定義
「DX」は、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略。直訳すると、「デジタルへの変革」となります。
経済産業省が公表した「DX推進指標」によれば、DXは次のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や
社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務その
ものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
引用元:https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003.html
端的に言えば、DXの狙いは「デジタルへの変革を通じて、競争力を向上させること」。単なるデジタル化を指す言葉ではなく、競争上の優位性を確立するための概念であることを覚えておきましょう。
ちなみに、なぜ「DT」ではなく「DX」と略すのかというと、英語圏では「Trans」を「X」と略すことがあるためです。
デジタル化(IT化)との違い
よくDXとデジタル化(IT化)は混同されますが、厳密には異なります。「IT」はインフォメーションテクノロジー(Information Technology)の略。直訳すると、「情報技術」になります。
IT化は、情報技術を活用して業務をデジタル化すること。タイムカードで行っていた勤怠管理をクラウドシステムに置き換えたり、紙で処理していた経費精算をペーパーレス化したりといった「業務の効率化」が狙いです。
IT化は業務効率化のための「手段」、DXはIT化といったさまざまな手段を用いて競争力を向上する「目的」を指す概念と言えます。IT化はDXの手段の1つと言ってもいいでしょう。
DXを実現するメリット・取り組むべき理由
次に、DXを実現することでどんなメリットが得られるのか、4つの理由を紹介していきます。
業務の効率化
DXを推進するにあたって、IT化(デジタル化)は必須。アナログな作業をデジタルに置き換えることで、業務の効率化を狙うことができます。
公益財団法人 日本生産性本部の調査によれば、日本の1時間あたりの労働生産性は49.5ドル。対してアメリカは80.5ドルと、およそ1.6倍もの差があることが明らかになっています。(出典:「労働生産性の国際比較 2021」 公益財団法人 日本生産性本部)
要因はさまざまですが、その1つとして「デジタル化への遅れ」が考えられます。会議資料を印刷する時間、経費精算(紙媒体)の入力作業といった時間は、ペーパーレス化によって削減が可能です。
より本質的な業務に割ける時間が増えることで、業務効率化・生産性の向上が期待できます。
競争力の強化
DXの最終的なゴールは、「競争力の強化」です。これは、業務の効率化を通じて競争力を強化する、というよりは、ビジネスモデルを変革することで競争力を強化することを指します。
たとえば、無人コンビニとして話題になった「Amazon Go」は、デジタル化によって競争力を強化した例と言えるでしょう。また「Netflix」も、当初はDVDを自宅に届ける宅配レンタルサービスでした。DXによってインターネット上で「データ」をレンタルできるビジネスモデルに転換し、後に現在のサブスクリプション性の動画配信サービスにさらなる転換を行いました。
新しい付加価値を創出するという意味もありますが、競合他社がDXした際の備えという意味もあります。急激な市場の変化に迅速に対応するためにも、DXは重要と言えるでしょう。
既存のシステムからの脱却
DXは、既存のシステム(レガシーシステム)からの脱却につながります。既存システムをそのままにしておくと、「2025年の崖」にぶつかり、大きな損失を被る可能性があります。
「2025年の崖」は、経済産業省が2018年に発表したDXレポートで提唱した概念です。多くの日本企業で使用されている既存の基幹システムのサポートは、2025年以降順次終了していくと言われています。既存のシステムから脱却できない場合、維持管理費やシステムトラブルのリスクが膨らみ、企業のIT予算の9割にもなる可能性があります。結果的に、2025~2030年の間で、年間最大12兆円もの経済損失が生じると予想されています。
既存のシステムはDXを拒む課題であるとも言われています。今後訪れる2025年の崖に備えつつ、DXを推進していくことが重要と言えるでしょう。
新規事業の開拓
DXを通じて、新規事業を開拓するのも一手です。従来のビジネスモデルを大きく変革するとなると、既存の顧客を取りこぼしてしまうリスクもあります。
たとえば、ヤフージャパンがヤフオク!やYahoo!知恵袋といったサービスを展開したことや、「アメーバブログ」「アメーバピグ」といったサービスを展開している株式会社サイバーエージェントが、「Abema TV」を新規事業として展開したことが事例として挙げられます。
新規事業が成功すれば、新しい収益の柱ができ、会社をより長期に渡って持続させることができます。市場の変化にも強くなるので、リスク回避という意味でも新規事業に取り組むメリットは多くあります。
DXを実現した事例集
ここからは、実際にDXを実現した企業の取り組みを2つ紹介していきます。
ダイキン工業株式会社:工場のIoT化
ダイキン工業株式会社は、エアコンをはじめとした空調機器の開発・販売を行う企業です。ダイキンが取り組んだDXは、「工場のIoT化」にあります。
大阪・堺にある工場では、工場設備がインターネットに繋がれ、生産状況を把握するためにセンサーやカメラが設置されています。工場のラインには製品情報や仕様が記録された「パレット」と呼ばれるIDカードを設置。そのIDをもとにロボットや設備に指示が出され、製品が組み立てられます。結果的に、1つのラインで異なる商品を組み立てられることが可能になりました。
またIoT化を進めることで、生産状況の見える化・不良品の削減も実現。製造コストの低下による低価格化・競合他社への差別化、大幅な納期の短縮化など、さまざまな成果を上げました。
こういった工場のIoT化は、「インダストリー4.0」とも呼ばれます。詳しくは以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
https://standard-dx.com/post_blog/industry-4-0
三井住友銀行:顧客の声を自動分析
三井住友銀行は、現場に寄せられる顧客の声を自動分析できるツールを導入しています。店舗やコールセンターに寄せられた顧客の声はテキスト化され、手作業で分類する必要がありました。
しかし、NECの「ビッグデータ分析技術」を活用したツールを導入することで、顧客の声を自動で分類することができるようになりました。「金融商品」「店舗」「接客」などの見出しでグループ分けすることができ、単純に何件苦情が来たのか、何件好意的な意見があったのかを用意に分析可能。業務の効率化はもちろん、サービス改善をよりタイムリーに、的確に行う助けになります。
資生堂:来店不要でカウンセリングができる
資生堂は、来店不要でカウンセリングを行えるWebカウンセリングを提供しています。コロナ渦を背景として始まったサービスではありますが、忙しい・遠い・敷居が高いといった理由で来店が難しかった顧客に対してもリーチすることが可能になりました。
顔認証技術やAIを活用したバーチャルメイク技術を活用して、来店せずともコスメの色味を確認することができます。
資生堂以外にも、 三菱地所レジデンスやアパマンショップといった不動産・賃貸業が「オンライン内見」を開催したり、ニトリがリフォーム相談に活用したり、ビックカメラやベイクルーズといった小売業がWeb接客として活用したりと、今後ますます拡大が見込まれます。
DX実現を阻む日本企業が抱える課題
ここからは、DXを実現するにあたって、日本企業が抱えている課題を4つ解説していきます。
そもそも、進め方が分からない
DXを実現する上で一番最初に当たる課題が、「進め方」です。特にDXに知見を持った人材がいない場合は、「何から始めればいいのか」と足踏みしてしまうケースも多いでしょう。
解決策として考えられるのは、DXの進め方を理解すること、DXを推進できる人材を採用すること、社内の人材を育成することの3つです。
進め方や人材育成のノウハウがないのであれば、ぜひ弊社の「DXリテラシー講座」をご活用ください。
DXの進め方は、以下の記事でも解説しています。興味がある人は、ぜひ参考にしてみてください。
DXの進め方リンク
https://standard-dx.com/post_blog/effective_steps_for_dx
推進できる人材がいない
経済産業省の「DX レポート」でも、人材不足が指摘されています。ペーパーレス化や勤怠管理のシステム化といった、初歩的なデジタル化は比較的難易度が低くても、AIやビッグデータを活用できる人材は限られます。また専門的なノウハウがあっても、率先して既存システムからの脱却や、ビジネスモデルの推進をできる人材となると、さらに数が限られてしまいます。
新規採用はもちろんですが、既存の人材をDX人材に育てていくのも一手です。弊社では、自社に必要なDX人材を定義し、育成状況を可視化できる独自の人材育成サービス、「DX人財プランニング」を提供しています。ぜひご活用ください。
予算がない
DXを阻む大きな課題の1つが、「DXに回す予算がない」というものです。既存システムからの脱却、人材の確保、ペーパーレス化を実現する各種ツールの導入費用など、DXには費用がつきものです。しかも成果が労働の効率化とすると、成果は非常に曖昧です。
さらに、先ほど紹介したダイキンが行ったような「工場のIoT化」ともなれば、投資の費用はさらに大きくなります。
事実、厚生労働省の調査「人材開発分野をめぐる状況の変化」によれば、DXを進める上での課題として、「資金不足」と回答した企業は26.9%。
DXは経営者がリードしていくことが重要といわれます。経営者がDXの重要性を正しく理解し、既存の判断基準にとらわれず、トップダウンで推進していく必要もあります。
導入するメリットが分からない
厚生労働省の調査「人材開発分野をめぐる状況の変化」によると、DXを進める上での課題として、「費用対効果が不明」と回答した企業は32.8%になります。さらに、46%もの中小企業が、DXを聞いたことはあるが、内容はよく知らない・取り組む予定はないと回答し、16%がDXを聞いたことがないと回答しています。大企業でも、DXに着手していない企業は34%もあります。
導入するメリットが分からないのであれば、そもそも人材や予算の確保もできません。経営陣の理解を促進するためにも、担当者がメリットをしっかりと理解し、事例や数字を交えてプレゼンできるようになるのが理想です。
DXのメリットについては、以下の記事でも紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
DX推進のメリットとデメリットを解説!課題を乗り越え効果的に取り組むには
まとめ:DXを実現するポイントは「人材」
今回は、DXのメリットや、実現するための事例を取り上げ、DXを実現する上で障壁となる課題についても紹介しました。さまざまな課題が明らかになりましたが、やはり重要になるのが「人材」です。知見を持った人材がいれば、的確な投資判断、推進のための体制づくりが非常に楽になるでしょう。
また、リテラシー教育や会社全体の意識醸成も重要です。これはDX推進を阻む最初の壁とも言われており、この壁を打ち破ることが最初のステップになります。このステップを飛ばしてしまうと、DX導入が思うように進まなかったり、計画が頓挫してしまったりといった問題が起きる可能性があります。
STANDARDでは、DX推進をサポートするDXリテラシー講座や、担当者向けの資料を提供しています。DXを実現する上で悩んでいることにあわせて、ぜひご活用ください。
– 全社にDXリテラシーを向上させたい:DXリテラシー講座
– 社内にDX担当者がいない:DX戦略コンサルティング
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DXの実現とその先のDXの内製化まで
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