AIとデータサイエンスの違いは?AI活用に重要なスキルと企業の在り方について
AI(人工知能)とデータサイエンスの違いは端的に「存在」と「手法」の2つに分けることができますが、両者の関係性や、DX文脈における重要性などをしっかりと理解できている方はそう多くないでしょう。今回の記事では「AIを活用する企業の在り方」にフォーカスして解説していきます。
AIとデータサイエンスの違い
AI(人工知能)とは、人間のような情報処理能力を持ったコンピューターの総称を指す言葉であり、中心技術に「機械学習」を用いた存在となります(機械学習とは、コンピューターがある入力されたデータから反復的に学習し、新しいパターンを見つけ出す行為を指します)。コンピューターが自律的に思考・学習し、そこで得られたパターンを用いて様々な結果(アウトプット)を出すため、人間の代替的な存在としてビジネスシーンで多く活用されています。
一方のデータサイエンスとは、データサイエンティストなどが統計学や情報工学といった分野の知識を用いて、ビックデータ等からビジネス課題を解決する要素・特徴を取り出す手法を指しています。つまりAIとデータサイエンスは、存在と手法で大きく分けることができ、また分析を行う存在もコンピューターと人間で分けて理解することが可能です。
データサイエンティストに求められるスキルと業務範囲
昨今様々な分野でDXの必要性が叫ばれ、「新たなビジネスモデルの創出」や「ビジネス競争力の維持」が企業課題となっています。多くの企業で経営戦略の見直しが求められる中、新たなビジネスチャンスが眠る場所として想定されるのがビックデータとなります。そこでデータサイエンティストにはしばしばビックデータの解析が求められ、解析したデータを可視化し、また再利用しやすい形に変換する技量が問われます。
よくデータアナリストと比較されますが、データアナリストの仕事は多くの場合、データの収集・分析を行ってサービス課題を解決するに留まります。データサイエンティストは経営課題に対して示唆的なアウトプットを提供する必要があるため、データアナリストに比べて経営戦略・事業戦略といった分野に通じていることがポイントとなります。
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AIとビックデータの関係性
ビックデータの解析・活用にはデータサイエンティストなどによる作業が必要ですが、処理方法の手段として「AIを活用した処理」が求められます。AIを活用した処理が求められる理由には①膨大な量の処理が必要であることと、②AIによる自動処理によって時間的コストの短縮を行う必要があることの2点があります。
AI活用に重要なスキルとは?
AI活用には設計・開発・運用といった多段階のシーンが想定され、それぞれのシーンに応じて必要とされるスキルが変化します。例えばデータサイエンティストの場合、ビックデータの解析においてAIを活用した情報処理を行います。使用するAIの状態やデータサイエンティストの技量によって左右されますが、データ処理に活用するAIの多くはプロジェクトごとに設計・調整が必要となるため、業務自動化を可能にするプログラミング言語の理解・活用が求められるでしょう。
またAIの運用段階においては、使用するAIツールにできること・できないことを把握し、1つの業務におけるAI活用の範囲を把握しておく必要があります。さらにAIなどの自動化を実現するツールは時に「動作停止」といったトラブルを起こすことがあるため、ツールの動作停止が「業務停止」へと繋がらないよう日頃から注意しておかなければなりません。そのためには運用マニュアルの作成と改善、AI停止時の復旧フローなども作成しておく必要があります。
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AI活用に向けた5つの企業推進レベルとは?
日本経済団体連合会(経団連)が2019年2月に発表した『AI活用戦略~AI Readyな社会の実現に向けて』によると、AI活用には「5つの企業推進レベル」があるとしています。
経営層 | 現場層 | |
レベル5 | データサイエンスを理解する経営陣が業界・自社経営刷新の中心を担う。業界全体、他社との連携が進んでいる
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社内外の専門家でAI活用の研究・開発を行い、独自開発したAIシステム・ツールを競争領域でサービス化できている |
レベル4 | データサイエンスに理解があり、事業活用できる人材を経営層に配置。AIへの継続的な投資が実現できている
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社員の過半数が高いAIリテラシーを保持し、業務システムと分析システムがシームレスに連携されている。多くの業務データが即時分析可能 |
レベル3 | 経営戦略にAI活用を組み込み、幹部社員へのAI教育を実施
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独自でAI開発・運用・改善が可能で、実務へのAI活用が徹底されている。領域特性に応じてAIとRPAを使い分けている |
レベル2 | AI可能性を理解して方向性を発信しているものの、具体的な戦略には至っていない
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AI活用に関して知識・経験のある社員が一部存在するが、全社的な業務への反映にはほど遠い。一部でAI機能を用いた業務運用が行われている |
レベル1 | AIへの理解がなく、AIが業界・自社経営に与える影響の認識も不十分
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属人的な対応に終始しており、課題への対応に多くの人員・工数を割いている |
※『AI活用戦略~AI Readyな社会の実現に向けて』をもとに作成
上記の表を参考にすると、ただAIを用いて業務自動化を実施するだけではレベル1~2程度にしか満たないことが分かります。よりAIーReadyな企業へと近づくには、①経営層によるAI活用への理解・投資コミットメントと、②現場層におけるAI開発・運用に精通している人材の確保、他部署連携などがポイントとなるでしょう。
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まとめ
AIを活用した業界改革、自社経営の見直しにはデータサイエンスの知見が必要となります。自社の経営戦略の改善に示唆的な情報を提供するデータサイエンティストと、業務レベルで有益な情報を提供するデータアナリストの違いを認識しつつ、AI×データサイエンスの取り組みを進めていくことが大切になるのです。
とはいえすぐにAIをフルに活用した事業戦略・経営戦略は実現するものではありません。経団連が示した表のように、AI活用にはさまざまなステップがあります。自社におけるAI活用や、自社DXの必要性を検討したい方は弊社が提供する「DXリテラシー講座」の受講を検討してみてはいかがでしょうか。50件以上の業界事例を解説しながら、事業アイデアの解像度を上げるお手伝いをさせていただきます。