DX推進ガイドラインとデジタルガバナンス・コードの要点を解説! - 株式会社STANDARD

DX推進ガイドラインとデジタルガバナンス・コードの要点を解説!

DX・AIプロジェクト推進

この記事の目次

  1. DX推進ガイドラインとは?
  2. DX推進ガイドラインが策定された背景
  3. DX推進ガイドラインの構成
  4. DX推進ガイドライン11の要点
  5. 経産省が定める「デジタルガバナンス・コード」とは
  6. デジタルガバナンス・コードが示す4つの柱
  7. DXを実現するための重要トピック
  8. まとめ|全社的なDXリテラシーの向上を図ろう

自社DXをどのように推進すべきか悩まれているDX推進担当者も多いことでしょう。そこで今回はDXの進め方、仕組みの構築方法を取りまとめた「DX推進ガイドライン」の要点をご紹介します。その他DXを進める上で知っておきたい基本知識もまとめましたので、参考にしていただけますと幸いです。

なお、DX推進ガイドラインは2022年9月、「デジタルガバナンス・コード2.0」に統合されました。本記事の後半では統合に際しての改定のポイントのほか、デジタルガバナンス・コードを構成する4つの要素についても説明していきます。

DX推進ガイドラインとは?

DX推進ガイドラインとは、経済産業省がまとめたDX推進に関するガイドラインのことで、DX推進のための経営の在り方、仕組みの構築・改革手順、DX実現に向けたITシステムの構築・実行プロセス等が記載されています。

様々な業界・分野でデジタル技術を利用した新しいビジネスモデルが展開されており、従来の商習慣・ビジネスモデルを展開する企業は競争力維持・強化が難しくなってきています。そうした全業界的なビジネスモデルの変化に対応すべく、企業はDXの必要性に迫られていますが、「どこからどう手をつければ良いか分からない」「DXに投じるべき予算が判断できない」といった課題を感じているのが実態です。

また「自社DXをとりあえず進めてみたが散発的な施策に終始している」といった問題も発生しており、本来のDXの目的から外れた施策を展開してしまう企業も少なくありません。このようなDX推進の実態を鑑みると、DXの進め方や必要なアクションに対する共通認識を記載したDXガイドラインを自社DXの参考にするのは大切であり、またDXガイドラインを起点とした自社DXを再考していくことが重要であるといえるでしょう。

DX推進ガイドラインが策定された背景

DXガイドラインが作られた背景に、経済産業省が2018年5月に設置した「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」があります。その年の9月には『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』が報告書として取りまとめられ、報告書内で「DXを実現していく上でのアプローチや必要なアクションについての認識の共有が図られるようにガイドラインを取りまとめることが必要である」と指摘されたことから、DX推進ガイドライン(「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」)は策定されています。

経済産業省のDXレポートでは「2025年の崖(放置シナリオ)」の印象が強く、(既にDXを推進していた大企業を除いた)これからDXを推進する中小企業はDXの理解、自社におけるDXとは何か、といったトピックについて考えさせられることになりました。これまで経験したことのない企業活動の展開と変革に備え、企業それぞれの実態に合わせたDXの推進にDX推進ガイドラインは必要とされています。

関連:「2025年の崖」以降にSIer不景気時代到来?DX時代にSIerに起こること

DX推進ガイドラインの構成

DX推進ガイドラインは「(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み」と「(2)DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」の2つから構成されています。

全体の流れとしては、はじめにDX推進の在り方や仕組みを伝える「理解のフェーズ」があり、次にDXを実現する上で必要な具体的な体制・仕組み構築の説明、実行プロセスへと繋がっていきます。DXに対して経営層が認識すべき事柄、失敗ケースなども記載されているため、認識の確認をしながら読み進めることが可能です。

DX推進ガイドライン11の要点

ここからはDX推進ガイドラインに記載されている内容の要点を紹介していきます。

先述したDX推進ガイドラインの2つの項目は、それぞれがより詳しい項目で構成されています。1つ目の「DX推進のための経営のあり方、仕組み」を構成する要素は、次の5つです。

  • 1.経営戦略・ビジョンの提示
  • 2.経営トップのコミットメント
  • 3.DX推進のための体制整備
  • 4.投資等の意思決定のあり方
  • 5.DXにより実現すべきもの:スピーディーな変化への対応力

2つ目の「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」は、「体制・仕組み」と「実行プロセス」の小項目から成り、どちらも3つの要素で構成されています。「体制・仕組み」に含まれる要素は、次のとおりです。

  • 6.全社的なITシステムの構築のための体制
  • 7.全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス
  • 8.事業部門のオーナーシップと要件定義能力

また、「実行プロセス」には、次の3つの要素が含まれます。

  • 9.IT資産の分析・評価
  • 10.IT資産の仕分けとプランニング
  • 11.刷新後のITシステム:変化への追従力

これら11の要素は、いずれもDXを推進するうえで必要となるものです。それぞれのポイントとなる部分について説明していきます。

1.経営戦略・ビジョンの提示

今後様々な予期せぬイノベーションが起こると念頭に置き、どのようなビジネスモデルを構築していくべきかを経営戦略・ビジョンとして提示することが求められています。巷でDXを耳にすることは増えましたが、ただ部下にDX推進を指示するのではなく、事業分野で新たな価値を生み出すために必要な施策の立案、指示出しが必要になります。

2.経営トップのコミットメント

DXは今後起こり得るビジネスモデルの転換、破壊的イノベーションを危惧して提唱された言葉となるため、「経営トップの人材がどれだけ自分事として捉えられるか」にDX成功の大きな鍵があります。とはいえ変革に対する社内の抵抗も想定されるため、経営トップがどれだけリーダーシップを取れるか、がポイントとなります。

関連:【DX推進マニュアル】経営者の役割や行うべきこととは?

3.DX 推進のための体制整備

DX推進には、①DX推進を力強く進めるためのマインドセット、②DXを進めるためのDX推進部門の設置、③DX推進に欠かせないDX人材の育成・確保、の3つの体制整備が求められます。「ノウハウや知見がないから動かない、何もしない」という選択は避けたいシナリオの1つであるため、パートナー企業との連携等も視野に入れながら1つずつ進めていくことが重要です。

4.投資等の意思決定のあり方

DX推進のよくある壁に「投資判断の壁」がありますが、意志決定時には以下の3つのポイントをおさえている必要があります。

  • コストだけでなく既存の業界・ビジネスモデルにプラスのインパクトを与えるものとして判断しているかどうか
  • 定量的なリターン・確度の低さから挑戦を阻害していないか
  • 投資しなかったことにより、デジタル化するマーケットの競争に勝てず、敗者となるリスクを考慮しているか

5.DX により実現すべきもの: スピーディーな変化への対応力

DXの目標はたしかに既存の業界・ビジネスモデルに変革を与え、新しい価値を生み出すことですが、今後の変化に備えて柔軟な社内体制を構築しておくことも達成すべき1つの状態といえます。例えばある1つのシステムが足かせになるのではなく、ある程度の変化が起こっても最新の技術・ツールと連携して稼働できるような刷新・体制作りが求められます。

6.全社的な IT システムの構築のための体制

全社的なITシステムの構築には、ITシステムの全体設計(アーキテクチャ)を行う人材と、それらのITシステムを活用してDXを推進する人材を管理するビジネスサイドの人材が必要となります。そのために経営層からトップダウンで指示が下りやすいDX推進部門を立ち上げ、そこから各連携部署の担当者と繋ぐ等の工夫も求められるでしょう。

7.全社的な IT システムの構築に向けたガバナンス

全社的なITシステム構築に際して、①構築するITシステムと既存ITシステムの円滑な連携を確保するのはもちろんのこと、②ITシステムが部門ごとでブラックボックス化するのを回避するため業務標準化を念頭に置いた管理体制を確立することが重要になります。よくある失敗例として「付き合いの長いベンダーに丸投げする/提案を鵜呑みにする」というものがありますが、DXはあくまで自社主導で行うべき取り組みになるため、提案があった場合も「自社DXが目指すものは何か」を明確にした意志決定が必要です。

8.事業部門のオーナーシップと要件定義能力

DXが企業のもたらす変化として「ITシステムの構築・体制作り」がありますが、これらの取り組みだけが一人歩きしてしまうと、各事業部門からDXに適した事業計画・業務企画をスムーズに吸い上げることができず、DX推進が足踏み状態に陥る恐れがあります。各事業部門がDXに対してオーナーシップを持つことも重要です。

9.IT 資産の分析・評価

自社のIT資産の分析と評価が適切に行われていないことで、レガシーとなった基幹システムを刷新するタイミングを見誤り、多大な損失を出す結果となる場合があります。一企業の損失がある業界や社会全体の損失となる可能性も大いにあるため、IT資産の適切な分析・評価は必須といえます。

10.IT 資産の仕分けとプランニング

IT資産の分析・評価を行った上で、残るIT資産と刷新するIT資産を決める必要があります。また残すIT資産の特性を理解し、全社横断的なデータ活用を可能にするシステムか構築できるかどうかも考えることが重要です。残すIT資産を全て連携するのではなく、あえて塩漬けにするプランも検討する必要があるでしょう。

11.刷新後のITシステム:変化への追従力

DXのためのITシステムは、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に適応できるようにする必要があります。そうでなければ根本的な問題解決につながらないばかりか、刷新後に再レガシー化する恐れも出てくるでしょう。とくに、「ITシステムを導入すること」がDXのゴールであると捉えてしまっているケースでは、システム刷新の成果は現れにくいといえます。

こうした事態を避けるためには、ITシステムの刷新がビジネスにプラスの影響をもたらしたどうかを評価できる仕組みづくりについて検討するとよいでしょう。

経産省が定める「デジタルガバナンス・コード」とは

経産省が定める「デジタルガバナンス・コード」とは

「デジタルガバナンス・コード」は、DX推進のために経営者に求められる対応を経済産業省が定めたものです。その概要と、「DX推進ガイドライン」の後継にあたる「デジタルガバナンス・コード2.0」のポイントについて説明します。

企業がデジタル技術を活用し成長し続けるための4つの要素

高度にデジタル化された社会を意味する「Society 5.0」に向けて、グローバル競争が激化しています。すでに市場からの撤退を余儀なくされた企業も少なくありません。

こうしたビジネス環境においても企業が競争力を発揮し続けるには、持続的な企業価値の向上をはかる必要があるといえます。デジタルガバナンス・コードでは、そのために以下の4つの要素が重視されています。

  • 価値創造のビジョンと、それを実現するビジネスモデル
  • デジタル技術の活用をふまえた、人材やITシステムの戦略
  • 成果をチェックできる指標
  • 経営トップが指揮する全社的な取り組み

デジタルガバナンス・コード2.0における改定のポイント

デジタルガバナンス・コードの最初の策定(2020年11月)から2年が経過したころ、「コロナ禍を踏まえたデジタル・ガバナンス検討会」が開催されました。ここでの議論を経て、DX推進ガイドラインはデジタルガバナンス・コードに統合されることとなります。そうして改定・公開されたのが、「デジタルガバナンス・コード2.0」です。

このとき、DXに関連する次のような内容もあわせて盛り込まれました。

  • DXには、デジタル人材の育成と確保が重要であること
  • SXやGXは、DXとあわせて取り組むべきものだということ
  • DXにはデジタル活用と、そのための行動指針が必要であること

デジタルガバナンス・コードが示す4つの柱

デジタルガバナンス・コードが示す4つの柱

デジタルガバナンス・コードは、前述の4つの要素に対応する以下の大項目から構成されています。

  • ビジョン・ビジネスモデル
  • 戦略
  • 成果と重要な成果指標
  • ガバナンスシステム

これらの項目は、企業が継続的に競争力を発揮するために重視すべき4つの「柱」となる考え方を示すものです。どのように考えればよいのか、それぞれについて説明していきます。

ビジョン・ビジネスモデル

企業は、ビジネス環境の変化がどのようなチャンスとリスクをもたらすのかをふまえたうえで、自社のビジョンを策定します。また、ビジネスモデルを設計し、ビジョンを実現可能なものにしていかなければなりません。

そのためには、ビジネスとITシステムを一体のものと捉えることが重要です。あわせて、自社が描く価値創造のストーリーを、ステークホルダーや社会全体に発信していくことも求められます。

戦略

ここでの「戦略」とは、ビジネスモデルの実現手段としてデジタル技術をどのように活用していくのかを指すものです。デジタルガバナンス・コードでは、次の2つの方策が示されています。

1つ目は、「組織づくり・人材・企業文化に関する方策」です。企業はビジネスモデルを実現するために、デジタル活用に必要な体制を構築し、運営していかなければなりません。そのためには人材育成はもちろん、いかにして外部企業とのパートナーシップを構築するかも重要となります。

2つ目は、「ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策」です。企業がデジタル技術を実際に利用できるようにするには、そのための基盤となるITシステムが欠かせません。そうした基盤の整備に向けたシステム開発プロジェクトやマネジメント、投資計画などの明確化が求められます。

成果と重要な成果指標

戦略の達成度合いをチェックするには、何らかの指標値が必要です。実際に測定可能なKPIやKGIなどの指標を定め、自己評価しながら取り組みを進めていくことが重要だといえるでしょう。

このとき、達成状況を適切に測れるものであれば、定量指標だけでなく定性指標を含めることは問題ありません。あわせて、自社がどのような指標を採用しているかについて公表していく姿勢も求められます。

ガバナンスシステム

戦略の実行にあたっては、経営者がリーダーシップを発揮することが求められます。このとき、ITシステム部門も含めた組織横断的な協力体制のもとに現状の課題を把握し、デジタル技術の最新動向なども踏まえながら戦略を見直していくことが重要です。

あわせて、サイバーセキュリティも欠かせない施策となるでしょう。デジタル技術を活用して事業を実施していく企業は、セキュリティ上のリスクに適切に対策していく必要があります。

DXを実現するための重要トピック

DX推進ガイドラインと、その後継となるデジタルガバナンス・コードについて説明してきました。ここまでの内容をふまえながら、企業がDXを実現するための重要な要素といえる3つのトピックについて紹介していきます。

  • DX推進には「経営戦略」と「体制構築」が必要
  • 既存システムの縮小・廃棄の判断が先
  • コロナ禍でDXの本質は「ITシステム更新の問題」から「企業文化刷新の問題」へと移行

重要なポイントとして、DXに向けた体制構築はどのような企業でも求められていることであり、多くの企業で「既存システムの縮小・廃棄の判断が先」になっている現状があります。また昨今のコロナ禍でDXの本質が「ITシステム更新の問題」から「企業文化刷新の問題」へと移行していることが明らかになりました。「ITシステムの更新の是非をめぐる議論の奥には企業文化刷新の問題が隠れていた」と理解できるでしょう。

DX推進には「経営戦略」と「体制構築」が必要

自社DXは決して散発的な施策で完遂することはなく、経営層の戦略構築とトップダウンによる体制構築が必要不可欠です。部門単位で取り組みを任せたり、経営戦略を大きく見直すことなく施策を展開したりすることで、一見成功に見えた取り組みは中長期的な視点で眺めた時に失敗となることもあります。常にビジネスモデル・社内体制の変化を想定した体制作りを進めることで、柔軟でしなやかな体制が構築されていきます。

既存システムの縮小・廃棄の判断が先

DXの目標は既存の商習慣・ビジネスモデルに変革を与えるものですが、その基盤を形成するITシステムが複雑化・ブラックボックス化している状態では上手く推進することができません。海外のDXと異なるのはこの点で、日本の多くの企業はまずレガシーとなった基幹システムの縮小や廃棄(または塩漬け)等を行い、全社横断的なデータ活用が可能なITシステムの構築に向けて歩みを進める必要があります。そうした体制構築が済んだ後に、DXが必要とするデータ活用基盤が整い、DX実現に向けた取り組みが加速すると認識しておきましょう。

コロナ禍でDXの本質は「ITシステム更新の問題」から「企業文化刷新の問題」へと移行

(令和2年)2020年12月28日の「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会」にて『DXレポート2 中間取りまとめ』が発表され、コロナ禍でDXの本質は「ITシステム刷新の問題」から「企業文化刷新の問題」へと移行したことが述べられました。

2018年のDXレポート発表の後、DXの取り組みを進めた企業とそうでない企業との差が広がりましたが、その間のコロナ禍でDXの本質は「素早く変革し続ける能力を身に付けること」に移行しています。

関連:DX推進のメリットとデメリットを解説!課題を乗り越え効果的に取り組むには

まとめ|全社的なDXリテラシーの向上を図ろう

コロナ禍を経てDXはますます身近になり、DXレポート2で述べられた「DXの本質は企業文化刷新の問題へと移行した」という言説に多くの人が納得できるのではないでしょうか。DXに否定的だった企業も何らかの対策を講じる局面に来ているとも受け取れます。

弊社では緊急性の高い自社DXの推進、またパートナー企業とのDX関連業務のパフォーマンスアップを計画する企業さまに向けて、全社的なDXリテラシーの向上を図る「DXリテラシー講座」を提供しています。DXの基礎知識から50以上の業界事例の解説、事業アイデアの解像度を高めるワークショップを行っておりますので、カリキュラム等をご覧になられる方はこちらからアクセスいただけますと幸いです。

”リテラシー教育”から始めるDXの内製化と成功事例
資料ダウンロードはこちら

また、弊社ではDX/AI人材育成ノウハウや各業界に特化したDX推進事例等をご紹介するセミナーを毎月2回以上開催しています。ぜひこちらも貴社のDX推進の一助にお役立てください。

DX入門編として本などの書籍だけでなく無料のDXセミナーも開催中

DXに関するお悩みや弊社へのご相談・
お問い合わせはお気軽にどうぞ
サービスの詳細資料を無料公開しています
30分で解説!デジタルスキル標準に完全準拠した個別教育型の人材育成