今さら聞けないAIとは?企業活動に必要な理由・活用例について
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AIについて耳にすることが増えたが、AIを支える仕組み・アルゴリズムや、歴史について詳しく理解している担当者は少ないことでしょう。本記事で現時点のAIにできること・できないことを知識ベースで知り、自社におけるAI活用について導入イメージを膨らませていただければと思います。
AI(人工知能)とは
AI(人工知能)とは文字通り「人間のような知的振る舞いを行うコンピューター(存在)」です。コンピューターに人間のような知的振る舞いを実行させるには様々な仕組み・アルゴリズムが必要であり、その中心技術に採用されているのが「機械学習」です。機械学習とは得たデータから反復的に学習し、明示的な指示内容をプログラミングしていなくても、以降処理するデータに対する洞察を導き出す仕組みのことを指します。つまり人間のように経験された事象を記憶(データ)として学習し、ある結果を導き出したり、予測したりできるようになるのです。AIの機械学習は未だ発展途上にあるとされており、今後より高度な仕組み・アルゴリズムが採用されていくと予想されますが、現時点では機械学習を中心とした技術に依存しています。
コンピューターが自ら学ぶこと
AIとは何かを端的に表すと「コンピューターが自ら学ぶこと」と説明できます。AIの中心技術には後述するように「機械学習」が用いられており、コンピューターがデータから反復的に学習するようプログラムされています。したがってAIは具体的な操作内容をプログラミングされていなくても、既にあるデータと反復的な学習によって何らかの答え(結果)を出すことが可能なのです。人工知能という言葉からも想像できる通り、コンピューターが人間のように得たデータ(経験)から何らかの結果(未来)を予測する状態であることがAIの正体といえるでしょう。
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中心技術は「機械学習」
AIの中心技術には「機械学習」の手法が採用されています。機械学習は既に得たデータから反復的に学習し、ある結果を洞察したり、予測したりすることを指しますが、こうした手法を支えるのはニュートラルネットワークなどの様々なアルゴリズムになります。「既にあるデータから反復的に学習し、ある結果・未来を予測する」という行為は、人間からすれば当たり前のことですが、コンピューターに同じ行為を実行させるには様々な仕組み・アルゴリズムが必要なのです。以下では機械学習を支える代表的な仕組み・アルゴリズムを解説していきます。
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仕組み・代表的なアルゴリズム
AIの中心技術を担う機械学習には様々な仕組み・アルゴリズムが用いられます。今回は数ある仕組み・アルゴリズムの中でも、特に重要とされる3つの仕組み・アルゴリズムを解説します。
ニュートラルネットワーク
ニュートラルネットワークとは、人間の脳内ニューロン(神経細胞)の構造・働きを真似して作られたアルゴリズムです。ニューロンには一定以上の電気信号を受け取ると次のニューロンに電気信号を送る連携ネットワークが構築されていますが、同様の仕組みをコンピューティングシステムに応用したものになります。
出典:SAS Institute Japan株式会社「ニュートラル・ネットワーク」
最もシンプルといわれるニュートラルネットワークには情報を受け取る「入力層」と、結果を出力する「出力層」、その間で数値化された情報の重みを受け取る「中間層(隠れ層)」があります。中間層はそれぞれ1つずつ入力層と出力層にノードを通じて結合しており、中間層同士もノードによって接続されています。こうして形成されるニュートラルネットワークは1度得た情報を記憶・学習し、新たに入力される情報に対して異なる処理を開始します。ニュートラルネットワークによって実現する機械学習のレベル・精度は中間層(隠れ層)の数と比例し、多くの中間層を利用することで音声認識や画像認識、予測といった人間のような知的振る舞いを行えるようになります。
遺伝的アルゴリズム
機械学習を支えるアルゴリズムには、生物の遺伝の仕組みをヒントにした「遺伝的アルゴリズム」が用いられています。生物の遺伝には突然変異などを含めて「良いもの(個体)を残す」という本質的な仕組みが備わっており、膨大な要素の組み合わせの中から優秀なものが残されていきます。この仕組みをコンピューターの膨大な処理に採用しており、情報の取捨選択の正確性・効率を向上させているのが遺伝的アルゴリズムなのです。
エキスパートシステム
エキスパートシステムとは、特定の専門家による思考・判断・予測等を事前にヒアリングし、ヒアリングした内容に基づいてルールを策定する仕組みです。とりわけ医療分野や企業のAIチャットボットに多く採用されている仕組みであり、事前に用意されている答えから選択的に回答を行うタイプになります。
AIの歴史
出典:総務省「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」
AIの歴史は3つのブームに分かれており、それぞれ中心となった仕組み・アルゴリズムが存在します。先述したニュートラルネットワークや遺伝的アルゴリズム、エキスパートシステムなどの仕組み・アルゴリズムは第一次人工知能ブームから第二次人工知能ブームにかけて開発されています。
第二次人工知能ブームまでは「コンピューターが自分で学習を行う」という現在のAIのレベルには到達していませんでした。第二次人工知能ブームで話題になったエキスパートシステムも、「予め用意しておいた情報をもとにコンピューターが判断を下す」というものです。とはいえニュートラルネットワークの開発や、エキスパートシステムの技術は現在のAI開発でも用いられているアルゴリズムであり、現在のAIのレベルに到達する上で重要なプロセスであったことは間違いありません。
第三次人工知能ブームで話題になったディープラーニング(深層学習)は、文字通り「層が深くなった」ことを意味しています。ディープラーニングではニュートラルネットワークにおける中間層(隠れ層)の数を増やすことで、より高度な情報処理と精度を獲得しています。しかしディープラーニングの手法は中間層(隠れ層)がブラックボックス的に処理されるため、ある処理が正しく実行されるかどうかは実際のテストを通じてしか証明できないデメリットを持っています。こうしたデメリットに注目した場合、意志決定者に対して「なぜこのような結果が出たのか」に対する説明が困難になることが想定されます。ディープラーニングの手法によって、AIはより高度な処理能力・精度を獲得しましたが、その一方でブラックボックス化した中間層の存在が特定分野の導入・活用を拒む原因となっています。
AIにできること
AIを支える仕組み・アルゴリズム、それらが開発された時期を確認した後は、現在のAIにできることを確認しておきましょう。ディープラーニングの手法によって可能となった事柄には主に以下の4つがあります。
- 自然言語処理
- 過去データを用いた未来予測
- 音声認識
- 画像認識
先述したディープラーニング(深層学習)が開発されたことによって、AIは学習していない事柄に対しても予測・推測できるようになりました。人間が普段話す言葉には「話し言葉」や「書き言葉」が入り乱れていますが、コンピューターはこうした自然言語の処理も精度高く実行できるようになっています。またディープラーニングの手法は精度の高さを獲得しただけでなく、自律的な学習・処理を可能にしたため、データを読み込む度に精度が向上していきます。この技術のおかげで音声認識や画像認識などの人間的な知的振る舞いが可能となりました。
AIにできないこと
様々な仕組み・アルゴリズムの開発、ディープラーニング手法の採用によって、AIの人間的な知的振る舞いのレベルは日を追うごとに向上しています。しかし現時点のAIの処理能力には限界があり、以下のようなできないことも存在します。
- 人間のように思考し、感情を持つこと
- 0から1を生み出すこと
現時点のAIには「人間のように思考して感情を持つこと」や「0から1を生み出すこと」ができないとされています。つまり「人間と同等の知能を持った存在ではない」ということです。人間と同じような知能レベルを持ったAIを「汎用的人工知能:AGI(Artificial General Intelligence)」と呼びますが、未だ様々な物事・事象・感情を自律的に学習し、人間のような行動を行うことはできません。先述したニュートラルネットワークや遺伝的アルゴリズム、エキスパートシステムからディープラーニングに至るまで、様々な技術を集結させても未だ人間の知能レベルには到達していないのです。
知っておきたい「シンギュラリティ」とは?
シンギュラリティ(技術的特異点)とは、「人間と人工知能の知能レベルが重なる時点」を示した言葉です。このシンギュラリティという言葉については様々な議論が繰り広げられており、シンギュラリティが来ることについて肯定派と否定派の2つの意見があります。肯定派の意見はこれまでのAIの歴史を鑑み、「人間のような知的振る舞いを行う存在が今後現れ、いずれは人間を超えていく」と想定しているものです。裏を返せば「シンギュラリティの到来が危機的なものと認識している」と言って良いでしょう。
一方の否定派の意見は、コンピューター(ロボット)が人間のような「意志」や「自我」といった感情を持つことが科学的に証明できないため、「シンギュラリティは到来しない」と予想しているものです。AIはあくまで人間の補佐的な存在に過ぎず、人間の知能を超えていくことはないと考えている専門家も存在します。否定派の意見はどちらかといえばAIの進化を楽観的に捉えていると言って良いのではないでしょうか。
AIが企業活動に必要な理由
シンギュラリティ(技術的特異点)の話題はスケールが大きく、現時点の技術では科学的な証明が難しいとされています。しかし既にAIが獲得している技術を使って、企業は多くの企業活動を効率化でき、様々な利益へと繋げていくことが可能です。以下に企業活動にAI活用が必要な理由をピックアップしました。
- 大量かつ高頻度のタスクを自動処理できる
- 既存のサービス・製品に追加できる
- 大量のデータを与えることで正確性が向上する
- データ利活用の中心を担う技術となる
今後の日本はかつてない少子高齢社会に突入することが人口学的に分かっており、国の生産力を維持する労働力人口も減少の一途をたどります。そうした裏付けから現行のビジネスモデル・企業活動では2025年を目処に日本の中小企業の多くがビジネス競争力を失うことが指摘されていたり(2025年の崖)、自治体は2040年に本来果たすべき自治体サービスを提供できなくなったりすることが予測されています。このような未来の危機に備えて、企業は積極的にAIを活用した業務自動化・業務効率化に努めるべきと推奨されています。
大量かつ高頻度のタスクを自動処理できる
AIの多くは「大量かつ高頻度のタスクを自動処理すること」を得意としています。AIの中心技術に用いられている機械学習は反復的な学習・作業の実施を可能とするため、人間が疲れを感じてしまうような業務を休むことなく実行できるのです。企業の業務においては「データ抽出業務」や「転記業務」などに高い効果を発揮します。
既存のサービス・製品に追加できる
AIツールの多くは単体のアプリケーションとして提供されることは少なく、既存のシステム・ツールとの連携が前提となって開発されます。したがって既存のサービス・製品に無理なく連携することが可能であり、既存サービスに「自動化」などの能力を付与できるのです。これまで人力で対応していた業務(例えば「顧客・社員からの問い合わせ対応」など)にAIチャットボットという形で対応できるようになります。
大量のデータを与えることで正確性が向上する
AIに採用された機械学習モデルは自律的に学習を行うため、新しいデータの入力があった場合も柔軟に適応することができます。ディープラーニングの技術を応用して作られるディープニュートラルネットワークは多くの中間層を持つため、検証・テストを実施する度に正確性が向上するメリットがあります。企業活動においてはメンテナンス頻度が減少するほか、社内ヘルプデスクのチャットボット活用に多く活用されています。
データ利活用の中心を担う技術となる
多くの分野・業界でデータ利活用を基盤とした新しい価値の創出(DX)が求められていますが、AIによる自律的な学習・パターンの蓄積はそのデータ自体が企業の資産となります。とりわけ顧客データの蓄積・分析・活用を基盤とした新しいビジネスモデルの創出など、DXが目指す未来の企業の在り方はAI技術によって可能になると考えて良いでしょう。AIとビックデータ、データサイエンスとの関係性について知りたい方はこちらからご確認ください。
AIの活用例
DXが話題になったと同時に企業のAI活用に対する関心度も上がりましたが、企業はどのようにしてAIを普段の業務に活用しているのでしょうか。以下では弊社がサポートさせていただいた企業さまの事例を紹介いたします。
【製造】三菱電機株式会社 様
企業名:三菱電機株式会社
業種:製造
従業員数:1,001人~
導入事例ページ:https://standard-dx.com/post_case/mitsubishi-electric
三菱電機株式会社さまはAIを主軸に顧客課題を解決する組織「Maisart共創センター」を設定しておりますが、人材の部署異動等によって差が生まれる「AI技術に対する体系的な理解」を埋めるため、今回弊社のAIリテラシー講座とAIエンジニアリング講座をご受講いただきました。受講成果として「顧客の理解度に合わせた提案・説明が可能になった」としています。
【Sler】株式会社ランドコンピュータ 様
企業名:株式会社ランドコンピュータ
業種:Sler
従業員数:501~1,001人
株式会社ランドコンピュータさまは独立型システムインテグレータとして顧客課題を解決してきた企業さまです。昨今問い合わせが急増している「クラウド」「AI」「IoT」の活用に対して効果的なご説明・ご提案を行うべく、弊社のDXリテラシー講座やAIエンジニアリング講座をご受講いただきました。受講効果として「DXを推進・検討される顧客に対して自信をもって導入イメージを伝えられるようになった」としています。
【運輸・運送】株式会社パスコ 様
企業名:株式会社パスコ
業種:運輸・運送
従業員数:1,001人~
株式会社パスコさまは航空測量会社として創業し、空間情報の可視化・分析・流通を中心とした新たなサービスモデルへの事業シフトを推進している企業さまです。この度「高精度な地図作成やそれらを用いたコンサルティング業務」における人材不足を解消すべく、全社的にAIリテラシー講座をご受講いただきました。受講効果として「熟練の技術者が必要と思われていた業務の一部にAIを活用する可能性が見出せたこと」としています。
まとめ|ファーストステップとしての「DXリテラシー講座」と「AI_STANDARD」
AIの基礎知識から歴史、企業活動にAIを活用すべき理由について幅広く解説しましたが、現時点で「自社の具体的なAI活用」がイメージできている担当者はそう多くないかと思われます。弊社ではDX推進の文脈におけるAI活用や、顧客課題解決を前提としたAI活用を検討される企業さまに対して、DXへの理解と事業アイデア解像度を高める講座「DXリテラシー講座」と、3ヶ月でAIエンジニア不足を解消する「AI_STANDARD」を提供しております。「自社に合ったAI活用とは何か」に日々頭を悩ませている場合は、是非この機会にお問い合わせください。