DXの本質は企業文化の変革にある!DX時代を生き抜く4つのポイントとは
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経済産業省が2020年12月に公表したDXレポート2では、アンケートに回答した500社のうち約9割が「DXプロジェクトが進んでいない」あるいは「未着手の状態である」ことが分かっています。企業のDXプロジェクトを成功に導く鍵はどこにあるのでしょうか。今回はDXの本質とされる「企業文化の変革」について解説していきます。
DXの本質とは?
経済産業省は2020年12月に公表した「DXレポート2」にて、DXの本質は「企業文化の変革にある」と言及しました。これは経済産業省が2018年9月に「DXレポート」を公表して以降、国をあげて推進してきたDXプロジェクトが「推進できている企業」と「未着手の企業」で二極化している現状を分析したものです。前者がテレワークの導入など、迅速な対応が求められたコロナ禍において、従来当たり前とされていた企業文化そのものを変革させたのに対し、後者はDXの取り組みを一時的な施策として対処、あるいは施策の優先順位を上げられずに未着手の状態が続いています。
DXレポートの発表から2年余りで、なぜこのような差が生まれてしまったのでしょうか。ポイントは「DXに対する誤解」にありました。
DXが目指す場所は「新しい顧客価値の創造」
DXの取り組みが目指すのは「新しい顧客価値の創造」によって市場優位性を確保することであり、取り組みが自社内で完結するのは成功とはいえない
DXを誤解してしまう原因として「DXの定義を多角的に検討していないこと」が挙げられます。例えばDX推進ガイドラインでは、DXを以下のように定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
このDXの定義から以下のポイントが抽出できます。
- デジタル技術を用いた顧客データの収集・蓄積・活用
- 顧客データ、社会ニーズを踏まえた新しい商品・サービスの開発
- 上記のプロセスのなかで業務・組織・企業文化を変革する
DXが目標としている所は「競争上の優位性を確立すること」ですが、その過程にデジタル技術を用いた顧客データの収集・活用があり、それを土台とした新しい商品・サービスの開発があります。つまりただ競合優位性を確保するのではなく、顧客データ活用が可能なデジタル基盤を社内に構築し、顧客データ主導のビジネスを開発する必要があるのです。
またDXのプロセスを俯瞰した時、取り組みは社内で始まりますが、最終的に自社商品・サービスに反映されることがポイントとなります。DXが自社で完結する施策になっている場合は、DXを誤解している可能性があるため注意が必要です。DXが目指す場所は「新しい顧客価値の創造」にあると理解しましょう。
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レガシーシステムの刷新、ITシステムの導入は1つの過程に過ぎない
2018年9月に公表されたDXレポートの印象が強いこともあり、「DX=レガシーシステムの刷新」と捉えた企業が一定数いることも分かっています。DXレポートでは「2025年の崖」(このまま企業でDXが推進されず、様々な課題が放置された場合、2025年以降自国の経済損失は最大12兆円/年になると試算されたもの)が話題となりましたが、とりわけ強調されたのが「レガシーシステム残存の問題」で、企業はこれまで放置してきたレガシーシステムの廃棄・刷新の問題と向き合う必要が出てきました。またそれは同時に自社基幹システムの設計や開発、保守運用を行っているベンダー企業との関係を再構築する必要性も意味しており、いつしかDXの目的が「新しい顧客価値の創造」から「レガシーシステムの刷新」へとすり替わった可能性が指摘されています。
DX推進の過程において、レガシーシステムの廃棄・刷新、またベンダー企業との関係性の再構築は避けて通れないステップとなります。しかしDXの取り組みはその2つで終えることなく、新しい顧客価値の創造へと向かっていくことが重要です。DXに際して企業は様々なIT投資を行いますが、IT導入だけで施策を完了するのではなく、定期的に目的を再確認し、自社が目指す場所・状態に歩みを進めましょう。
企業文化の変革こそDXの本質
DXの最終的な目標は「自社のレガシーシステムの刷新」でもなければ「ベンダー企業との関係の再構築」でもありません。目指すべきゴールは「新しい顧客価値の創造」です。それを実現するには「企業文化の変革」が鍵を握るとされています。DXの推進にはたしかにITの力が必要ですが、プロジェクトを力強く推進するのは人の力なのです。DXの本質的な問題が「人」にあると企業が理解し、変化する市場環境に対応できる企業文化を作り続けていくことがポイントとなるでしょう。
DX時代を生き抜く4つのポイント
DX時代を生き抜くポイントを以下の4つにまとめました。
- 変化し続ける企業文化をつくる
- データドリブンマーケティングの実施
- DX施策への継続投資
- 全社的なDXリテラシーの向上
DX時代を生き抜くには、DXを短期的な施策ではなく、中長期的な施策として捉えることが重要です。企業の経営層が自社DXを経営課題として認識し、長期的なスコープを策定することがスタートラインになります。またDXではトップダウンの推進が重要とされますが、自社DXを長期的な施策として進めるには、全社的なDXリテラシーの向上を図り、ボトムアップによる現場の主体性も期待しなければなりません。経営層と現場が「VS」の構造ではなく、一体となって動くことが大切なのです。
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変化し続ける企業文化をつくる
DXの取り組みはこれまで当たり前とされてきた企業文化や商習慣を破壊し、新たな価値を創造する可能性を秘めています。DXを力強く推進する企業にとって、DXはもはや一施策に留まらず、長期的な視点で目指すべき自社の状態として認識されることでしょう。顧客や社会に新しい価値を提供する頃には「変化し続ける企業文化」が当たり前になっていることがポイントです。
データドリブンマーケティングの実施
データドリブンマーケティングとは、様々なデータをもとにマーケティング施策の決定・実行・改善を行うものです。DXでは顧客データを積極的に収集・活用し、マーケティング施策や経営判断に応用する体制を構築することがポイントになります。DXの推進において、データドリブンマーケティングは親和性が高いものであり、顧客に新しい価値を提供する上で重要な基盤となるでしょう。
DX施策への継続投資
DX時代を生き抜くには、DX施策への継続的な投資が必要です。初期投資としてのIT導入はもちろんのこと、継続的な投資を行うには通過点となるステップに評価指標を設けることがポイントとなります。まずはしっかりと自社DXのスコープを策定し、基準となるステップ(段階)の設定、KPIなどを設定しましょう。そしてDXを継続的な取り組みとして進めるために、DX関連の補助金を使った推進を検討することも重要です。DX関連施策に対する補助金の情報は以下の記事をご確認ください。
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全社的なDXリテラシーの向上
自社DXを継続的なものにすべく、補助金等で資金面での対策を検討した後は、社内全体の士気を高める施策を実行しましょう。規模の大きい企業ほど効果的なのが、全社的なDXリテラシーの向上を目的とした講座・ワークショップの実施です。経営層からトップダウンの施策展開があっても、現場社員のDXリテラシーが低いままではDXの本質である企業文化の変革には至りません。ハード面での整備は進んでも、施策を推進する社員の意識が変わらなければDXの取り組みは頓挫してしまうため、いずれ全社的な取り組みが必要となります。
弊社では全社的なDXリテラシーの向上を目的として「DXリテラシー講座」を提供しておりますので、様々な業界事例を参考に事業アイデアの解像度を上げたい企業さまはご受講をご検討いただけますと幸いです。講座カリキュラム等はこちらからご確認ください。
まとめ
DXの推進過程にはレガシーシステム刷新やITシステムの導入といったステップがあります。しかしこれらはDXの過程において序章に過ぎず、企業は新しい顧客価値の創造に向けて、企業文化の変革にまで踏み込む必要があることを覚えておきましょう。