【DX失敗事例から学ぶ】DX推進に立ちはだかる3つの課題と成功要因 - 株式会社STANDARD

【DX失敗事例から学ぶ】DX推進に立ちはだかる3つの課題と成功要因

DX・AI技術・事例解説

この記事の目次

  1. 日本企業のDX推進状況
  2. DXプロジェクトでよくある3つの壁
  3. DXを成功に導くためのロードマップ
  4. DX推進の1つめの壁 人を巻き込むのが難しい
  5. DX推進の2つめの壁 アイデアの質が低い
  6. DX推進の3つめの壁 PoCマネジメントができない
  7. まとめ:企業変革を実現するDX推進の3つのステップ
  8. 実践にいかせるDX人材育成講座をお探しの方へ

「DXが話題になっていて、自社でも検討しているが大きな失敗はしたくない」と考えている方も多いのではないでしょうか?今回は、DXを成功させるために乗り越えるべき3つの壁について、どの時点でつまずいてしまうのか、DX推進ロードマップのステップごとに整理して解説します。

日本企業のDX推進状況

DXを推進するすべての企業に成功が約束されているわけではありません。DXへの取り組みをはじめたものの、今まさに失敗を経験しているという企業もあります。

まずは、国内のDXについて状況をまとめた3つのレポートから、日本企業におけるDXがどの程度進んでいるのかを確認しておきましょう。

「デジタル変革の進捗に関するグローバル調査」(デル・テクノロジーズ)

デル・テクノロジーズ株式会社は2020年11月、世界18カ国の企業を対象にしたデジタル変革の進捗に関するグローバル調査「Digital Transformation Index(DT Index)」の結果を発表しました。(参照元:デル・テクノロジーズ 「日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みの現状と課題」を発表

本調査によると、前回の調査時(2018年)よりもDXへの取り組みを加速させている日本企業は54.5%ありました。デジタル活用に前向きな企業が、国内で着実に増えている様子がうかがえます。一方で、グローバル平均が79.7%となっていることから、日本ではまだデジタル技術の導入に消極的な企業の割合が多いともいえます。

また、継続的なDXへの取り組みにおいて、97.5%もの企業が何らかの課題に直面していることも明らかになりました。各企業が課題としてあげた項目のうち、「予算およびリソース不足」が32.5%、「スキルおよびノウハウの不足」が27.5%ととくに多くなっています。

「デジタル化実態調査」(日経BP総研)

日経BP総研は2019年11月、DXを推進している国内企業約900社が回答したアンケート結果をもとに「デジタル化実態調査」を発表しました。(参照元:日経BP 国内900社の「デジタル化実態調査」を発表

本調査によると、ビジネスに適用することを目標として「本気」でDXに取り組んでいる企業は65.7%でした。この数字が示しているのは、PoC(概念検証)のフェーズを経て、すでに本番のDXへと舵を切った企業の割合です。

しかし、「本気で取り組み成果を上げている」と回答した企業が26.3%であることから、本気で取り組んでも約4割の企業しかDXを成功させていないという厳しい現状もうかがえます。

また、同調査では約半数の企業が既存システムを「足かせ」だと感じている実態も明らかになりました。これは、いわゆる「2025年の崖」とも呼ばれる問題で、DXの基盤となるITシステムの構築が既存システムのレガシー化により阻害されていることがわかります。

関連:2025年の崖とは?要点・課題・克服方法をわかりやすく解説!

経済産業省「DX推進指標」に基づく自己診断結果分析レポート(IPA)

IPA(情報処理推進機構)は2020年5月、「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2019年版)」を発表しました。(参照元:IPA 「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2019年版)」

2019年7月に経済産業省が公開した「DX推進指標」における各指標の成熟度レベルに基づいた自己診断結果を、約300の企業から収集・分析したものです。(参照元:経済産業省 「DX推進指標」

本調査では、国内の多くの企業がDXへの取り組みを実施段階に移そうとしていることがわかりました。一方で、企業文化や人事評価制度の面で改革を迫られている企業が多数あります。

経営の視点では、DXへの取り組みに関して先行する企業に比べ、そうでない企業は「危機感」の共有に遅れがみられました。危機感とは、DXに取り組まない場合に将来どのような問題が起こるかについての、リアルな認識のことです。

技術的な視点では、先行する企業に比べ、そうでない企業はレガシーシステムへの対応として「廃棄」を選ばない傾向が強いこともわかりました。廃棄とは、ITシステムを仕分けして、価値創出への貢献が少ないものを排除することです。

DXプロジェクトでよくある3つの壁

ここまで、日本におけるDXの状況と、多くの企業が何らかの「壁」につき当たっている現状についてみてきました。DXに本気で取り組んでいる経営者や担当者ほど、目の前の課題を自社特有のもののように感じているかもしれません。しかし、さまざまな企業で実際に起っていることと比べてみると、それらには驚くほど共通する部分があります。

大きく分けると、1.人を巻き込むのが難しい、2. アイデア(DXプロジェクト企画)の質が低い、3. PoCのマネジメントが出来ずに失敗してしまうという3つに分類できます。

逆に言うと、この3つの壁をきちんと乗り越える事が出来れば、DX推進成功の確率を相当上げることが可能になります。

関連:今さら聞けないDX推進ガイドラインの要点をわかりやすく解説!

DXを成功に導くためのロードマップ

ここでは、上記の3つの壁を乗り越えるために、DX推進を3つのステップに分けて考えていきます

最初のステップは、「職員の意識醸成とリテラシー教育」です。組織的な知識レベルの底上げをはかり、「理想のあるべき姿」を全員で共有していきます。第1の壁を乗り越えるためにも、「社内の人員をいかにして巻き込んでいくか」がこの段階におけるポイントとなるでしょう。DXを全社的な取り組みとし、その実現に向けて意識を高めておけるかどうかが、DXの成功を左右する重要な要素です。

次のステップは、「DXプロジェクト企画の質を高める」です。ここでは、DXで本当に解決すべき課題を抽出し、解決のためのさまざまなアイデアの中から成果を期待できるものを選びとっていきます。第2の壁を乗り越え、DXへの取り組みを収益につなげるために必要なステップだといえます。

そして3つ目のステップは、「正しくPoCの要件定義をして、運用に乗せる」です。PoC(概念検証)を実施する際には、成功基準を明確に定義しておくことが肝心です。これにより、DXを本開発フェーズに移行させるかどうかの判断が可能になります。PoCで踏みとどまることなく、第3の壁を乗り越えて進んでいくためのステップだといえるでしょう。

このロードマップに沿って、DX推進の壁が具体的にどのようなものなのか?それをどのように乗り越えていけば良いのか?をこのあと詳しく説明していきます。

DX推進の1つめの壁 人を巻き込むのが難しい

事業を動かすには、人の存在が欠かせません。しかし、DXは「聞きなじみがなく難しそう」というイメージから、積極的に参画してもらうことが難しい分野でもあります。この壁をより具体的に説明していきます。

1-1. 現場での優先順位が下げられる

DXを進める際に、各部門からデジタル感度が高い方々を集めてDX推進室が設けられます。DX推進室主体で、現場と連携しながら進めて行くのがよくあるパターンです。

しかし、現場のメンバーは普段の業務があります。突然依頼をしても「DXというよくわからないもの」の優先順位は低く、後回しにされてしまうことが多々あります。まずは関係者の方々に自社でDXを進める中長期的なメリットなどの重要性を説明し、少しでも当事者意識を持っていただけるように努めていくことが、最初の一歩になります。

1-2.全社ゴトの取り組みになっていない

DXとは「デジタル技術を用いて顧客に付加価値を与える組織・文化をつくること」です。

誰か一人・一部門だけが取り組めばよいものではありません。もちろん、取り組みの最初のフェーズでは一部門からスタートするかもしれません。しかし、その後は全社的に広めていき、全社ゴトの取り組みとして「組織・文化」をつくる必要があります。

DXは一過性のプロセスではありません。持続的である必要があるため、全社での「組織・文化」の構築も大切になるのです。

関連:なぜ日本企業のDX推進は前に進まないのか?スムーズにいかない理由と成功への秘訣を解説

1-3.前提知識に差があり、議論がかみ合わない

DXを始めることを決め、課題が明らかになったのはいいものの、前提として「AIとは何か?」「何ができて何ができないのか?」を知らなければ解決策のアイデアについて開発側と議論が進みません。そうならないために、DX推進の初期段階で全員のデジタル技術に関する知識レベルを一定のレベルまで上げることが必要です。

DX推進の2つめの壁 アイデアの質が低い

DXによって現状の会社の何を変えるのか、どう解決していけばいいのかを決めるステップです。いくらメンバーの育成をしても、インパクトの大きいDXプロジェクトを推進することが出来なければ、成果は見込めません。この壁をより具体的に説明していきます。

2-1.解決すべき課題を発見できていない

DXの失敗事例の多くは「解決すべき課題を発見できていないこと」が原因です。DXはあくまで課題を解決する手段のひとつです。しかし、DXをすること自体が会社の目的となってしまい、結果として失敗するケースはとても多いです。具体的に次のような事例で考えてみます。

「A社では社内でのQ&Aシステムについて社内wikiを利用していました。あるとき、他社がチャットボットを導入して経費が大幅に削減されたという話が掲示板で「仕事がはかどりそう」と話題になり、自社でも取り入れたいという声が多くあったことから、1000万円をかけて導入しました。しかし、実際に運用してみると年20万円ほどの経費削減にしかなりませんでした。」

A社の場合では単に「チャットボットを使うこと」が目的となっているため、本来解決すべき経営課題である「コストの削減」が無視されてしまっています。会社によって環境が違うため他社が成功しているからといって自社で同じように導入して同様の効果が得られるとは限りません。

2-2.質の高い解決策になっていない

「質の高い解決策」とは、「最低限のリソースで、解決すべき課題を必要十分に解決している」ものです。せっかく開発するのならあれもこれも、と足していては本当に必要な機能に対する試作にお金や時間を集中できません。A社では「社内wikiの使いにくさ」の解決のためにわざわざチャットボットを導入する必要はあったのか? 社内wikiの使い方講習や階層構造の見直しをすることで改善できないのか? について考える必要がありました。

2-3.収益に結びつくアイデアになっていない

DXに限らず、多くの予算や時間を要する施策を決定する場合、投資対効果を考えることが大切です。A社では「チャットボットを使うと仕事がはかどりそうだから」という理由で1000万円を投資してしまいました。現状のQ&Aシステムの維持費や、社内チャットボットを導入することで削減される時間的コストを概算で考えてみればコストに対してリターンが少ないことは明白です。

例えば業務改善の場合、件数×時間で損失時間を算出し、損失時間×人材コストで削減できる人件費の概算が可能です。このように解決策をひとつずつ数字に置き換えて考えると最もリターンが大きい解決策を見つけることができます。

DX推進の3つめの壁 PoCマネジメントができない

解決策がデジタル技術によって本当に実現できるのかを試す段階です。PoCではベンダーに依頼するため、これまで社内で話し合ってきたことをしっかり伝える必要があります。この壁をより具体的に説明していきます。

3-1.要件定義が甘い

PoCでの失敗事例に多くあるケースです。ベンダーに依頼する際、「こういう感じのものを作ってほしい」と曖昧なゴールのみ要件定義をして、あとは丸投げしても、ベンダー側はどんな技術をどう使ってどれくらいのレベルのものを開発すればいいか分かりません

技術的な要素を含めて、要件定義が甘い依頼は開発前から失敗がみえています。ベンダー側としても要件定義が具体的な依頼があればやるべきことがはっきりしているため、そちらを優先して開発したいと考えるはずです。検討事項を細分化した要件チェックリストを作るなどして、ひとつずつ定義していきましょう

3-2.成功の基準がなく、本開発の投資が判断できない

まずはベンダーに開発してもらったものの、「どこまでできていたら成功といえるのか」を事前に定義していないため、プロジェクト終了後に「なんとなくできている」というイメージだけが残ります。

結果、本開発の投資が判断できずにPoCに掛けたコストが無駄になってしまいます。要件定義の時点でそのPoCの成功基準を数字で明確にしておけば、適切な評価が可能です。

3-3.ビジネス適用・運用につなげられない

「PoC疲れ」「PoC貧乏」という言葉があるように、実証実験に移ったものの、実際の導入やビジネスに移行しないケースが存在します。原因としては、前述した課題②と同じように「PoCをおこなうこと自体が目的になっている」「他社の事例を参考に導入しようとした結果、細かい部分で環境が違うため自社には合わなかった」などが挙げられます。

まとめ:企業変革を実現するDX推進の3つのステップ

本記事では、DXを推進する際に多くの企業がつき当たる3つの壁と、それらを乗り越えて進んでいくためのロードマップについて説明してきました。最後に、ロードマップが示す各ステップについてまとめるので参考にしてください。

Step1. 職員の意識醸成とリテラシー教育

《目的》

人を巻き込むのが難しいという壁を乗り越えるため

《課題》

・現状業務が忙しく、現場での優先順位が下げられる

・全社ゴトの取り組みになっていない

・前提知識に差があり、議論がかみ合わない

《手段》

・社内全体でDXとは何なのか、DXがなぜ必要なのかを理解してもらう

・現状と「理想のあるべき姿」から経営課題を洗い出す

・デジタル技術にできることや仕組みの概要について学ぶ

Step2. DXプロジェクト企画の質を高める

《目的》

アイデアの質が低いという壁を乗り越えるため

《課題》

・解決すべき課題を発見できていない

・質の高い解決策になっていない

・収益に結びつくアイデアになっていない

《手段》

・解決すべき度合いの高い課題を選ぶ

・解決策についてのアイデアをできるだけ多くだす

・課題を可能な限り定量化して、アイデアを評価する

Step3. プロト開発~PoCのプロジェクト企画設計

《目的》

PoCマネジメントが出来ないという壁を乗り越えるため

《課題》

・どのように要件定義すればいいのか分からない

・成功の基準がなく、本開発の投資が判断できない

・ビジネス適用・運用につなげられない

《手段》

・要件定義を技術的な面を含めてしっかりと行う

・検証すべき要素を明確した上でPoCの実施をする

改めて意識しておいて頂きたいポイントはこの3つの壁をきちんと乗り越える事が出来れば、DX推進が成功する確率を相当上げることが可能になるということです。ぜひこのポイントを押さえて、DX推進を成功に導いてください。

実践にいかせるDX人材育成講座をお探しの方へ

DXに本気で向き合う企業が日本でも年々増えています。一方で、すでにDXに取り組んでいる企業のほとんどが、何らかの課題を感じているというのも現状です。

DX成功へのロードマップは、企業変革を全社的なテーマとする「組織・文化」をつくることからはじまります。その際、社内の人員をいかにして巻き込んでいくかが、とくに重要なポイントです。DXの推進方法やデジタル技術に関する知識レベルの底上げを行い、DXを全社ゴトの取り組みとしましょう。

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