リーンキャンバスで新規事業を可視化!メリットと書き方をわかりやすく説明 - 株式会社STANDARD

リーンキャンバスで新規事業を可視化!メリットと書き方をわかりやすく説明

DX・AIプロジェクト推進

この記事の目次

  1. リーンキャンバス(Lean Canvas)とは
  2. リーンキャンバスを活用するメリット
  3. リーンキャンバスに配置する9つの要素の意味と書き方
  4. リーンキャンバスの効果的な埋め方・使い方
  5. 自社の独自性と優位性を知り収益につながる事業の創出を

多くの企業がDXを推進するなか、自社が主戦場とする市場に突如として無名のスタートアップ企業が現れるケースも珍しいことではなくなりました。デジタル技術による市場の破壊力には計り知れないものがあり、「新参者に負けるはずがない」などと悠長に構えている間に突き放されてしまうことも考えられます。このようなリスクを避けて変化する市場に対応していくには、事業アイデアをいち早く整理するためのツールを手に入れる必要があるでしょう。

ビジネスモデルを明確化するフレームワークとして、「リーンキャンバス」が注目されています。スタートアップ企業のためのものというイメージが強いかもしれませんが、企業が新規事業を開始する際にも活用できるツールです。そこで本記事では、リーンキャンバスのメリットや作り方、効果的な使い方などについて説明します。

リーンキャンバス(Lean Canvas)とは

リーンキャンバス(Lean Canvas)は、起業家として知られるアッシュ・マウリャ氏が提唱したフレームワークです。事業のアイデアを可視化するのに適した手法として、同氏の著書「Running Lean(実践リーンスタートアップ)」のなかで紹介されています。

リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバス

リーンキャンバスでは、ビジネスモデルを9つの要素で整理して可視化します。これをもとに、ビジネスモデルの検証などが可能になります。

ビジネスモデルを視覚的に表現するフレームワークとしては、「ビジネスモデルキャンバス(BMC:Business Model Canvas)」も有名でしょう。BMCは既存事業のビジネスモデルについて理解し、さらなる発展を目指すのに適したツールです。

これに対し、リーンキャンバスは新規事業の立ち上げに特化している点が特徴です。

リーンキャンバスとDX

リーンキャンバスは、スタートアップ企業だけのものではありません。

例えば、企業のDXでは既存事業の改善のほかに、新規事業につながる取り組みもあるでしょう。特に新規事業の創出においては、リーンキャンバスを活用することでさまざまなメリットが期待できるのです。

これから立ち上げようとしている事業のビジネスモデルを端的に定義するとともに、ビジネスの成功確率を高めるためにリーンキャンバスが役立ちます。

リーンキャンバスを活用するメリット

リーンキャンバスを活用するメリット

新規事業の立ち上げにリーンキャンバスを活用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、以下のようなメリットについて説明します。

– メリット1:事業の全容を素早く簡単に整理できる
– メリット2:事業の要点を網羅しリスクを把握できる
– メリット3:事業に関する議論の土台にできる
– メリット4:事業計画をブラッシュアップしやすい
– メリット5:テンプレートさえあれば書き始められる

メリット1:事業の全容を素早く簡単に整理できる

新規事業においては、立ち上げまでのスピードが重要になることも少なくありません。しかし、事業計画書の作成には、通常は膨大な時間がかかります。

一方、リーンキャンバスは時間をかけて緻密な事業計画を考えることを強要しません。新規事業の全容をたった1ページに収まる、簡単な表のような形式で表現できるからです。ビジネスモデルの全体像をスピーディに整理できる点が、リーンキャンバスのメリットのひとつです。

メリット2:事業の要点を網羅しリスクを把握できる

どれほどページ数を割いて見栄えのよい事業計画書を仕上げたとしても、重大なリスクにつながる見落としがあっては意味がありません。

リーンキャンバスでは、1ページ内のどこに何を書くかが決められています。ひとつひとつの項目を埋めていく過程で、事業の要点について漏れなく検討することが可能です。リスクとなりうる要素を、早期に洗い出せる点がメリットです。

メリット3:事業に関する議論の土台にできる

「ビジネスモデルについて考える」というプロセスそのものが、何をすることなのか不明瞭な場合も少なくないでしょう。

リーンキャンバスを用いれば、ビジネスモデルの要点をシンプルな形で明確に表現可能です。また、コンパクトな資料にはその内容を伝えやすいというメリットもあります。

これを土台とすれば、よりスムーズなコミュニケーションをはかれます。事業の要点について共通の理解を築いたうえで、検討が必要な部分について議論を進めやすくなるなどの効果が期待できるでしょう。

メリット4:事業計画をブラッシュアップしやすい

ビジネスモデルを素早く整理できるとはいえ、リーンキャンバスを一度書き上げただけで事業計画も完成するというわけではありません。より現実的な計画とするためには、ブラッシュアップが必要となるのが通常です。

このとき、ビジネスモデルの要点をシンプルかつ網羅的に表現できるというリーンキャンバスの特徴がメリットとなるでしょう。事業計画を練っていく際のコミュニケーションの土台として適している点に加え、手直しも比較的容易に行うことができます。

メリット5:テンプレートさえあれば書き始められる

書き始めるのに特別なツールなどを必要としない点も、リーンキャンバスのメリットです。

もちろん専用のアプリやWebサービスを使用してもよいですが、パワーポイント(PowerPoint)やエクセル(Excel)などの使い慣れたツールで枠を描き記入欄を用意しておけば、作成し始めるには十分です。

また、インターネット上で検索すればダウンロードして使えるテンプレートもすぐに見つけられるので、扱いやすいものを利用するとよいでしょう。

リーンキャンバスに配置する9つの要素の意味と書き方

リーンキャンバスの9つの要素と作り方

リーンキャンバスは、9つの要素について検討し記入していくことで完成します。ここからは、各要素の意味や書き方について説明します。

– 要素1:顧客セグメント(Customer Segments)
– 要素2:課題(Problem)
– 要素3:独自の価値提案(UVP:Unique Value Proposition)
– 要素4:ソリューション(Solution)
– 要素5:チャネル(Channels)
– 要素6:収益の流れ(Revenue Streams)
– 要素7:コスト構造(Cost Structure)
– 要素8:主要指標(Key Metrics)
– 要素9:圧倒的な優位性(Unfair Advantage)

要素1:顧客セグメント(Customer Segments)

「顧客セグメント」には、製品やサービスのターゲットとなる顧客を定義して記載します。

このとき、新規事業を早期に受け入れてもらうため、「アーリーアダプター」を意識することが大切です。アーリーアダプターとは、新しい製品やサービスを最初に使ってくれるユーザーのことです。どのようなユーザーがターゲットとなるのか、その人物像をできる限り明確にしましょう。

要素2:課題(Problem)

「課題」には、顧客が抱えているであろう課題を定義していきます。裏を返せば、これから提供する製品やサービスで、顧客は何を解決できるようになるかということです。もし多数の課題があるようなら、より重要と思われるものに絞って書き出します。

また、同じ課題の解決に利用できるソリューションがすでにあるようなら、併せて記入しておきましょう。これは、これから立ち上げようとしている事業の競合を理解するために重要なことです。

要素3:独自の価値提案(UVP:Unique Value Proposition)

「独自の価値提案」には、ユーザーに提供できるユニークな(オリジナリティのある)価値を定義します。新しい製品やサービスのどこに魅力があり、どの点で差別化できるのかを明確にするということです。

「顧客セグメント」で定義したターゲットユーザーが「課題」を解決したいというニーズを満たすために、自社を選ぶ理由となりうる「強み」を示します。

要素4:ソリューション(Solution)

「ソリューション」には、「独自の価値提案」で定義した価値を具体的なソリューションに落とし込んで定義していきます。

ここでは、自社の製品・サービスならではのユニークな特徴を盛り込むことがポイントです。すでに競合が存在する場合は特に、同じようなソリューションを後発で提供するだけでは魅力を伝えることが難しいためです。

要素5:チャネル(Channels)

「チャネル」には、ユーザーとの接点を定義します。どこでユーザーと出会い、どのようなルートで製品やサービスを届けるのかを考えるということです。

「顧客セグメント」で定義した人物像や、「ソリューション」の性質などによって、どのチャネルを選択すべきかは変わってきます。すべてをWebで完結させるのが最適なこともあれば、オフラインを中心とするのがベストな製品・サービスもあるでしょう。

要素6:収益の流れ(Revenue Streams)

収益の流れ(Revenue Streams)

「収益の流れ」には、収益をあげるための仕組みを設定していきます。どのような行動をユーザーに起こしてもらえれば、自社の収益につながるかを考えましょう。

これは端的にいえば、新しい製品やサービスの「価格を決める」ということです。単価が決まっていれば、取引1回ごとにいくらの利益が見込まれるのかが明確になります。そこから、事業全体の収益もシミュレーションできるようになります。

要素7:コスト構造(Cost Structure)

「コスト構造」には、「ソリューション」を通してユーザーに価値を提供するために必要な費用を定義します。原材料費や人件費のほか、流通や顧客獲得のためのコスト(広告費用)なども洗い出しておきましょう。

システム開発費や設備投資費用など、製品やサービスを市場に投入するまでに初期費用が必要な場合は、あわせて記載しておきます。

要素8:主要指標(Key Metrics)

主要指標には、事業活動の評価指標を記載します。事業としての最終目標を達成するために求められる、中間目標を明確にしましょう。平たくいえば、KPIを定義しておくということです。

ここでは、製品やサービスが受け入れられ、ユーザーの課題を解決できていることが確認できるような指標を考えます。顧客の獲得数やリテンション(リピート)率など、できる限り定量的な評価が可能な指標を設定することが望ましいでしょう。

要素9:圧倒的な優位性(Unfair Advantage)

「圧倒的な優位性」には、自社の製品やサービスが、市場優位を維持できる理由を定義します。持続的に収益を出すために、競合が真似できない圧倒的な強みをみつけるということです。

例えば、「最新のテクノロジーを使う」という程度では、いずれ他社に追いつかれてしまう恐れがあるでしょう。それよりも「専門家を中心とする独自の人脈がある」、「現行サービスに魅力を感じてくれている大勢のユーザーがいる」などの強みのほうが圧倒的だといえます。

リーンキャンバスの効果的な埋め方・使い方

リーンキャンバスの効果的な使い方

ここまで、リーンキャンバスの作り方をみてきました。ここからは、どのような使い方をすればより効果が期待できるのかについて説明していきます。

– 各要素の本質を理解しながら書く
– 要素の順番と関係性を意識する
– 収益につながるアーリーアダプターを特定する
– 最初の3つの要素に注目して順番にチェックする
– ハイレベルコンセプトを書いてみる
– 左右をバランスよく埋めていく
– 正しさにこだわらず短時間で仕上げる
– 小さくスタートし改善していく
– アジャイル開発の手法も取り入れる
– デジタル技術を最大限に活用する

各要素の本質を理解しながら書く

リーンキャンバスはテンプレートさえあれば書き始められると説明しましたが、極端にいえば、ホワイトボードや模造紙に手書きすることもできるでしょう。

重要なのは見た目や書式ではなく、内容を理解しながら書くということだからです。9つの要素がもつ意味について自社の事業に照らし合わせて考え、端的な表現で書き出すようにしましょう。

要素の順番と関係性を意識する

リーンキャンバスの各要素には、1〜9の番号が振られていることに注目しましょう。これは、考える順番に意味があることを示しています。そのため、基本的には1番から順に要素を埋めていくのがおすすめです。

何を書くべきか順序よく考えていけば、要素と要素の関係性も見えてきます。各要素がつながっていることがわかれば、あとは流れるように書き出していけるでしょう。

収益につながるアーリーアダプターを特定する

新規事業のサービス内容によっては、すべてのユーザーが「お得意様」になるとは限りません。たとえば、無料ユーザーとマネタイズ対象のユーザー(=お金を払ってくれる顧客)が分かれている場合もあるでしょう。

一方、事業を軌道修正していく際には、アーリーアダプターからのフィードバックが重要なヒントとなります。そのため、第1の要素である「顧客セグメント」では、どのようなアーリーアダプターが収益をもたらすのかを考えておくことがとくに重要です。

最初の3つの要素に注目して順番にチェックする

リーンキャンバスに記入する9つの要素は、すべてが論理的に関連しています。なかでも、事業の立ち上げで重要となるのは最初の3つの要素です。

まずは「顧客セグメント」と「課題」から、誰の何を解決する製品・サービスなのかが明確になっているかをチェックするのがポイントです。

次に「独自の価値提案」から、事業に独自性があるかチェックします。ここまでできれば、残りの要素も含めて将来性のある事業といえるかどうかを判断できるでしょう。

ハイレベルコンセプトを書いてみる

最初の3つの要素をチェックする際には、あわせて「ハイレベルコンセプト」も書き出してみましょう。

ハイレベルコンセプトとは、事業の提供価値を一言で表現したキャッチフレーズのようなものです。新しい製品やサービスの魅力が伝わりやすいメッセージを、顧客向けのフレーズとして書いておきます。これにより、顧客が自らの問題を解決するために、なぜ自社を選ぶのかというイメージが具体的になるのがポイントです。

左右をバランスよく埋めていく

 

リーンキャンバスでは、各要素の配置にも意味があります。テンプレートの上段に注目してみると、第3の要素「独自の価値提案」を中心に、左右3つずつの要素が並んでいるのが見えるでしょう。

左側にある「課題」「ソリューション」「主要指標」は、製品・サービスに関する要素です。対して、右側には「顧客セグメント」「チャネル」「圧倒的な優位性」と、市場に関する要素が配置されています。

抜けの少ない事業計画を目指すには、左右の要素をバランスよく埋めていくのがポイントです。

正しさにこだわらず短時間で仕上げる

リーンキャンバスで最初に重視すべきなのは、「価値を提供できる事業かどうか」です。あまり早い段階から「正しく書けたかどうか」を気にすることは、さほど重要ではありません。

正しさや正確さにこだわって作成に時間がかかってしまうよりも、まずは一度書き上げてから、その後の議論やコミュニケーションのための土台とするのがよいでしょう。そうすることで、「シンプルでコンパクトなため事業の要点を共有しやすい」というリーンキャンバスのメリットが活きてきます。

小さくスタートし改善していく

新規事業にはリスクがつきものです。しかし、最初にリーンキャンバスを作成した時点では、リスクをある程度のところまでしか想定できません。また、この段階では仮説も多く含まれているでしょう。

リスクを適切にコントロールしていくには、事業を最小限の規模でスタートさせて市場の反応を見ながら、仮説の検証と軌道修正を繰り返していく必要があります。そのために適した手法として知られているのが、「MVP開発」です。詳しくは、こちらの記事で紹介していますので参考にしてください。

左右をバランスよく埋めていく

アジャイル開発の手法も取り入れる

リーンキャンバスの「リーン(lean)」には、英語で「無駄がない」という意味があります。これは、顧客や市場を開拓していく際の考え方の一つです。

一方、より優れた開発を目指す手法として有名なものに、「アジャイル開発」があります。「アジャイル(agile)」は「素早い」という意味です。リーンとアジャイルは目的は異なるものの、「改善を繰り返す」という共通点をもっています。

製品・サービスを進化させていくためには、両者を組み合わせるのも有効な方法だといえるでしょう。

デジタル技術を最大限に活用する

近年はデジタル技術の浸透により、誰もが素早く製品やサービスを顧客の元に届けられる時代になりました。とはいえ、無計画に事業を開始できるようになったわけではありません。

そこで、リーンキャンバスで事業を計画する際には、デジタル技術を積極的に取り入れることがプラスになると考えておくとよいでしょう。デジタル技術の活用で、製品やサービスを市場に投入し改善していくスピードが増し、より価値のある事業へと成長させられる可能性が高まるのです。

自社の独自性と優位性を知り収益につながる事業の創出を

リーンキャンバスは、新規事業を立ち上げる際に役立つフレームワークです。ビジネスモデルを素早く整理し、リスクを網羅的に把握することで、新たな価値を市場に届けられるようにするツールとして活用できます。

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