【製造業のDX】業界に求められる変革と解決すべき課題とは
デジタル技術により力をつけたゲームチェンジャーの台頭により、既存企業が市場を奪われるケースも目立ってきました。各企業は、市場での競争力を維持・強化するために、DXをスピーディーに進める必要性に迫られているといえるでしょう。これは、どの業界でも起こりうることであり、製造業においても例外ではありません。
しかし、「DXで何を目指せばよいのかわからない」、「DXに取り組んでいるがなかなか進まない」という方も少なくないのではないでしょうか。
そこで本記事では、製造業の企業がDXの実現を目指すことでもたらされる変革と、解決すべき課題について説明していきます。
製造業におけるDXの意味
まずは、製造業の企業にとって「DXはどのような意味をもつのか」について、以下の視点で整理します。
– DXと製造業
– 製造業にDXが求められる背景
– 製造業におけるDXのターゲット
DXと製造業
DXとは、デジタル技術とデータを活用してビジネスを変革し、組織としての競争力向上や市場における優位性の確立をはかることです。日本では経済産業省が中心となり、業界の垣根なくあらゆる企業での推進を国が後押ししています。
製造業においては、「デジタル技術とデータなら日常的に活用している」と思う方も少なくないでしょう。しかし、その実態がIT活用による業務の効率化を指しているのだとすれば、それは本来のDXではありません。DXは、組織全体・ビジネス全体にわたる継続的な変革への取り組みだからです。
より詳しいDXの定義については、こちらの記事でも解説しているのであわせて参考にしてください。
製造業にDXが求められる背景
日本企業の多くは、いまだ老朽化したITシステムを抱えたままです。これを刷新できなければ、近い将来には大きな損失を出すことになるといわれています(いわゆる「2025年の崖」問題)。
加えて、長引く新型コロナウイルスの影響は、経済の不確実性を常態化させました。具体的には、原油価格の高騰や半導体などの部品・素材の不足、工場の稼働停止などの問題が発生しています。こうした要因により、サプライチェーンの寸断を実際に経験した企業も少なくないでしょう。
製造業の企業は、DXによってビジネスをより強靭なものに再構築する必要があるといえます。
製造業におけるDXのターゲット
IPA(情報処理推進機構)は、「製造分野のDX」を次のように定義しています。
「顧客価値を高めるため、製造分野で利用されている製造装置や製造工程の監視・制御などのデジタル化を軸に、ITとの連携により製品やサービス、ビジネスモデルの変革を実現すること」
具体的には、以下の3つを「目指す姿」として、変革のターゲットを例示しています。
– スマートファクトリー:工程の可視化とデータ活用により「生産プロセス」を最適化する
– スマートプロダクト:自社の強みにデジタル技術を融合させ「製品」の付加価値を高める
– スマートサービス:モノ(製品)を売ることからコト(顧客体験)を重視する「ビジネスモデル」へのシフト
DX推進が製造業にもたらす変革
製造業のプロセスは、研究開発や製品・工程の設計を含む「エンジニアリングチェーン」と、受発注から物流・販売とアフターサービスまでを含む「サプライチェーン」に大別されます。これらが互いに結びつき、付加価値が生み出されているのです。
デジタル技術は、このどちらのプロセスにも画期的な革新をもたらす可能性があります。ここでは、DXが具体的にどのような変革を製造業にもたらすのか、それぞれのプロセスに分けて紹介していきます。
– エンジニアリングチェーン
– サプライチェーン
エンジニアリングチェーン
エンジニアリングチェーンにおいては、DXは研究開発や製品設計に大きな変革をもたらすと期待されます。
研究開発には、膨大なデータを扱うために時間を要するテーマが少なくありません。そのため、AIと十分な計算能力があれば、最適解を早期に導き出すための強力なツールとなるでしょう。
商品企画では、これまで以上に顧客データの活用が進むと考えられます。既存製品の使用データなどを分析すれば、より価値の高いプロダクトやサービスの考案につなげられるメリットを得られるからです。
製品設計では、高度なデジタル技術が開発スピードの向上をもたらすでしょう。例えば、モデルベース開発(MBD)は、コンピューター上での効率的なシミュレーションを可能にします。
サプライチェーン
サプライチェーンにおいては、データ活用によるプロセスの最適化がDX施策の中心となるでしょう。
例えば、受注を取りまとめて工場ごとの負荷を平準化したり、顧客データの分析にもとづく販売予測から工場の稼働状況をコントロールしたりする施策が挙げられます。IoTセンサーで収集したデータからは、機器の不調を検知して対応する予知保全によって機会損失を防ぐことも可能でしょう。
ほかにも、生産と物流を一体の流れととらえて調達や納品を最適化したり、遠隔による保守で作業員の安全確保と作業効率の両立を実現したりといった変革が考えられます。
製造業の企業が解決すべきDXの課題
ここからは、製造業の企業がDXを推進するうえでよくある2つの課題と、その解決のために求められることについて説明していきます。
– 深刻化する人手不足と工程の属人化
– なかなか進まないITシステムへの投資
深刻化する人手不足と工程の属人化
国内の労働人口が減少していることによる人手不足は、製造業においても深刻な問題となっています。DXでは、業務の最適化や効率化も課題であるものの、そのための体制づくりが進んでいないのが現状です。
製造業の生産プロセスがこれまで熟練者の現場力に支えられてきたことも、その理由のひとつとして挙げられます。製造業はとくに、ナレッジの属人化が顕著な業界だといえるのです。
こうした状況を解決するには、人への依存度が高い「匠の技」をデータ化する取り組みが必要でしょう。ナレッジを人から人へ継承しやすいものにするとともに、これまで暗黙的だった技能をビジネスに活用可能な形式に変えるのです。これらの取り組みには、現場の協力が欠かせません。
一方で、現場のITアレルギーを克服できないケースも少なくないようです。デジタル技術やデータ活用に消極的なままでは、現場の本質的な課題が見えず収益性の高いDXのアイデアにもつながらないでしょう。この場合、解決にはまず組織のITリテラシーを底上げし、デジタル技術への抵抗をなくすことが必要です。
なかなか進まないITシステムへの投資
製造業では、ITへの投資が進んでいないわけではありませんが、その多くは旧式の基幹システムを維持・更新するために使われています。
しかし、不確実性の高い現在のビジネス環境においてリスクに強い強靭な企業となるには、変革の基盤となるITシステムの構築が必須です。これは、「ダイナミック・ケイパビリティ」の強化に欠かせない施策だといえます。そのためには、ノンコア業務のアウトソーシングなどで投資拡大をはかる必要があるでしょう。
一方、ITリテラシーの不足から、自社にどのようなITシステムが求められているのかを思い描けないケースも少なくありません。人材育成のための体制を構築し、組織的なリテラシー向上をはかる必要があるといえます。
製造業におけるDX成功への道のりはITリテラシーの底上げから
製造業の企業は、DXにより研究開発や生産・物流などの最適化をはかることが可能です。DXに取り組むことで、ゆくゆくはより価値の高いプロダクトや、顧客体験を重視したサービスも実現できるようになるでしょう。本質的なDXの成功には、まずは社内のITリテラシー向上のための人材育成に取り組むことが欠かせません。
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