DXとデジタル化の違いは「目的」にある|DXの始め方・施策例もご紹介 - 株式会社STANDARD

DXとデジタル化の違いは「目的」にある|DXの始め方・施策例もご紹介

DX・AI技術・事例解説

この記事の目次

  1. DXとデジタル化の違いと関係性
  2. DXとデジタル化が混同される現状と理由
  3. DXとデジタル化の違いを理解することで避けられるリスク
  4. DX推進のメリット・デメリット
  5. DX推進のロードマップ
  6. DXの始め方とは?
  7. 企業DXの施策例
  8. まとめ

DXとデジタル化の違いは目的にありますが、両者の関係性を正しく認識できていない方もいることでしょう。そこで今回はDXとデジタル化の違いを「目的」の観点から解説し、DX推進のロードマップやDXの始め方も併せて紹介していきます。自社DXを推進予定の方は是非参考にしていただけますと幸いです。

DXとデジタル化の違いと関係性

まずは、「DX」と「デジタル化」という用語が何を指すものなのかについて整理しておきましょう。簡潔に言い表すなら、以下のようになります。

– 「デジタル化」とはデジタル技術で業務を置き換えること
– 「DX」とはデータとデジタル技術でビジネスに変革を起こすこと
– DXとデジタル化は相互に関係する

それぞれについて、詳しく説明していきます。

「デジタル化」とはデジタル技術で業務を置き換えること

「デジタル化」とは、これまでアナログな手法で行ってきた業務の進め方を、デジタル技術で置き換えることをいいます。例えば手書きや紙ベースの書類をデジタル文書に置き換えたり、口頭での伝達や手作業に頼っていた業務にデジタルな手段を取り入れたりすることです。

これらの置き換えは、すでに多くの企業が実行してきたことでしょう。デジタル化によって、業務を素早く正確にこなせるようになるからです。デジタル化の主要な目的は、「業務効率化」にあるのだといえます。

「DX」とはデータとデジタル技術でビジネスに変革を起こすこと

「DX」とは、さまざまなデジタル技術によってデータを有効活用し、組織や経営・ビジネスに変革をもたらす取り組みのことです。例えば経営データの分析に基づいて主観だけに頼らない判断をしたり、最新のテクノロジーをベースに新たな顧客体験を生み出したりします。

デジタル技術の浸透により、市場では急速な複雑化・高度化が進んでいます。さらに、通信技術が発展した現在では、国内のみならず海外の企業が競合になるケースも少なくありません。こうした状況でも生き残っていけるよう、すでに多くの企業がDXに取り組みはじめています。DXの主要な目的は、変化の激しい市場における「競争力の維持・強化」にあるのだといえます。

DXとデジタル化は相互に関係する

DXを実現するためには、デジタル技術が欠かせません。DXを目標に掲げる企業にとって、デジタル化はその手段にあたるということです。一方で、デジタル技術を導入した企業がその可能性に気付き、取り組み内容がDXへとシフトしていくケースもあります。

このように、DXとデジタル化は互いに切り離すことのできない概念です。両者の目的は異なりますが、深い関係があるのだと理解して取り組むべきものだといえるでしょう。DXの意味やデジタル化との違いについては、以下の関連記事も参考にしてください。

関連:デジタル化のその先へ!DXの必要性やメリット・実現に向けて必要なこと

DXとデジタル化が混同される現状と理由

ドリーム・アーツ株式会社は、2021年8月に大企業の経営層および役職者1,000名を対象とするアンケート結果を公開しました。そのなかで、「DXとデジタル化の違い」についての質問に、73%もの人が「説明できない」と回答しています。明確に「説明できる」と回答した人は、わずか10%にすぎませんでした。

デジタル化との違いを認識できるかどうかはDXにおける基礎であり、「リテラシー」といってもよいものです。しかし、このアンケート結果からは、多くの人が両者の違いを意識していない現状がうかがえます。

DXとデジタル化はなぜ混同される?

DXとデジタル化は主に目的が異なります。DXの目的が「企業の競争力維持・強化」であるのに対し、デジタル化は「業務効率化」が主な目的です。

これら2つの用語が混同される背景には、DXがその推進過程において「デジタル化を推進する」ことにあります。企業がDXを推進する目的は、デジタルディスラプションなどに代表される変化の激しい市場環境において競争優位性を保ち、顧客へ新たな価値を提供することです。競合他社が様々なデジタル技術を活用してマーケティング施策を刷新したり、経営戦略をアップデートしたりするのであれば、自社も同じくデジタル技術を活用して競争力を強化していく必要があります。こうした文脈で実施されるDXにおいて、デジタル技術の活用は1つの手段であり、導入・運用することは目的とはなりません。

一方で、AIやクラウドなどの先端技術を搭載したデジタルツールは、導入に際して業務工数の洗い出しや、工数の最適化を行います。これらのデジタルツールは膨大なデータから必要な情報を瞬時に抽出したり、決まった作業工程を自動化したりすることに長けているため、業務効率化の目的で導入されることがあります。

DXの推進過程において、企業は限られた経営資源から最小のコストで最大限のインパクトを生みたいと考えるでしょう。そこで最もコストがかかる人件費を抑え、デジタルツールの活用によって業務効率化・省力化を図る施策がDX推進のファーストステップに据えられるのです。

DXとデジタイゼーション・デジタライゼーションの違い

デジタル化の他に、DXと混同される概念として「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」があります。経済産業省のDXレポート2では以下のように定義されています。

DX(デジタルトランスフォーメーション):組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革

デジタライゼーション:個別の業務・製造プロセスのデジタル化

デジタイゼーション:アナログ・物理データのデジタルデータ化

引用元:経済産業省「DXレポート2」『4.3 DX成功パターンの策定 | DXの構造』

これら3つの概念は階層構造になっており、デジタイゼーションから順にDXの取り組みは想定され、最終的にDX(デジタルトランスフォーメーション)の段階へと到達します。

ただし同レポートでも記述があるように、DX推進は必ずしもデジタイゼーションから取り組むものではなく、企業・各部門の状況に即して適切な段階からDX推進をスタートさせることが重要です。したがってこれら3つの概念は、自社DXの状況・状態を把握する際の目安として活用すると良いでしょう。

DXとデジタル化の違いを理解することで避けられるリスク

DXとデジタル化の違いを理解することで避けられるリスク

ここまで、DXとデジタル化は異なる概念であるにもかかわらず、よく混同されていることを説明してきました。しかしDX推進においては、両者の意味を明確に理解し、違いを認識することで避けられるリスクもあります。ここでは、以下のリスクについて説明していきます。

– 必要な人材を見極められない
– 取り組みを継続できない
– 企業としての競争力向上につながらない

必要な人材を見極められない

デジタル化は、デジタル技術によって直接的に解決できる課題です。SI(システムインテグレーション)に強い外部企業に相談すれば、実現できることも多いでしょう。

これに対してDXでは、デジタル技術を変革の手段として用います。その際には、どのような変革を実現したいのかを理解したうえで、自ら戦略を立てなければなりません。外部の人材に頼るだけでは、場当たり的な対応で終わってしまうリスクがあるということです。

DXにおいては、自社の組織やビジネスについて深く理解している社内の人材が、主体的に取り組むことが大切だといえます。

取り組みを継続できない

デジタル化は、一定の成果を出せれば終わる取り組みだといえます。既存業務をある程度まで効率化すれば、満足できる成果があったと考えられるためです。

これに対してDXには、より長期的・継続的な視点で取り組んでいかなければなりません。自社だけが「DXは完了した」と思っても、それによって市場の変化が止むことはないためです。常にビジネスを変革し続けていなければ、しだいに市場での適応力を失っていくリスクがあります。

DXにおいては、継続的な変化が求められることを認識できるかどうかが重要だといえます。

企業としての競争力向上につながらない

デジタル化を実現するには、特定の業務を改善することにフォーカスすれば十分だといえます。その成果は、1つの部門に閉じられた「個別最適」となるケースが多くなるでしょう。

これに対してDXは、企業としての競争力を強化することにフォーカスした変革です。それには部門を越えた、「全社最適」の施策が求められます。取り組みを組織全体に広げていくことを意識しなければ、求めている成果につながらないリスクがあるといえるでしょう。

DXを実現するには、全社的な取り組みをリードする視点をもてるかどうかが肝心だといえます。

DX推進のメリット・デメリット

DX推進のロードマップや自社DXの始め方を確認する前に、DX推進が企業にもたらすメリットとデメリットを確認しておきましょう。

先ほども少し紹介しましたが、DXの推進過程では「業務のデジタル化」を経験します。業務のデジタル化に際し、まずは作業工数の洗い出しを行うため、社員1人ひとりが普段行っている業務内容が可視化されます。その時点で非効率な作業を行っている社員が確認できた場合は、業務の標準化を意図し、既存のツールで共有可能な作業マニュアル、自動化マクロなどを施策として実施できるでしょう。また同時に「どのようなデジタルツールを活用すればさらなる業務効率化・省力化が実現されるのか」といった部分を思考できるようになるため、段階的な施策の展開も期待できます。さらにこうしたデジタル化の取り組みで業務効率化・省力化を実現すれば、社内の貴重なIT人材のリソースを空けることも可能なため、DX戦略の構築に向けた準備も進められます。

とはいえDX推進は良い側面ばかりだけでなく、様々な壁にぶつかります。まず考えられるのが「DX推進の舵取りを行うDX人材がいない」という問題です。昨今様々な業界で行われるDXとあって、DX推進を経験しているDX人材を新たに採用するのは難しく、自社の人材からDX人材を育てる必要があります。しかし経験したことがないDXにおいて、DX人材を育てるのは至難の業であり、経営層にDX推進のコミットメントと、ある程度の推進に関する知識がなければなりません。

またDXで最初に取りかかるデジタル化の施策では、新しいデジタルツールの導入を検討することでしょう。しかしレガシーとなった自社の基幹システムでは最新のツールとの連携・共有がスムーズに行われず、せっかく導入しても運用コストがかさんだり、終いには使われないまま放置されたりといった事態が発生する可能性があります。DXのファーストステップとしてデジタル化を推進したくても、それ以前にレガシーシステムの刷新の問題が横たわっている場合もあるため注意が必要です。

関連:DX推進のメリットとデメリットを解説!課題を乗り越え効果的に取り組むには

DX推進のロードマップ

先ほど説明したDXの階層構造とは別に、弊社ではDX推進の大まかなロードマップを策定しています。自社DXの状態を把握するための目安にもなりますので、是非参考にしてみてください。

  • 【Lv.1】 バラバラに実施(個別最適):各部門がそれぞれPoC等を実施しており、全社的な連携は取れていない状況。目的も部門内で閉じている
  • 【Lv.2】DX推進の集約組織設置:DX推進を全社的にリードしていく集約的な組織が設置されており、経営レベルでDXの取り組みが始まる状況
  • 【Lv.3】DX戦略の立案・部門間連携(全社最適):DX戦略を立案し、各部門が連携しながら全社最適な行動が取れている状態。本格的な成果が出始めるような状況

DXの始め方とは?

DX推進のロードマップをさらに掘り下げると、以下のような4つの施策が見えてきます。

  • 全社的なDXリテラシーの向上
  • 事業アイデアに基づいた個別最適施策の実行
  • DX推進チームの設置と連携強化
  • 中長期的なDX施策の立案

DX推進のロードマップではLv.1として「バラバラに実施(個別最適)」という状態を挙げましたが、その後のフェーズへとスムーズに移行するために、準備段階として「全社的なDXリテラシーの向上」を推奨しています。

「個別最適の施策を実行しているからLv.1なんだ」「今は施策の目的が部門内に閉じてるけど、いずれ誰かが全社的な目的へと広げてくれるだろう」などと考えていては、いつまで経ってもDX推進のスタートラインに立てません。まずは全社員で「自社DXとは何か」を考える機会を作り、インプットだけでなくアウトプットの場を設けることが重要です。自社にリソースがない場合は、外部パートナーに協力を依頼して講座を設定したり、ワークショップを実施したりする工夫が求められます。

関連:DXは何から始めるべき?知っておきたい3つの施策フェーズと推進例

企業DXの施策例

企業DXの施策例

DXのロードマップやDXの始め方を概説しましたが、実際に企業のDX推進ではどのような取り組みが行われるのか、その施策例を紹介していきます。ここで注意したいのは、これらの施策が「DXの文脈で実施されている」という点です。個別具体的に見ると業務効率化に見える施策も、DX推進の中に位置づけてあげることが重要となります。

電子請求書の導入

電子請求書の導入は、DX推進過程におけるデジタル化として位置づけられます。企業のDXがいきなり実現することはないため、こうしたアナログ業務の電子化から取り組みをスタートさせることが重要です。電子請求書を導入することで、販売管理情報をデータとして保存でき、請求書の自動作成や自動発送などが実現します。

電子契約サービスの導入

電子請求書の導入と並行して、クラウドサービスを活用した電子契約も進めましょう。電子契約では文字通り、契約をWeb上で締結でき、電子署名などの技術を活用して不正や改ざんのリスクを低減しています。今後テレワークや外注などが増える中、1つひとつの契約を紙で行うのは非常に手間がかかりますので、Web上でスムーズに契約締結が行える電子契約を取り入れることで業務効率化が実現します。

行政手続きの電子化

今や行政手続きも電子申請・電子申告できる時代です。e-Taxなどに代表されるように、行政がサポートするシステムも浸透しています。またe-Taxなどの行政システムは、クラウド会計ソフトなどと連携しているため、電子化された会計データからスムーズに書類を作成し、各種申請・申告の手間を省きます。

リモートワークの導入

新型コロナウイルス感染症蔓延の影響で、多くの従業員が経験しているリモートワークも、DX推進の1つとして位置づけられます。リモートワークの導入により、企業は従来の働き方との差から初めは戸惑うことでしょう。しかし徐々に遠隔でもスムーズに作業が進められるよう業務の電子化を推進したり、必要/不要な業務の選定を行ったりといった変化が期待できます。当然良い面ばかりではありませんが、リモートワークを推進することで、結果的にDX推進の土台が出来上がるケースも多いのです。

クラウドシステムを使ったデータ連携

クラウドシステムを活用して各部署・部門のデータを連携することも、DXの取り組みの1つとなります。まずは各部署・部門における個別最適の施策を実施していきますが、事前に全社的な連携を見据えてツールを導入しておくと、全社的な施策を展開する際にデータの活用がスムーズに行われます。データ連携によって統合された情報は施策の状況を確認したり、次の施策を考える際の材料となりますので、DX推進における重要な施策といえます。

DX人材の育成

DXを推進する手段には、デジタルツールの導入以外にも、社員の育成(リスキリング)などがあります。ツールやシステムだけをアップデートするのではなく、現場で働く社員のリスキリングも同時に推進していくことが重要です。自社にリソースがない場合は、外部のプロに協力を依頼し、「AI活用に関する技術顧問サービス」などを受講することがポイントとなります。

社員がAI活用に関する知識やAI実装経験を有することにより、例えばシステムインテグレータなどの職種では、クライアントの要望に対して「AIの具体的な活用方法」や「AIによる効率化・自動化の限界」などを踏まえた説明、提案を行うことが可能です。クライアントのAI活用に関する要望を拝聴し、その要望の目的や真意を知ることができれば、AI以外のツールをビジネスに応用することも可能となるでしょう。

AI音声自動応答サービスやテキストマイニングの活用

特にコールセンター業務において、顧客応対にAI音声自動応答サービス(ボイスボット)を活用することで、定型的あるいは簡易的な顧客応対業務をAIに任せることが可能です。従来は顧客からの問い合わせに、人間のオペレーターだけで対応していましたが、顧客を待たせてしまうことから放棄呼(オペレーターに繋がる前に顧客がコールを切断すること)が発生していました。放棄呼や非効率な電話応対は顧客体験(CX)を低下させるため、昨今の企業はAIを活用したサービスで解決を図ることが求められています。電話応対にAI音声自動応答サービスを活用した暁には、顧客の問い合わせに対して条件分岐的に自動音声を再生し、「顧客が必要とする情報をSMSにて送信する」といった解決方法も提案することができます。

またベテランオペレーターの応対内容をテキストマイニングで分析することで、ベテランオペレーターの技術を定量的に可視化することが可能です。「どのようなタイミング・頻度で単語や文節が利用されているか」などを可視化できるため、ベテランオペレーターの顧客応対技術をオペレーター間で教材として共有し、応対技術の標準化に活用することができます。顧客対応の無駄を省いた業務効率化とともにCX向上を実現することでしょう。

まとめ

DXはその推進過程でデジタル化を経験しますが、あくまで目的が企業の競争力維持・強化などに向いている必要があります。デジタル化を実現して満足するのではなく、自社が目指すべき未来の姿や、顧客に提供できる新しい価値に目を向け、継続的に施策を展開していくことが重要です。スムーズにDXの各工程へと移行できるよう、まずは全社的なDXリテラシーの向上を意図した施策を実施しましょう。弊社では「DXリテラシー講座」と題して、企業の全社的なDXリテラシーの向上を支援しております。

さらに、AI技術をビジネスへと活用するための育成が必要な場合は、最短3ヶ月で実務・実践に対応できるAIエンジニアやAIマネジメント人材を育成する「AI_STANDARD」をご活用ください

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