クラウドAIとエッジAIの違いは?活用例やDXとの関連性を解説 - 株式会社STANDARD

クラウドAIとエッジAIの違いは?活用例やDXとの関連性を解説

DX・AI技術・事例解説

この記事の目次

  1. クラウドAIとは
  2. エッジAIとは
  3. クラウドAIとエッジAIの違い
  4. AIをDXの文脈から捉える重要性とは?
  5. まとめ

AIを活用した様々なWEBサービスが登場し、企業の業務は効率化されましたが、これらのAIの多くは「クラウドAI」とよばれ、クラウドコンピューティングの技術を利用したサービスとなります。また昨今注目を集めている「エッジAI」はクラウドAIが持つ「情報通信の遅延リスク」と「情報漏洩リスク」の2つを解消するAIとして認識され始めていますが、明確な違いや共通点を認識している方はそう多くないでしょう。今回の記事ではクラウドAIとエッジAIの違いを紹介すると同時に、それぞれの仕組みを採用したサービスや活用例、DXとの関連性を解説していきます。

クラウドAIとは

クラウドAIとは、AI機能がクラウド上に設置されたAIのことであり、データ収集を行うエッジ端末(デジタル機器)ではデータ収集のみを行う仕組みのことを指します。エッジ端末で収集した大量のデータはデータセンターなどに送信され、データセンター内のGPU・CPUで高速処理(学習・推論)した後、エッジ端末に「推論の実行」という形でデータが送信されます。

後述するエッジ端末に比べて、大規模データを迅速処理することに長けており、かつサーバーを自由に拡張できるため、様々なビジネスシーンで取り入れられてきました。しかし今後デジタル機器が増え、膨大なデータがクラウド上に送信されるようになると、情報通信の遅延が発生したり、データ通信量に応じて通信コストが増えてしまったりする恐れがあります。

クラウドAIの活用例

クラウドAIはクラウド上で学習・推論といった処理を行うため、自社サーバーに負荷をかけない環境下での運用に重宝されています。自社サーバーをクラウド上に置くことは情報漏洩のリスクと隣り合わせになるため、クラウドAIの機能を活用したサービスがビジネスシーンで多く活用されています。

例えばAIチャットボットはクラウド上でAIを機能させる代表的なサービスで、クラウドAIのメリットを享受しながら、自社サーバーへの負荷もかけない一石二鳥のサービスといえます。またデジタル広告の最適化にもクラウドAIが使用されており、大規模かつ複雑なデータの分析・検証・推論を実行することが可能になっています。

クラウドAIを活用しているサービス

クラウドAIを活用しているサービスの代表的なものにAmazon社が提供しているAWS(Amazon Web Services)があります。AWSはクラウドコンピューティングを利用したサービスであり、オンプレミスといった物理サーバーを購入・維持しなくても、クラウド上の仮想サーバー・データベース利用・AI活用などが容易に利用できるサービスです。

AWS以外に、マイクロソフト社が提供するMicrosoft Azureや、IBM社が提供するIBM Watson、Google社が提供するGoogle Cloudなどがあります。これらのクラウドコンピューティングを使ったサービスを用いて、WEB上の様々なAIツールは稼働していることが多く、一般的にAIサービス・AIツールと呼ばれるものはクラウドAIのことを意味しています。

クラウドAIのメリット

クラウドコンピューティングを利用したクラウドAIには、主に以下の3つのメリットがあります。

  • 自社サーバーへの負荷がかからない
  • 複雑かつ高度な処理が可能
  • 大規模データの迅速処理が可能

クラウドAIはクラウドコンピューティングを用いたAIサービスを提供するため、オンプレミス型の自社サーバーに負荷をかけることなく、簡単に開発・運用環境を構築できます。先述したAWSのようなサービスを活用することで、AI開発環境をクラウド上に構築することも可能であり、かつ開発後の運用も全てクラウド上で稼働させることが可能です。

またクラウドAIはデータの分析・検証・推論といったプロセスを全てクラウド上で行うため、膨大なデータを保存・処理に関わる容量を拡張しながら迅速に処理することが可能になっています。高度な処理を行うAIもクラウドサービス(従量課金制)で利用できるため、初期コストや運用コストを抑えることができます。

クラウドAIのデメリット

一方クラウドAIにも以下3つのようなデメリットが存在します。

  • リアルタイム性に欠ける
  • 情報漏洩の危険性が高い
  • データ通信量に応じて通信コストが増える

クラウドAIは大量かつ複雑なデータ処理を迅速に行うことができますが、今後社会規模でデジタル機器が増加していくことを考えた場合、様々なエッジ端末(身近なものにスマートフォン等)で情報通信の遅延が発生する恐れがあります。クラウドAIはその仕組み上、クラウド上でデータの学習・推論を行うため、エッジ端末へのデータ送信が遅延してしまうリスクを抱えています。

またクラウド上にデータの保存・管理を行えるようになるため、オンプレミス型サーバーに比べて情報漏洩対策にやや不安が残ります。クラウドAIの「利用量に応じて機能拡張できる点」はメリットでもありますが、同時にデータ通信量が増えることで通信コストがかさむデメリットにもなり得ます。今後デジタル機器があふれる時代に突入することを想定すると、後述するようなエッジ端末にAI機能を搭載した「エッジAI」の積極活用が求められるようになるでしょう。

エッジAIとは

エッジAIとは、スマートフォンなどの様々なデジタル機器(エッジ端末)に学習・推論を行うAIを搭載した仕組みのことを指します。エッジAIはエッジ端末で学習・推論が行えるため、クラウドAIのように情報通信の遅延、機能拡張にともなうコスト増加といったデメリットがありません。

エッジAIはエッジ端末でデータの学習から推論、実行までを進められるため、車の自動運転や工場の製造機器など、リアルタイムでの判断が求められる場で注目を集めています。全てのAIをクラウドAIとして稼働させるのではなく、エッジAIを適宜活用し、リアルタイムでの遅延やコスト削減を目指す動きが広まっているのです。

関連:【自動車業界でのAI活用事例】技術変化とニーズの変化への対応

クラウドAIとエッジAIの違い

クラウドAIはエッジ端末で収集したデータをクラウド上に吸い上げ、クラウド上で稼働するAIが学習・推論を行い、推論の実行指示をエッジ端末へと返します。一方のエッジAIには2つのタイプがあり、①エッジ端末で収集したデータをエッジ端末で学習・推論・実行するタイプと、②エッジ端末で収集したデータをクラウド上で学習させ、推論のみをエッジ端末で実行するタイプがあります。

それぞれの違いをまとめた表が以下になります。

 

クラウドAI エッジAI
メリット ・自社サーバーへの負荷がかからない

・複雑かつ高度な処理が可能

・大規模データの迅速処理が可能

・リアルタイムな応答、行動が可能

・情報漏洩リスクが少ない

・通信コストの削減

 

デメリット

 

・リアルタイム性に欠ける

・情報漏洩の危険性が高い

・データ通信量に応じて通信コストが増える

 

・AI処理に必要なリソースに限界がある

・エッジ端末の定期的なメンテナンスが必要

昨今エッジAIが注目される理由

先述したように今後様々なデジタル機器(エッジ端末)の増加に加え、膨大なデータ送受信が行われる未来を想定した時、自社サービス・製品をエッジAIとして展開させることでエッジAIのメリットを享受することができます。オンプレミス型サーバーからクラウドコンピューティングにトレンドが移って間もないですが、指数関数的にエッジ端末の増加が予想される未来では、クラウドAIのみで情報通信の安定性、情報セキュリティを確保するのは難しいと予想されているため、エッジAIを活用したサービス・製品の開発が注目を集めているのです。

エッジAIの活用例

エッジAIはエッジ端末でリアルタイムな判断が求められる「自動運転」や、工場の製造ラインにおける「検品機器」等に活用されています。クラウド上にデータを送信し、処理結果を待つのでは対応できない現場でエッジAIは活躍しているのです。今後エッジ端末は増えていきますが、作業を行う労働者人口は減少の一途をたどります。従来よりも少ない人員で求められるパフォーマンスを発揮するためにも、エッジAIの活用は今後様々な現場で活用されていくことでしょう。

AIをDXの文脈から捉える重要性とは?

ここまでクラウドAIとエッジAIの特徴・違いについて解説していきましたが、これらの技術は知識としてではなく、自社のサービス・製品の一部として活用できることがポイントとなります。そのためにはAIをDX推進の一環として捉え、DX文脈におけるAIとしての学習・実践を続けていくことが大切です。自社サービス・商品の利用シーンや、カスタマージャーニー等を参考に、自社DXにおけるAI活用シーンを想像してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

関連:AI導入のメリットとデメリットは?わかりやすい具体例で解説

まとめ

クラウドコンピューティングの活用によってクラウドAIが浸透していますが、今後デジタル機器があふれる未来においてリアルタイムな処理・行動が実行できるエッジAIに注目が集まっています。これらの技術は知識としてではなく、自社サービス・製品を支える技術として活用することが大切です。

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