【自動車業界でのAI活用事例】技術変化とニーズの変化への対応 - 株式会社STANDARD

【自動車業界でのAI活用事例】技術変化とニーズの変化への対応

DX・AI技術・事例解説

この記事の目次

  1. 自動車業界の現状
  2. 自動車業界の課題
  3. 自動車業界のAI活用事例
  4. 公道での自動運転バスの実用化
  5. デジタルツインを活用した研究開発のコスト削減
  6. まとめ

自動車業界の現状

長い間、日本の製造業の中でも盤石な立ち位置を確立してきた自動車メーカー。そんな自動車業界も、今は「自動車保有台数の停滞」と「自動運転技術への期待の高まり」2つの大きな変化の渦中にいます。

まず、「自動車販売台数の減少停滞」について説明します。

一般社団法人 日本自動車工業会が実施した「2019年度乗用車市場動向調査」から、1985年〜2003年まで増え続けてきた乗用車保有率・複数車保有率が停滞していることが分かります。日本の総人口は減少していますので、保有率が下がることは必然的に自動車の保有台数が減っていることを意味します。

これまでは、自動車を保有する人数も、一人当たりの保有台数も右肩上がりだったため、製造すれば売れる状態でしたが、停滞した今はそうとは言えません。

実際に、新車販売台数が減少しているという調査結果も出ています。

マイボイスコム株式会社が実施した「自動車の購入に関するインターネット調査」によれば、世帯で「新車で購入した車がある」と回答した割合は55.1%でした。この割合は2010年と比較すると8%程落ち込んでいます。

さらに三井住友銀行の『国内自動車ディーラーを取り巻く業界動向』という調査では、2030年頃には自動車の販売台数は2020年現在よりも2割程減少するという予測も出ています。

参考:自動車の購入に関するインターネット調査

参考:2025 年自動車業界の将来展望

参考:国内自動車ディーラーを取り巻く業界動向

続いて、もう一つの「自動運転技術への期待の高まり」について説明します。

自動運転技術とは、その名の通り、車を自動で運転してくれる技術で、センサーが対向車や人を発見して衝突を回避したり、信号の色の変化などを察知して発進・停止などをAIが判断してくれるものです。

自動運転技術を実装した車が普及すれば、ドライバーの操作ミス・判断ミスによる事故の減少が見込めます。また、交通情報・渋滞情報などを察知して、社会全体で最適なルートでの移動が実現できれば、交通・物流の最適化が見込めるため、非常に注目されている技術です。

そのため、自動車の自動運転技術の実現は国も後押ししています。

国土交通省が主管している自動走行ビジネス検討会によれば、2025年頃までに敷地内の移動サービス、トラックなどの物流サービス、バスやタクシーなどの流通サービスに到るまで、自動運転を実現させる方針となっています。

こうした国の方針を受けて、トヨタ、日産、本田技研、マツダと日本を代表する自動車企業は自動運転技術の実現と商用化に向けて、各社が競って開発競争を行っています。

現在は日本各地で実証実験を行っている段階で、自動運転の実現に向けて動き続けています。

参考:自動運転を巡る動き

参考:自動走行ビジネス検討会 「自動走行の実現に向けた取組報告と方針」 報告書概要 Version4.0

自動車業界の課題

自動車業界の現状から、下記の2つの課題が浮かび上がってきます。

①コストパフォーマンスの改善

②世界に先駆けた自動運転技術の実現

自動車業界の課題①:コストパフォーマンスの改善

自動車は、購入だけでなく維持費に多くの費用がかかることが、購入・保有台数が増加しない一員となっています。他にもカーシェアリングの普及や公共交通サービスの充実など、利便性やコストの観点で代用される手段が増えてきています。

実際に、自動車はコストが多くかかるため、保有を諦めたという方が多いということが調査からも分かっています。

売上の基盤となっている販売台数が減少すれば、新製品や新技術などの開発費用や人件費など、今後の売上を伸ばすための投資に割くお金がなくなり、理想の事業成長を実現できない可能性が出てきます。

そのため、販売台数を増やすという観点でも、1台あたりの粗利を増やすという観点でも、生産の効率化によるコストパフォーマンスの改善が求められています。

関連:AI導入のメリットとデメリットは?わかりやすい具体例で解説

自動車業界の課題②:世界に先駆けた自動運転技術の実現

自動運転技術は日本のみならず、海外でも多くの企業が開発を行っています。

オランダを拠点にしているFCAは米グーグル系ウェイモの技術を採用し、2023~25年には自動運転レベル4を実現するとしています。

自動運転技術にはレベル0~レベル5まであり、レベル4とはシステムが自動車の運転に関わることを全て操作するレベルのことです。特定の条件が揃った場合、人は自動車を運転する必要がなくなります。

ウェイモの自動運転技術は世界でも最高峰とされており、ボルボも提携を発表するなど、自動運転技術はウェイモの技術が基準になるとも言われます。

中国では一般客向けの自動運転タクシーサービスを公道ですでに実施しています。

中国IT大手「百度(Baidu)」は2020年4月から一般向けサービスを開始し、住宅地や商業地などで45台の車両をテスト走行させ、自動運転実現に向けてのデータを蓄積させているのです。

一方で日本でも負けずに自動運転技術の実現に邁進しています。

2020年4月には道路交通法が改正され、自動運転レベル3までの車が公道で走行可能になりました。さらにレベル3のクルマを世界で最初に実用化するのはホンダと言われており、2020年内の実現に向けて動いています。

世界で自動運転技術の開発・実装が進む中で、世界に先駆けて自動運転を社会実装することは、日本の技術力を世界に示し、自動運転車の世界シェアを高めるために非常に重要なポイントです。

そのため、今後も各社が集中して投資して開発を進めていくことが予想されます。

関連:DX推進のメリットとデメリットを解説!課題を乗り越え効果的に取り組むには

参考:FCA、ウェイモの自動運転技術採用 「レベル4」で

参考:中国で相次ぐ自動運転タクシーの公道テスト IT企業ら「レベル4」の競争激化

参考:ついに日本で走り出す! 自動運転“レベル3”の車が走行可能に

参考:ホンダ社長、自動運転レベル3車を年内に発売

自動車業界のAI活用事例

生産ラインへのAI導入による生産性工場

自動車業界に限らず、多くの業界で生産性向上は求められている課題です。しかし世に生み出す製品は、同時に安全性も求められています。

そのため生産性向上だけに囚われてしまい、安全性を蔑ろにしてしまってはいけないのです。

こうした製品の安全性に問題がないかにAIが投入されています。

事例

アウディが自社工場の品質検査でAIを導入

課題

品質検査はこれまで目視によって行われていましたが、より高度な精度を保った品質確保を求められると同時に生産性向上にも努めなければなりませんでした。

解決策

品質検査に機械学習が備わっている画像検知ソフトを利用して、品質作業を自動化しました。

効果

数百万枚の画像データを用いて判別ソフトを開発した結果、プレス工場で作られていた金属板の亀裂などを自動で判別できるようになりました。さらに判別までにかかる時間は数秒で完了でき、生産性向上にも寄与しました。

また機械学習を用いたことで、これまでは発見することができなかった亀裂までも発見できるようになり、品質検査のレベルが上がっています。

参考:アウディ:プレス工場での品質検査にAIを導入へ

参考:アウディ、プレス工程の品質検査にAIを活用

公道での自動運転バスの実用化

海外では一般客向けに自動運転タクシーサービスなどが行われていますが、日本でも部分的に公道での自動運転を実証実験しています。

日本各地で多くのテスト走行を実施しており、自動運転の実用化に向けて前進しています。

事例

北九州市、BOLDLY、西日本鉄道、西鉄バス北九州などが参画し、「朽網駅~北九州空港線」の約10kmで自動運転を行いました。

課題

北九州市では高齢化率が政令指定都市の中で全国トップ、転出率も全国最多だったため、慢性的な運転手不足が顕在化していました。

解決策

2020年2月に自動運転バスを導入しプレ認証を行い、課題の抽出と環境の整備を行いました。

期待される効果

運転手不足の解消を図っています。現在は将来の実用化に向けて2020年10月から新たな実証実験を行う予定です。

参考:自動走行小型バス実現に向けて

参考:北九州空港アクセスで小型自動運転バスのプレ実証へ

参考:中型自動運転バスの実証実験を実施—信号情報を活用 北九州エリアで西鉄など、10月22日から

デジタルツインを活用した研究開発のコスト削減

デジタルツインとは「実在のリアル空間にある情報を集め、集めた情報を仮想空間上でリアル空間を再現する技術」です。

デジタルツインの技術を活用することで、自動車の生産設備を仮想空間で再現し、生産ラインの生産性向上のための実験することができます。

仮想空間であれば、リアル空間で掛かっていた実験のための設備投資を削減することができます。また、設備ができるまでのタイムラグも縮減できるため、より早いスパンで生産性の向上を見込むことができます。

事例

日産自動車がシトリックスの仮想化ソリューションを取り入れ、デジタル上で検証実験を行い生産性向上とコスト削減を達成した

課題

駆動装置(パワートレイン)制御の実験にはリアル環境では多大なコストがかかるのと同時に効率性が悪かった。

解決策

デジタルツインの技術を利用して、仮想空間内での実証実験の実施と世界中の拠点からのリアルタイム共有を行うことにより解決を計りました。

効果

仮想空間上で実証実験を行う環境を整えたことにより、世界に散らばる拠点それぞれで設備投資や増強をする必要がなくなりました。加えて人が各拠点に移動する必要もなくなったため、人的コストの削減にも成功しています。

実験が効率的に行えるようになったため、生産性向上にも繋がっています。

参考:Citrix Virtual. Apps and Desktopsの活用で実験設備のセキュアなグローバル共用を実現

参考:【図解】デジタルツインとは?やさしく解説

まとめ

以上のように、「コストパフォーマンスの改善」、「自動運転技術の実現」のために、様々な取り組みが進められています。

自動運転をはじめとする、技術開発には、投資が不可欠となります。しかし、足元を支えている自動車販売の実績が振るわないとなると、安定した投資をすることが難しくなります。

そういった意味では、生産を効率化しコストパフォーマンスを改善することは、短期的な経営の改善だけでなく、長期的な成長のためにも必要なものとなっています。

もし、安定的に次世代の技術に投資が進められ、自動運転が実現されれば、交通インフラの効率化や交通事故の減少など、見込まれる社会への効果は計り知れません。また、自動車内の空間の使い方も見直され、新しいサービスが生まれるきっかけにもなるはずです。

歴史上、自動車をはじめとする移動手段の技術革新は、社会の在り方に大きな影響を与えてきました。今後も、自動車業界は「コストパフォーマンスの改善」「自動運転技術の実現」の両輪を動かし、社会を前進させることに大きな期待が掛かります。

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