DX推進に役立つデジタルツールの選び方と独自システム構築のポイント
DXを推進する企業では、さまざまなデジタルツールが利用されています。とはいえ、闇雲に新しいものを取り入れれば役立つというわけではありません。自社のビジネスや業務プロセスをふまえて、DXで成し遂げたい目的に適したものを選ぶことが重要です。
そこで本記事では、DX推進に役立つデジタルツールの選び方について紹介します。また、手ごろなツールがみつからなかった場合のために、独自システムを構築する際のポイントについてもあわせて説明します。
企業変革とデジタルツールの関係とは
DXはデータとデジタル技術を活用して、ビジネスや組織のあり方を変えていく取り組みです。そのために、既存のデジタルツールを利用したり、独自の社内システムを構築して運用したりといったことが各企業で積極的に行われています。
このとき注意しなければならないのは、ツールはあくまでDX推進のための「手段」だという点です。ツールを導入することが目的化して、DX本来の目的から逸脱してしまうと、期待したような効果を得られなくなる恐れがあるのです。どのようなツールも「便利そうだから」といった理由からではなく、「DXで何を実現したいのか」という目的に応じて選ぶことが重要だといえます。
DX推進に役立つデジタルツールの選び方
ここからは、DXの推進に役立つデジタルツールを以下の4つの目的別に紹介していきます。
– コミュニケーションを円滑化したい
– チームの生産性を向上させたい
– 社内業務を効率化したい
– 営業とサポートのデータを活用したい
どのツールも、うまく使えば組織としての能力向上に寄与するものですので、導入を検討する際の参考にしてください。
コミュニケーションを円滑化したい
社内外のコミュニケーションを円滑化するためには、「チャットツール」や「オンライン会議ツール」が役立ちます。
チャットツールは、限られたメンバーのみが参加できる、いわゆる「社内SNS」です。近年ではプライベートでもチャットを利用している人が多いので、メールよりも手軽なコミュニケーション手段として導入しやすいでしょう。電話を利用する場合と比べると、会話の履歴がデータとして残る点が優れているといえます。
また、複数人で会話ができるグループチャットを会議の代わりとして活用すれば、時間と場所にとらわれずにオンラインでも議論を進められます。「働き方改革」の一環として、テレワークにも役立つツールです。
一方で、業務内容によっては、メンバーが顔を合わせて話し合う機会を設けることが重要なときもあるでしょう。そのような場合には、オンライン会議ツールが役立ちます。テレワークなどによる多様な働き方を推進しながらでも、顔を見て会話ができるためです。
普段のコミュニケーションはチャット、定期面談などの重要なシーンではオンライン会議、のような使い分けをするのも便利でしょう。また、社内向けの用途に限らずセミナー開催や商談など、外部とのコミュニケーション手段としてもオンライン会議ツールを活用できます。
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チームの生産性を向上させたい
チームの生産性を向上させるには、「プロジェクト管理ツール」や「オンラインストレージ」の活用がおすすめです。
プロジェクト管理ツールは、部門やプロジェクトといったチームごとにタスクの進捗状況、成果物や各種資料などを一元管理できるツールです。運用ルールにあわせてカスタマイズしやすいものや、アジャイル型のシステム開発に適したツールなど、さまざまな種類があります。
プロジェクト管理ツールはチームの特徴にあわせて、使い勝手のよいものを選ぶのが基本です。ただし、DXの観点で考えるならプロジェクトごとにバラバラのツールを採用するよりも、全社共通のツールとして一本化するほうがデータ活用の面でメリットが大きいといえます。
オンラインストレージは、社内にあるさまざまなデータを「ファイル」として保管し、共有したいときに便利なツールです。とはいえ、保管と共有だけならすでに社内サーバーなどで実現できている企業も多いでしょう。
近年注目されているのは、「クラウド型」のオンラインストレージです。アクセス権さえあれば出先からでもデータの読み書きが可能なため、情報共有がスムーズになります。
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社内業務を効率化したい
社内業務の効率化を目的とする場合は、「バックオフィスツール」や「ナレッジベース」が役立ちます。
バックオフィスツールは、人事や経理といった間接部門における業務効率化のために導入を検討したいツールです。各種申請作業などをスピーディに処理できるようになるほか、ペーパーレス化にも効果が期待できます。オンラインストレージと同様にクラウド型のサービスもあるため、「出社しなければ仕事にならない」という問題の解消にもつながるでしょう。
ナレッジベースは、業務において繰り返し参照される情報を整理しておくのに役立つツールです。「社内Wiki」や「社内FAQ」と考えればイメージしやすいかもしれません。社内ヘルプデスクの一次窓口として活用すれば、担当者の業務量を削減できます。扱う情報量が多い企業では、AIを用いたデータ分析やチャットボットなどをあわせて導入する事例もあります。
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営業とサポートのデータを活用したい
営業とサポート業務のデータ活用には、「SFA」や「MA」、「CRM」などが役立ちます。
SFA(Sales Force Automation)とMA(Marketing Automation)は、それぞれ営業活動とマーケティング活動に関するデータ管理を支援するツールです。SFAは、商談の記録などを分析して、既存顧客との関係性をチーム内で共有します。
これに対し、MAは見込み顧客の関心や行動にもとづいて適切なアプローチのタイミングを自動的に見極め、商談に至るまでのプロセスをサポートします。いずれも、ITに馴染みがない人にも使いやすい作りになっているツールが多いのが特徴です。
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客とのやり取りを管理し、カスタマーサポートを適切に行えるようにするためのツールです。マーケティングからサポートまで幅広く活用できるよう、SFAの機能をカバーしている製品も多くあります。また、MAと連携させて見込み顧客のデータもCRMで一元管理する企業も増えてきています。
インターネットとスマートフォンが広く普及したことを背景に、これらのツールは重要な意味をもつようになりました。「これからはユーザーと直接的な関わりをもちたい」と考えている企業やメーカーにとって、今後も役立つツールだといえるでしょう。
DX推進における独自システム構築のポイント
既存ツールでは手軽に解決できない課題があるときや、ツールから得たデータをさらに分析・活用したい場合には、独自システムの構築について検討する方法もあります。ここでは、独自システムを構築する際に気をつけたい5つのポイントを紹介します。
– ポイント1:自社の課題から機能を明らかにする
– ポイント2:開発に必要な知識・スキルを特定する
– ポイント3:費用対効果について早期に検証する
– ポイント4:操作性やセキュリティにも配慮する
– ポイント5:適切なマネジメント手法を取り入れる
ポイント1:自社の課題から機能を明らかにする
最初のポイントは、課題の明確化です。
既存のデジタルツールを導入する場合でも独自システムを構築する場合でも、求められる機能はDXの目的に応じて決まります。これは、自社が抱える課題を解決するために、「どのデータを何に使えばよいのか」を考える必要があるということです。
その際、AIなどの最新技術についての知識があれば、より高度なデータ分析を前提にすることも可能でしょう。こうして求められる機能が明らかになれば、システムで実現すべき要件も明確になっていきます。
ポイント2:開発に必要な知識・スキルを特定する
システムの要件が明確になったら、それらを細分化し詳細にしていくことも重要です。これにより、システム内のどの部分にどのようなデジタル技術を用いる必要があるのかを特定できます。
場合によっては、自社にノウハウのない分野の知識やスキルについて、従業員に新たに学習してもらう必要性が生じることも考えられます。その分、社内教育のコストがかかりますが、DXの人材不足を補うための投資だと考えれば有益でしょう。
ポイント3:費用対効果について早期に検証する
自社の課題やシステム要件について十分な検討がなされれば、おおよその開発コストも見えてきます。つまり、本格的な開発に入る前の段階で費用対効果にもとづいた投資判断が可能だということです。
例えば、システムが完成し運用を開始したときに、期待した効果が得られそうかどうかは事前に予測できます。また、運用を開始してから開発コストを回収するまでの期間についても計画しておけるでしょう。
ポイント4:操作性やセキュリティにも配慮する
システム開発においては、機能そのものとは直接的に関係しない要件も重要です。
例えば、システムの操作性は現場の従業員のITスキルに見合ったものが求められます。システムが使いやすいほど現場から抵抗なく受け入れてもらえるうえ、作業中の操作ミスも減らせる可能性があるためです。
また、会社の機密情報や従業員の個人情報が適切に扱われるように配慮することも必要でしょう。クラウドを活用するなら、従来の社内システムよりも厳重なセキュリティを施すなどの対策が考えられます。
ポイント5:適切なマネジメント手法を取り入れる
独自システムの開発プロジェクトには、最新のデジタル技術が採用されるケースも少なくありません。このとき、デジタル技術の特性にあわせたマネジメント手法を取り入れられるかどうかが重要なポイントです。
とくにAIを用いる場合、開発期間中は実験と検証のプロセスを繰り返すことが必要になります。そのため、「アジャイル型」の開発手法と相性がよいでしょう。実際に、DXにおいて先行する企業の多くは、開発中の不確実性をコントロールしやすいアジャイル型のアプローチを採用しています。
企業変革への継続的な取り組みを実現するために
本記事では、DXにおける既存ツールの導入や独自システムの構築について説明してきました。しかし、ツールやシステムを使えるようになったら万事解決というわけではありません。DXはビジネスと組織を変え続けていく、継続的な活動だからです。
システムを内製化し適時改修できる状況を作っておくことが、変革を続ける企業にとってひとつの支えになるでしょう。そのためには、社内の人材に投資してDXの技術者やマネージャーとして育てていく取り組みが重要な意味を持ちます。
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