【進化する製薬業界】デジタルツールの活用例からみる今後のDXの方向性とは - 株式会社STANDARD

【進化する製薬業界】デジタルツールの活用例からみる今後のDXの方向性とは

DX・AI技術・事例解説

この記事の目次

  1. なぜ製薬会社にDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要なのか
  2. 製薬業界におけるデジタルツールの活用とDXのトレンド
  3. 製薬会社のDX推進はAI開発の人材確保がカギに

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大にともなって、製薬業界でもデジタル化やオンライン化が一気に加速しました。売り上げアップやコスト削減に効果的なDXの施策について、検討を重ねている製薬会社の経営者やDX担当者も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、製薬業界におけるデジタル活用のトレンドと、今後のDX推進に欠かせない人材育成の方法についてご紹介します。

なぜ製薬会社にDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要なのか

株式会社デジタル&ワークスがまとめている「業界動向サーチ」によると、国内の製薬会社における2020〜2021年の業界規模(主要企業74社の売上高合計)は12兆3,594億円でした。2019年までは増加傾向にあったものの、2020年は横ばいで推移しています。

2020年はコロナ禍による「受診控え」の影響で患者数や病床利用率に減少がみられたことに加え、一般用医薬品の売り上げも大幅に減りました。また、新薬の特許切れにともなう利益率の低下や、薬価改定による価格引き下げも影響していると考えられます。ジェネリック医薬品については、新薬に比べて開発コストは低いものの低価格なため収益をあげるのが難しく、参入企業も増えて競争が激しくなっているのが現状です。

薬価改定が毎年行われることもあり、製薬会社にとっては今後も厳しい状況が続くでしょう。研究開発はもとより、医療従事者向けや一般向けの営業分野においても競争力の強化が求められます。データサイエンスとデジタル技術のさらなる活用によりDXを前進させ、生産性の向上や新規事業の開発を促進していくことが重要です。

製薬業界におけるデジタルツールの活用とDXのトレンド

厳しい状況が続くなか、デジタルツールの活用を戦略上の要とする製薬会社が増えています。ここからは、研究開発(R&D)、医師向けマーケティング(BtoD)、一般向けマーケティング(BtoC)の各分野における製薬業界のトレンドについて、DXの視点から紹介していきます。

【R&D】データ活用で創薬プロセスの期間とコストを圧縮

研究開発の分野では、創薬プロセスにAIを活用する試みがトレンドです。データベースに集約した膨大な実験データをもとに、医薬品の候補となる化合物を設計段階からAIに提案させる手法がとくに注目されています。

これまで創薬標的の探索や化合物の設計では、網羅性や効率性の面から研究者の勘に頼ってきた部分が多くありました。そのため、創薬のプロセスには4〜5年を要するのが通常でしたが、AIの活用により1年未満にまで短縮した事例も出てきています。すでに臨床試験が開始されるなど、実用化の段階に入っています。

創薬にかかる期間を短縮し臨床試験を早期に開始できれば、研究開発費の縮小も可能です。このようなアプローチを可能にするためにはAIのプラットフォームが必要になることから、多くの製薬会社がITとAIに強い企業や研究機関とのパートナーシップを加速させています。

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【BtoD】MRに新たなコミュニケーション手段を導入

医師向けマーケティングの分野では、デジタル活用で営業活動を効率化する動きが盛んです。コロナ禍で医療機関への訪問が制限されたのをきっかけに、これまで対面が中心だったMRの業務にもデジタルツールの活用が欠かせなくなりました。すでにオンライン会議システムによるリモート面談や、Web講演会といった手法にシフトしつつあります。

また、医療従事者向けWebサイトの新設やリニューアルも進んでいます。AIチャットを通して製品情報をオンラインで検索できるシステムなども登場し、医薬品に関する情報や質問への回答をスピーディに提供できるようになりました。製薬会社にとっては、MRの人手不足を補う効果も期待できるでしょう。

このように、デジタル技術を導入して新たなコミュニケーションチャネルを構築する試みが、製薬業界におけるひとつのトレンドになっています。なかでもAIは活用範囲が広く、サービスの利用状況を分析する目的でも用いることが可能です。MRの訪問を希望している医師をAIが自動的に発見することで、営業業務の効率化に役立てるといった例もみられます。

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【BtoC】医療情報の提供にとどまらないヘルスケアサービスを展開

医薬品を使用する患者や消費者向けの分野では、ヘルスケアサービスの拡充が進んでいます。ただ医薬品を販売して終わりとするのではなく、重症化の予防や健康維持、医療に関する悩みの解消などに取り組む製薬会社が増えてきました。

具体的には、患者に正しく服薬してもらうためのリマインダーや、症状の記録ができる機能などをスマートフォンアプリとして提供する事例がみられます。また、LINEやチャットボットを活用して、医師や薬剤師に健康相談ができるサービスも登場しています。

これらのサービスは、顧客とのタッチポイントを構築しやすいというデジタルツールの特徴を活かすことで可能になったものだといえるでしょう。製薬会社が患者や消費者と直接的なつながりをもつことで、これまでにはない新しいサービスを展開できるようになってきたのです。

製薬会社のDX推進はAI開発の人材確保がカギに

さまざまな分野でデジタル活用が進む製薬業界では、今後もDXを軸にした競争の激化が見込まれています。なかでもAIは、膨大なデータや大量のコミュニケーションを扱う技術として活用シーンが広がっていくと考えられます。AIによる高度なプラットフォームの開発に貢献できる人材を確保できるかどうかが、製薬会社におけるDX推進のカギになるといえるでしょう。

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