DX実現までの3つのフェーズと共通課題を乗り越えるための取り組み
DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に取り組む企業が増えてきましたが、「なかなか成果を感じられない」という声も少なくありません。なかには、DXが企業にどのような変化をもたらすか、具体的にイメージできていないという方もいるでしょう。
そこで本記事では、企業がDXを実現するまでの3つのフェーズと、その過程で乗り越えなければならない3つの共通課題について詳しく説明します。記事を読めば、DXで成果を出すために何にどのような手順で取り組めばよいかがわかるでしょう。
DX推進における企業変革の3つのフェーズ
DXとは、「デジタル技術を活用して顧客に付加価値を与えられる組織・文化を創り続けること」です。DXの意味や定義については、より詳しく説明した記事がありますので、参考にしてください。
まずは、DXという概念の提唱者であるエリック・ストルターマン氏による、DXが実現するまでの3つのフェーズについて確認しておきましょう。
– 第1フェーズ:IT利用による業務プロセスの強化
– 第2フェーズ:ITによる業務の置き換え
– 第3フェーズ:業務がITへ、ITが業務へとシームレスに変換される状態
第1フェーズは、「紙」ベースのプロセスをITシステムで置き換える段階です。これにより、業務プロセスの標準化を行い、効率化や品質向上を実現します。
第2フェーズは、自動化を押し進め効率と品質をさらに向上させる段階です。ITシステムが担う業務範囲を広げることで、安全性の確保や人的ミスの削減を可能にします。例えば、RPAによる自動化などがこの段階に当てはまるでしょう。
第3フェーズは、デジタル技術とプロセスが一体となって改善を続ける段階です。例えば、AIとビッグデータの活用により分析を高速でリアルタイムなものにし、プロセスを繰り返し改善できる仕組みを構築します。この段階になってはじめて、DXが実現できたといえるのです。
経済産業省によるDX実現までの3つのフェーズ
ストルターマン氏による3つのフェーズについて説明しましたが、やや抽象的なためそのまま企業活動にあてはめるのは難しいかもしれません。そこで、DXの具体的なアクションを考えやすくなるよう、ここからは経済産業省がまとめた以下の3つのフェーズについて説明していきます。
– フェーズ1:デジタイゼーション
– フェーズ2:デジタライゼーション
– フェーズ3:デジタルトランスフォーメーション
ここでは「デジタイゼーション(Digitization)」と「デジタライゼーション(Digitalization)」という、よく似た用語が出てきます。辞書を引くと、どちらも「デジタル化」と訳される言葉で意味も同じです。しかし、DXの文脈においては重要な違いがあるので、フェーズごとの特徴をよく理解しておきましょう。
フェーズ1:データをデジタル化する「デジタイゼーション」
デジタイゼーションは、DXの第一歩といえるフェーズです。
この段階では、アナログデータのデジタル化を進めていきます。「電子化」と言い換えたほうが理解しやすいかもしれません。具体的には、紙ベースで保管していた伝票などをパソコンに取り込んで管理できるようにしたり、オンライン会議ツールで遠隔地からも会議に参加できるようにIT環境を整えたりします。
このとき、データのデジタル化にあたり、何らかのデジタルツールも導入されることになります。その過程で既存業務のプロセスが明確になり、同時に効率化を進められることも多いでしょう。ただし、従来のアナログな発想の延長線上にある点が、このフェーズの特徴です。
フェーズ2:業務プロセスをデジタル化する「デジタライゼーション」
デジタライゼーションは、業務プロセスをデジタル化していくフェーズです。
書類や業務をデジタルに置き換えるだけでなく、「デジタルだからこそ」可能な方法で業務プロセスを改善していきます。例えば、見込み顧客の行動パターンから、営業がアプローチをかけるのに最適なタイミングを検出する試みなどが挙げられるでしょう。
工場の製造ラインをモニタリングしてデータを分析することで、人的ミスを削減したり品質を向上させたりといった、さらなる効率化をはかる例もあります。高度なデータ分析や自動化により、アナログな手法では考えられなかった新たな価値が生まれる点が、このフェーズの特徴です。
フェーズ3:顧客への提供価値を創出する「デジタルトランスフォーメーション」
デジタルトランスフォーメーションは、業務プロセスのデジタル化を組織横断的に進めるフェーズです。
部門ごと個別に行われていた改善を全体として統合し、ビジネスモデルと一体化していくことがこのフェーズの重要なポイントです。例えば、社内システムを内製化し受注から製造・販売・ユーザーサポートにいたるまで、あらゆるデータを統合して分析できるようにします。デジタル技術をベースに新規サービスを開発し、顧客への提供価値を高めるといった施策も有効でしょう。
単なる業務改善にとどまらず、顧客の視点に立って新たな価値を創出していくことも可能になる点が、このフェーズの特徴だといえます。
DXにおける共通課題を乗り越えるための取り組み
経済産業省による3つのフェーズは、必ずしも検討や実行の「順序」を示すものではありません。より具体的な施策を考えるには、組織がDX実現に向けて「走り出す」までのロードマップが必要になるでしょう。しかし、その過程にはさまざまな課題が存在します。
DXの課題のなかでも、とくに多くの企業に共通してみられるのが以下の「3つの壁」です。
– 第1の壁:人を巻き込むのが難しい
– 第2の壁:アイデアの質が低く、投資判断ができない
– 第3の壁:PoCマネジメントができない
これらを順序よく乗り越えていくことが、DXの成功確率を高めるといえます。ここでは、それぞれの課題に対応する取り組みを3つのステップに分けて、順番に解決していくためのポイントを説明していきます。なお、3つの壁については、より詳しく説明した記事もあるのであわせて参考にしてください。
Step1.職員の意識醸成とリテラシー教育
最初のステップは、「第1の壁:人を巻き込むのが難しい」を乗り越えるための取り組みです。
DXを実行するには、「人」の存在が欠かせません。小さなツールの導入からはじまったとしても、最終的に組織全体にわたる継続的な活動とするには、いかにして人員を巻き込んでいくかがカギとなるからです。そのためには、ひとりひとりがDXの必要性を理解し、当事者意識をもって取り組めるような組織・文化づくりが求められます。
DXに関する基礎知識を全員が獲得すべき「リテラシー」ととらえ、職員の意識醸成とリテラシー教育に取り組めるかどうかがポイントです。
Step2.DXプロジェクト企画の質向上と投資判断
「第2の壁:アイデアの質が低く、投資判断ができない」を乗り越えるには、DXの施策としての質を高める取り組みが重要です。
有望だと思えるDXのアイデアでも、投資判断のためには収益性を正しく見極められなければなりません。まず、改善すべき課題は何なのかをとらえ、どのような手法で解決するのかを明確にする必要があるでしょう。そのうえで、必要な投資に対してどの程度の収益が見込めるかを定量的に判断できるようにします。
DXのアイデアを数字でとらえ、その価値を投資対効果から判断できる具体的な施策に育てていくことがポイントです。
Step3.プロト開発〜PoCのプロジェクト企画設計
「第3の壁:PoCマネジメントができない」を乗り越えるためには、PoCに求める明確な要件と、ビジネス運用に乗せるための基準が必要です。
DXを本番に移す前の段階として、PoC(概念検証)を実施する企業は少なくないでしょう。たしかに、DXは組織全体にわたる変化をもたらすものであるため、無計画に取り組むべきではありません。一方で、失敗を恐れて行動に移せないのも問題だといえます。
PoCでは、何を達成できれば取り組みを継続する価値があるといえるか、その判断基準を明確にしておくことがポイントです。
リテラシー教育がDX実現への流れを加速させるカギに
DX実現までの3つのフェーズと、共通課題を乗り越えるための3つのステップについて説明してきました。
3つの壁を順序よく乗り越えて進んでいくために、最初に必要となるのが「DXのリテラシー化」です。社内の全員がDXとデジタル技術についての基礎を身につければ、より高い意識と意欲をもって組織変革に臨めるようになるでしょう。
DXのためのリテラシーは、社内教育で身につけることが可能です。弊社では、デジタル技術の基礎知識からプロジェクトへの活用方法までを網羅的に学習できる「DXリテラシー講座」を提供しています。詳しくは下記の「ダウンロード資料」からご確認いただけます。DX実現への流れを加速させるために、まずはリテラシー教育から取り組んでみてはいかがでしょうか。
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