【DX成功事例】海外と日本の取り組み例から読み解く成功の理由とは - 株式会社STANDARD

【DX成功事例】海外と日本の取り組み例から読み解く成功の理由とは

DX・AI技術・事例解説

この記事の目次

  1. 海外と日本におけるDXの定義の違い
  2. 海外と日本におけるDXの推進状況
  3. 日本企業のDX成功事例
  4. 海外企業のDX成功事例
  5. DXの取り組み事例にみられる成功の理由とは
  6. DXの成功は人材育成から

デジタル技術を活用することで、あらゆる分野のビジネスがグローバルなものになりつつあります。DXを推進したい企業にとっては、国内外のDXがどのような状況にあるのかを知っておくことも有益でしょう。

そこで本記事では、海外と日本におけるDXの定義や推進状況、参考になる成功事例について紹介します。また、事例からわかるDXの成功の理由についても解説していきます。

海外と日本におけるDXの定義の違い

DXという用語は、もともとはICTが社会に浸透し、生活が変化していく様子を表現するものでした。ビジネスにおけるDXについては明確な定義は存在しませんが、複数の企業や組織が意味づけを行っています。

日本では、経済産業省とIPA(情報処理推進機構)による定義が有名でしょう。経済産業省の定義を要約すると、DXとは「企業が顧客ニーズにもとづいて変革に取り組み、競争力を発揮すること」だといえます。そのための手段として、デジタル技術を活用します。

一方、海外におけるDXは、「デジタルビジネス」への転換を意味することが多いようです。デジタル技術の活用により新しい価値やサービス、あるいは飛躍的なパフォーマンス向上をはかります。

このように、国内でも海外でも、DXの本質的な意味については大きな違いはありません。しかし、日本では「デジタル化が進む社会で取り残されずに競争力を維持する」という意味合いがより強い傾向にあるといえます。

DXの定義の詳細については、こちらの記事もあわせて参考にしてください。

海外と日本におけるDXの推進状況

海外と日本を比較すると、DXの推進状況にはどのような違いがあるのでしょうか。IT分野を中心に調査や助言を行っているガートナー(Gartner)社は、2019年の調査で「日本企業のDXはまだ開始段階に至っていない」と評価しています。

2021年にJEITA(電子情報技術産業協会)がIDC Japan株式会社と共同で実施した調査では、DXを「行っていない」または「知らない」と回答した企業は米国で2.4%だったのに対し、日本では20.3%でした。実施状況についても、「実践中」または「実証実験を実施中」と回答した企業は米国で54.6%と半数以上であるのに対し、日本では28.1%と3割に満たない状況となっています。

このように、グローバルな視点で見ると、日本企業はDXで遅れをとっているのが現状です。

日本企業のDX成功事例

日本企業のDX成功事例

日本のDXは全体的に海外に遅れをとっているとはいえ、国内にも参考にできる事例はあります。ここでは、日本企業のDX成功事例のなかから以下の3つを紹介します。

– 事例1(建設):クボタの故障診断
– 事例2(教育):トライグループのオンライン学習
– 事例3(金融):鹿児島銀行のキャッシュレス決済

事例1(建設):クボタの故障診断

農業向けのソリューションや建設機械などを手掛ける株式会社クボタは、スマートフォンやタブレットで機器の故障診断を行える「Kubota Diagnostics」を開発しました。

本アプリは、ディーラーのサービスエンジニアが使用します。機械の不具合の症状やエラーコードを入力したり、スマートフォンのカメラを製品にかざして3DモデルとAR(拡張現実)技術を活用したりすることで、迅速な故障診断が可能です。これにより点検や修理の効率化をサポートするとともに、ダウンタイム(機器が使用できない時間)の削減に役立ちます。

同サービスは2020年に米国からスタートし、日本を含む各国にも順次展開されていく予定です。農業や建設の分野では機器の稼働率が収益に直結するため、顧客にも大きな価値のあるサービスだといえるでしょう。

事例2(教育):トライグループのオンライン学習

「家庭教師のトライ」などの教育事業を展開するトライグループは、授業の映像配信をいち早く取り入れました。中学生・高校生向けの無料映像授業サービス「Try IT(トライイット)」では、スマートフォンやタブレットから簡単にコンテンツを視聴できます。これまでは対面で行っていた授業を、時間と場所にとらわれずにオンラインで受講できるようになったのです。

また、膨大な学習データと最先端のAIによって学習の理解度を診断する「トライ式AI学習診断」も無料で提供しています。AIの診断結果を個別の学習計画に取り入れ、成績アップに役立てることが可能です。

デジタル技術の活用によってオンライン学習の普及に貢献するとともに、授業や学習に関する新しい体験を提供した例といえるでしょう。

事例3(金融):鹿児島銀行のキャッシュレス決済

鹿児島市に本店を置く鹿児島銀行は、独自のキャッシュレス決済サービス「Payどん」を開発しました。Payどんでは、アプリを利用して口座から直接支払いをする方法と、口座からアプリにあらかじめ一定額をチャージしておき支払う方法が選べます。鹿児島銀行は同行に口座をもつ顧客に向けて、本アプリにより現金からキャッシュレスへの移行を促しつつ、加盟店を拡大していきました。

現在ではJCBとの提携によりQRコード・バーコード決済方式「Smart Code」への対応も果たし、コンビニエンスストアなどでも利用可能となっています。ショッピングの新しい体験を利用者に提供するとともに、地域経済の活性化にも貢献した例といえるでしょう。

海外企業のDX成功事例

海外企業のDX成功事例

海外には、先進的なDXの取り組みが多数あります。ここからは、日本企業も参考にできる以下の3つの成功事例を紹介します。

– 事例4(観光):Gardens by the Bayの新しいレジャー体験
– 事例5(物販):Best Buyによる実店舗の価値向上
– 事例6(物流):UPSによるルートの最適化

事例4(観光):Gardens by the Bayの新しいレジャー体験

Gardens by the Bayは、シンガポールのマリーナベイに位置する大型の植物園です。マーライオンなどと並ぶランドマークとして、シンガポールを代表する観光スポットとなっています。

同施設では、顧客体験の向上を目的としてスマートフォン向けの公式アプリを全面的にリニューアルしました。新しいアプリでは、チケットの購入やイベント情報の確認ができるほか、AR技術を駆使した道案内も可能となっています。

また、GPSから混雑状況を把握・可視化したり、整理券を発行したりといった機能を持たせることで新型コロナウイルスへの対策も行えるようにしました。これにより、利用者は待ち時間を減らしつつ、「密」を避けてレジャーを楽しめるようになりました。

事例5(物販):Best Buyによる実店舗の価値向上

Best Buyは、米国を中心に展開している家電量販店です。同社はショールーミング(商品を実店舗で確認しECサイトで安く購入する顧客行動)に対抗すべく、店舗内の展示スペースをメーカーに販売するという戦略をとってきました。これにより、他社ECサイトに負けない低価格での販売を実現したのです。

そのうえで、在庫状況を自社のECサイトに即座に反映させたり、オンラインで購入した商品を実店舗でピックアップしたりできる仕組みも構築しています。デジタル技術を活用して、リアルとオンラインのスムーズな連携による強みを生み出した例といえるでしょう。

事例6(物流):UPSによるルートの最適化

米国で貨物の運送事業を手がけるUPSは、最適な配送ルートを決定するために「ORION」と呼ばれる独自システムを開発しました。AIが効率的なルートを導き出すことで、年間約1.6億キロメートルも走行距離が短縮したとしています。これにより、大幅なコストカットを実現するとともに、二酸化炭素排出量の削減にも貢献しています。

同社のコメントによれば、本システムは技術的には決して革新的なアイデアによるものではありません。しかし、本システムの実現までには10年もの期間をかけており、現在も改善が続けられています。デジタル技術によるイノベーションに継続的に取り組む姿勢が、価値創造につながった例といえるでしょう。

DXの取り組み事例にみられる成功の理由とは

DXの取り組み事例にみられる成功の理由とは

今回紹介してきた事例には、成功を支えるいくつかの共通の理由がありました。ここからは、以下の3つの理由について説明していきます。

– 理由1:顧客体験が改善している
– 理由2:継続的に取り組んでいる
– 理由3:人材を生み出している

理由1:顧客体験が改善している

DXを成功させている企業とは、ビジネスを変革し市場における競争力の強化を実現してきた企業のことです。そのような成果をあげるには、顧客にこれまで以上に満足してもらうことが大切です。

既存サービスの付加価値を高めたり、ときにはまったく新しい価値を創出したりすることが、よりよい顧客体験の提供につながります。デジタル技術の活用は、そのための手段に過ぎません。「DX=新しい技術の導入」と捉えているだけでは、本質的な意味での成功は難しいといえるでしょう。

理由2:継続的に取り組んでいる

DXでは、先端技術の導入がきっかけとなって革新的なサービスが生まれることもあります。しかし、本記事で紹介した事例はいずれも自社のコア事業をデジタル技術で改善し続けたことによる成功例です。この点は、これからDXに取り組む多くの企業にとっても、ひとつの指針となるでしょう。

DXとは、新技術を導入して終わってしまうような一過性の施策ではありません。デジタル技術を活用して変化し続ける、組織的・継続的な取り組みだといえるのです。

理由3:人材を生み出している

組織を変化させる取り組みを継続させながら、顧客体験の向上や競争力の強化を実現するのは、デジタル技術そのものではありません。DXの成功は、あくまでデジタル技術を活用する「人」の活動によるものです。そのため、DXにおいては人材がとくに重要な役割を果たします。

次の2点を備えた人材を継続的に生み出せる教育体制を、社内に構築するのが望ましいでしょう。

– DXの最終的な目的(=競争力の強化)を理解していること
– その手段となるデジタル技術についての知識があること

これらは「DXリテラシー」と呼ぶにふさわしい、DXに必須の素養だといえます。

DXの成功は人材育成から

DXそのものの意味や目的は、日本でも海外でも大きな違いはありません。しかし、グローバルな視点で推進状況を見てみると、日本企業のDXは出遅れているのが現状です。

DXを成功させるには、顧客体験を意識した継続的な取り組みが重要となります。そのためにも、「DXリテラシー」を備えた人材を増やし、デジタルに強い組織文化を創っていくことが望ましいでしょう。

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