ビジネスアーキテクト(BA)とは?デジタルスキル標準(DSS)の役割と生成AI時代の必須スキル
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DX推進の要として注目される「ビジネスアーキテクト(BA)」。経済産業省とIPA(情報処理推進機構)が策定した「デジタルスキル標準(DSS)」においても、変革をリードする中心的な人材類型として定義されています。
しかし、2026年現在の実務現場では、単なる仕組みのデザインだけでなく、生成AIを業務プロセスに組み込み、実効性のあるROI(投資対効果)を生み出す「実装力」が強く求められるようになっています。
そこで本記事では、最新のDSSの定義をベースに、ビジネスアーキテクトの具体的な役割や、今身につけるべきリスキリングのポイントを実務視点で徹底解説します。
「デジタルスキル標準(DSS)」全体の概要や、プロジェクトマネージャー向けの「DSS-P」については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:経産省の「デジタルスキル標準」が示すDX人材育成の2つの指針とは
関連記事:「DX推進スキル標準(DSS-P)」が定めたDX人材に求められる役割とは
「DX推進スキル標準(DSS-P)」の「ビジネスアーキテクト」とは?

経済産業省とIPA(情報処理推進機構)は「デジタルスキル標準(DSS)」のなかで、「DXの推進において必要な人材」を5つの「人材類型」として定義しています。「ビジネスアーキテクト」は、その1番目に出てくる重要な人材です。
まずは、ビジネスアーキテクトの定義と、DX推進において期待される役割について確認しておきましょう。
経済産業省による定義
「DX推進スキル標準(DSS-P)」のなかで、ビジネスアーキテクトは次のように定義されています。
「DXの取組みにおいて、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材」
引用元:「デジタルスキル標準 ver.1.0」(情報処理推進機構・経済産業省)
この定義をよりシンプルに表現するなら、ビジネスアーキテクトとは次のような人材だといえるでしょう。
- 自社が何を目指してDXを推進するのか、具体的なビジネスモデルやロードマップを明確にする人
- それを実現するために関係者を巻き込み、プロジェクトを牽引する人
DX推進において期待される役割
ビジネスアーキテクトには、大きく分けて次の2つの役割があります。
- 一貫性のあるDX推進により、当初設定した目的の実現に責任をもつこと
- 関係者間の協力関係を構築し、取り組みをリードすること
- ビジネスアーキテクト(新規事業開発)
- ビジネスアーキテクト(既存事業の高度化)
- ビジネスアーキテクト(社内業務の高度化・効率化)
平たく言ってしまえば、データとデジタル技術を活用してビジネスを変革するには、ブレのないリーダーシップが期待されるということです。
2026年現在のDX現場では、単にITツールを入れるだけでなく、生成AIをどの業務プロセスに組み込み、具体的なROI(投資対効果)を創出するかという戦略的な設計が不可欠となっています。
DXの実現には、データ分析の専門的な知識や、AIをはじめとする先端技術のスキルが必要となるでしょう。しかし、それらはビジネスアーキテクト自身がすべてを完璧にこなす必要はありません。ビジネスアーキテクトには、データサイエンティストやエンジニアといった専門性を備えた人材との「協働」により、DX実現に向けて取り組みを前進させていくことが求められるのです。
そのため、事業部門から選抜された社員がリスキリングを通じてBAを目指すケースも増えており、現場の知見とデジタル技術を繋ぐ「架け橋」としての役割がますます重要になっています。
ビジネスアーキテクトの3つのロール

「デジタルスキル標準(DSS)」によると、ビジネスアーキテクトは次の3つの「ロール」に分かれます。これらは、ビジネスアーキテクトの役割を業務の違いにより細分化したものです。
各ロールには、それぞれに果たすべきミッションが定められています。ここでは、ロールごとのミッションと主な業務、必要なスキルについて見ていきましょう。
ビジネスアーキテクト(新規事業開発)
このロールのミッションは、新しい製品やサービスの開発にDXの目的を見出し、その実現方法を考えて推進することです。企業にとっては、経験のないジャンルのビジネスに乗り出す際の実行役だといえます。
新規事業開発は、ときには新しい市場への参入をともなう挑戦となるでしょう。このとき、いかにして自社の強みを活かすかが重要です。例えば、印刷物を扱う企業がこれまでに培ってきた画像処理技術を活かし、生成AIによる不良品の自動検知ソリューションを開発して製造業向けの市場に参入するなどのケースが挙げられます。
主な業務
このロールの主な業務は、まず自社の外部環境や内部環境、ニーズや技術動向などをふまえてビジネスの目的を定義することです。そのうえで、ビジネスモデルやビジネスプロセスを設計し、活用したい技術やツールなどを選定します。昨今では、AIをサービスの中核に据える際の投資対効果(ROI)の試算も重要な業務の一つです。
また、取り組みを前進させるためにはチーム編成や合意形成、タスクの振り分けといった関係者間のコーディネートも必要です。KPIを設定して新サービスの効果を検証するなど、継続的な収益向上のための施策もあわせて実行します。
必要なスキル
上記のような業務を遂行するにあたり、「ビジネス改革」や「データ活用」の分野における知識と高い実践力が求められます。また、関係者間のコーディネートのためには、「テクノロジー」や「セキュリティ」の分野においても一定の知識や理解が必要です。特に外部の専門家から「伴走型支援」を受ける際、自社の要望を的確に伝える言語化能力も欠かせません。
後述する「ビジネスアーキテクト(既存事業の高度化)」と比べると、何もないところからビジネスの可能性を見出して目的を定義しなければならない点において、難易度が高いロールだといえるでしょう
ビジネスアーキテクト(既存事業の高度化)
このロールのミッションは、既存の製品やサービスの目的を見直して再定義し、それを実現するDXの方法を考えて推進することです。企業にとっては、従来のビジネスの価値を高める役割を担う人材だといえます。
既存事業の高度化は、ときには新たな市場の開拓につながることもあるでしょう。例えば、食品メーカーがデジタルマーケティングを強化することで、フレーバーに応じて製品ごとの販促や流通を最適化するなどのケースが挙げられます。ここに生成AIによる顧客分析を掛け合わせ、個々のユーザーに最適化された体験(パーソナライゼーション)を提供することも現代のBAの重要なテーマです。
主な業務
このロールの主な業務は、まず自社の外部環境や内部環境、ニーズや技術動向などをふまえて既存ビジネスの目的を再定義することです。そのうえで、ビジネスモデルやビジネスプロセスを見直し、新たに取り入れたい技術やツールなどを選定します。
ここでも重要となるのは、チーム編成や合意形成、タスクの振り分けといった関係者間のコーディネートです。また、KPIを設定してサービス改善の効果を検証するなど、継続的な収益向上のための施策も実行します。既存顧客のデータを安全に扱うための「AIガバナンス」の視点を持った設計も求められます。
必要なスキル
上記のような業務を遂行するには、前述の「ビジネスアーキテクト(新規事業開発)」と同等のスキルが求められることがわかるでしょう。
ただし、既存の製品・サービスとの整合を保ちつつ、ステークホルダーとも調整しながらビジネスを拡大させていかなければなりません。この点においては「ビジネスアーキテクト(既存事業の高度化)」のほうが、やや難易度の高いロールだといえるでしょう。両者は求められるスキルにこそ大きな差はありませんが、スキルを発揮すべき場面には違いがあるということです。
ビジネスアーキテクト(社内業務の高度化・効率化)
このロールのミッションは、社内業務における課題の解決をDXの目的とし、その実現方法を考えて推進することです。企業にとっては、業務の品質やスピードを向上させたり、コストを削減したりといった意味があります。いわゆる「ムリ・ムダ・ムラ」を省く役割だといえるでしょう。
こうした改善はビジネスの変革を目的としているわけではありませんが、積み重ねていけば製品・サービスの提供価値向上にもつながる取り組みだといえます。最近では、全社的な生成AIの導入による、ドキュメント作成や情報検索の劇的な効率化がこのロールの主戦場となっています。
主な業務
このロールの主な業務は、まず社内業務における課題解決の目的を定義することです。そのうえで、データとデジタル技術を活用した業務プロセスを設計し、その導入に必要な技術やツールなどを選定します。
取り組みを進めるには各種リソースを確保したり、適材適所を意識した偏りのないタスクの割り振りを行ったりといった、関係者間のコーディネートが必要です。また、KPIを設定して新しい業務プロセスの効果を検証するなど、継続的な改善のための施策も実行します。現場の社員が自らAIを使いこなせるよう、「リスキリング」の環境を整えることも大切なミッションです。
必要なスキル
上記のように、このロールの取り組みは社内業務に関する内容に限定されています。その分、「ビジネス変革」や「データ活用」の分野については前述の2つのロールほどの実践力は求められません。しかし、実務に即した「データ利活用」の視点は、現場のボトルネックを解消するために不可欠です。
一方で、関係者間のコーディネートのためには、2つのロールと同様に「テクノロジー」や「セキュリティ」の分野で一定の知識が求められます。
ほか4つの人材類型との連携

ビジネスアーキテクトは、DXを実現するためにさまざまな人材と連携しながら業務を進める必要があります。各ロールのミッションや業務内容から、ビジネスアーキテクトに管理職のようなイメージをもった人もいるかもしれません。
しかし、ビジネスアーキテクトには「指示を出す」というよりも、「協力できる」関係性を構築することのほうが大切です。特に2026年現在のDXプロジェクトでは、生成AIなどの高度な技術を実務に落とし込むため、各専門家との「共通言語」を持つことが不可欠となっています。 そこでここからは、DX推進を担う人材類型ごとに、どのような点で協力が必要なのかを説明していきます。
デザイナーとの連携
「デザイナー」は、ビジネスやユーザーの視点から製品・サービスをデザインする人材です。市場調査やユーザー調査から得られた洞察をふまえ、製品・サービスのアイデアについて検討するうえで、ビジネスアーキテクトと連携します。最近では、AIを活用したパーソナライズされた顧客体験(UX)を設計する際、ビジネス上の目標とユーザーの利便性をいかに両立させるかという視点で、両者の緊密な議論が求められます。
データサイエンティストとの連携
「データサイエンティスト」は、DXにおけるデータ活用と、その仕組みづくりを担う人材です。データ分析の結果から得られた洞察をふまえ、製品・サービスのアイデアについて検討するうえで、ビジネスアーキテクトと連携します。単なる分析に留まらず、予測モデルや生成AIの出力をどのようにビジネスの意思決定(ROIの向上)に結びつけるかという「データ利活用」の戦略策定において、BAのビジネス視点が欠かせません。
ソフトウェアエンジニアとの連携
「ソフトウェアエンジニア」は、DXに必要なシステムの設計・実装・運用を担う人材です。技術を起点とするアイデアや要件の定義、開発順位の決定などの面でビジネスアーキテクトと連携します。特にアジャイル開発を採用する場合、BAは優先順位の判断や、AIツールのAPI連携など最新技術の導入可否について、エンジニアと対等に議論できるITリテラシーが求められます。
サイバーセキュリティとの連携
「サイバーセキュリティ」は、サイバーセキュリティリスクの抑制を担う人材です。コストとのバランスを考慮した最適な対応策を検討するうえで、ビジネスアーキテクトと連携します。生成AIの利用に伴う機密情報の取り扱いなど、新たなリスクへの対策(AIガバナンス)とビジネスの推進スピードを天秤にかけ、最適な落とし所を見つけることがBAの重要な役割となります。
デジタルスキル標準に準拠したプランニングで本当に必要なDX人材の育成を
ビジネスアーキテクトは、企業のDX実現に欠かせない存在です。ビジネスアーキテクトには自社のビジネスへの深い理解や、関係者の協働をコーディネートするリーダーシップが求められます。
しかし、そのような人材は市場でも希少であり、外部採用だけで確保するのは簡単ではありません。特に生成AIなどの最新技術を自社の固有業務にどう落とし込むかという判断には、社内の業務プロセスに精通していることが不可欠です。 そのため、採用に頼るよりも、社内研修などを通して既存社員を育成していくほうが確実かつ効果的でしょう。
まずはビジネスアーキテクトを含め、自社のDX推進にはどのような人材が求められるのかを、デジタルスキル標準(DSS)に沿って明確に定義することが大切です。現場の知見を持つ社員がデジタル技術を学ぶ「リスキリング」こそが、実効性のあるDX組織を作る最短ルートとなります。
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