「DX推進スキル標準(DSS-P)」が定めたDX人材に求められる役割とは - 株式会社STANDARD

「DX推進スキル標準(DSS-P)」が定めたDX人材に求められる役割とは

DX・AI人材育成

この記事の目次

  1. DX推進スキル標準に定義された5つの「人材類型」
  2. DX推進スキル標準における「共通スキルリスト」
  3. デジタルスキル標準をDX人材の育成に活用するには

経済産業省は2022年12月に、IPA(情報処理推進機構)とともに「DX推進スキル標準(DSS-P)」を公表しました。DXを推進できる人材を育成・採用したい企業に役立つ指針です。

DX推進スキル標準は、先立って同年3月に公表された「DXリテラシー標準(DSS-L)」とあわせて、「デジタルスキル標準(DSS)」を構成しています。略称の「DSS-P」は「Digital Skill Standard – Promotion」の略です。

本記事では、「DX推進スキル標準」に定義された人材の役割や、求められるスキルについてわかりやすく解説します。「DXリテラシー標準」と「デジタルスキル標準」については、以下の記事もあわせて参考にしてください。

関連:「DXリテラシー標準(DSS-L)」が示す企業変革のための行動と学習の指針とは
関連:経産省の「デジタルスキル標準」が示すDX人材育成の2つの指針とは

DX推進スキル標準に定義された5つの「人材類型」

DX推進スキル標準に定義された5つの「人材類型」

DX推進スキル標準では、DXを推進する主な人材として以下の5つの類型が定義されています。

– ビジネスアーキテクト
– デザイナー
– データサイエンティスト
– ソフトウェアエンジニア
– サイバーセキュリティ

それぞれの人材類型には、DXを推進する際に担うロール(役割)が挙げられています。いずれの人材類型においても、ほかの類型とのつながりを積極的に構築し、助け合いながらDXを推進していくことが重要です。

ビジネスアーキテクト

「ビジネスアーキテクト」とは、DX推進の目的を明確にしたうえで、その実現に向けて行動できる人材のことです。

DXというとデータとデジタル技術の活用が想起されがちですが、その先にあるビジネスの変革こそが本質です。変革を実現するためにも、ビジネスアーキテクトは重要な存在だといえるでしょう。ビジネスアーキテクトは、以下の3つのロールに分類されています。

ビジネスアーキテクト(新規事業開発)

「ビジネスアーキテクト(新規事業開発)」は、新しい事業や製品・サービスに目的を見出し、その実現方法を考えて実行する役割を担います。関係者間の協働関係を主体的に構築するとともに、プロセスの一貫した推進により目指すべきDXを実現させます。

ビジネスアーキテクト(既存事業の高度化)

「ビジネスアーキテクト(新規事業開発)」が新規事業を対象とするのに対して、「ビジネスアーキテクト(既存事業の高度化)」は既存事業を再定義する役割を担います。社内外の環境や社会・ユーザーのニーズ、技術動向などをふまえて、より高度な事業や製品・サービスを実現させます。

ビジネスアーキテクト(社内業務の高度化・効率化)

「ビジネスアーキテクト(社内業務の高度化・効率化)」は、事業を対象とする上記2つとは異なり、社内業務における課題解決を推進する役割を担います。解決すべき課題に対して新たなプロセスの設計やソリューションの導入などを主導し、業務の高度化・効率化を実現させます。

デザイナー

「デザイナー」とは、ビジネスや顧客・ユーザーの視点を総合的にとらえ、製品・サービスをデザインできる人材のことです。

ここでの「デザイン」は単に外観を決めることではなく、価値創造・問題解決の手段だという点に留意しましょう。そのため、デザイナーには製品・サービスの構想段階から活躍の場面があります。デザイナーは、以下の3つのロールに分類されます。

サービスデザイナー

「サービスデザイナー」は、製品・サービスのコンセプトを策定するとともに、それを継続的に実現していくための仕組みをデザインする役割を担います。顧客・ユーザーを理解して提供価値を見出すスキルと、ビジネスアーキテクトとの協働による実践が求められます。

UX/UIデザイナー

「UX/UIデザイナー」は、提供価値に基づいてユーザー体験を設計する役割を担います。テクノロジーについて理解しプライバシー保護などについても配慮する必要があるため、後述する類型(ソフトウェアエンジニアやサイバーセキュリティ)との協働も求められます。

グラフィックデザイナー

「グラフィックデザイナー」は、事業や製品・サービスのブランドとして統一感のあるデジタルグラフィックや、マーケティング媒体のデザインなどを担う役割です。マーケティングやブランディングの担当者とも協働しながら、自らのスキルを発揮することが求められます。

データサイエンティスト

「データサイエンティスト」とは、業務変革や新規ビジネスの実現におけるデータ活用と、そのための仕組みづくりを担う人材のことです。

DXを成功させられるかどうかは、データをいかに効果的に活用できるかにかかっています。そのため、データサイエンティストはDXに不可欠な領域を担う人材だといえるでしょう。データサイエンティストのロールは、以下の3つに分類されています。

データビジネスストラテジスト

「データビジネスストラテジスト」は、事業戦略に沿ってデータ活用の方針を考えるとともに、その実現を主導する役割を担います。これにより、新規事業の開発や既存事業の高度化といった、ビジネスの変革に貢献します。

データサイエンスプロフェッショナル

「データサイエンスプロフェッショナル」は、データの処理や解析を通じて、業務変革やビジネス創出につながる有意義な知見を導き出す役割を担います。また、現場でデータを扱うための仕組みづくりなど、解析結果を活用する場面においても貢献します。

データエンジニア

「データエンジニア」は、データ分析のための環境を設計・実装・運用する役割を担います。提供価値の向上につながるようなデータ活用基盤を実現するために、後述するソフトウェアエンジニアと同等の実践力が求められます。

ソフトウェアエンジニア

「ソフトウェアエンジニア」とは、デジタル技術を活用した製品・サービスの実現に向けて、システムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材のことです。

ソフトウェアエンジニアはDXの構想を具体化するために欠かせない存在であり、AIやIoTをはじめとする最新技術のスキルが求められる場面も少なくありません。ソフトウェアエンジニアのロールは、以下の4つに分類されています。

フロントエンドエンジニア

「フロントエンドエンジニア」は、ソフトウェアやアプリケーションの開発において、主にユーザーから見えるフロント領域の機能を実現する役割を担います。デザインやプロダクトマネジメントに関するスキルも求められます。

バックエンドエンジニア

「バックエンドエンジニア」は、ソフトウェアやアプリケーションの開発において、主にサーバー側の機能を実現する役割を担います。クラウドインフラの活用やデータエンジニアリングに関するスキルも求められます。

クラウドエンジニア/SRE(Service Reliability Engineering)

「クラウドエンジニア/SRE」は、クラウドを活用したソフトウェアにおいて、開発・運用環境の最適化と信頼性の向上を実現する役割を担います。ソフトウェアの開発スキルはもちろん、セキュリティに関するスキルも重視されます。

フィジカルコンピューティングエンジニア

「フィジカルコンピューティングエンジニア」は、デジタル技術を活用したサービスの提供において、物理領域のデジタル化を実現する役割を担います。ユーザー体験を向上させるために、ニーズをふまえて各種デバイスを含めたソフトウェアの設計・実装を行います。

サイバーセキュリティ

「サイバーセキュリティ」とは、デジタル活用にともなうサイバーセキュリティリスクの抑制にあたる人材のことです。

ほかの類型が「人称」なのに対して「分野名」となっているのは、求められる人材像が「セキュリティスペシャリスト」や「セキュリティプロフェッショナル」のような専門職とは異なるためです。サイバーセキュリティは、以下の2つのロールに分類されています。

サイバーセキュリティマネージャー

「サイバーセキュリティマネージャー」の役割は、サイバーセキュリティリスクを抑制するための対策を管理・統制することです。これにより、ビジネスの信頼性向上に貢献します。リスクを認知するには、DXの目的やデータ活用の考え方について広く理解しておくことも必要です。

サイバーセキュリティエンジニア

「サイバーセキュリティエンジニア」の役割は、サイバーセキュリティリスクを抑制するための対策を導入・保守・運用することです。これにより、ビジネスの安定的な提供に貢献します。常に技術動向を把握し、その内容を理解しておくことが求められる役割です。

DX推進スキル標準における「共通スキルリスト」

DX推進スキル標準における「共通スキルリスト」

ここまでで紹介した5つの人材類型は、それぞれが専門性を発揮しながらDX推進に貢献します。一方で、どの人材類型にも求められる共通のスキルもあるでしょう。DX推進スキル標準では、それらを「共通スキルリスト」として、以下の5つのカテゴリーに分類・整理しています。

– ビジネス変革
– データ活用
– テクノロジー
– セキュリティ
– パーソナルスキル

DXに向けて人材育成を考えている企業にとっては、このように共通のスキルと専門的なスキルが整理されていることが役立つでしょう。実際にDX推進スキル標準の狙いとしても、リスキリングや実践的な学習、能力の可視化などを促すことが挙げられています。

デジタルスキル標準をDX人材の育成に活用するには

DX推進では、求められる人材像をいかにして具体化し育成していくかが大切です。DX推進スキル標準は、そのための指針となるでしょう。

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