ナレッジマネジメントとは?DXにおけるメリットと効果的な進め方
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ナレッジマネジメントは、ナレッジ(知識)を組織内で共有するための手法です。業務効率化のほか、属人的な作業を減らせるなどの効果が期待できます。また、さまざまなデータを活用し組織やビジネスを変革していくDXにおいても重要なものであるため、経営に取り入れる企業が増えて来ました。
そこで本記事では、ナレッジマネジメントの意味やDX推進における活用例、メリットを最大化するための進め方などについてわかりやすく説明していきます。
ナレッジマネジメントの意味と手法
ナレッジマネジメントとは、従業員が個々にもつ知識や経験・ノウハウを、組織として共有・管理するマネジメント手法です。1990年代に、日本の経営学者である野中郁次郎氏らが提唱しました。
ナレッジは「暗黙知」から「形式知」へ
野中氏は、1980年代に多くの日本企業が成功した要因は「暗黙知から形式知への転換」にあるとしています。
– 暗黙知:言語化や図式化がなされていない、属人的な知識
– 形式知:言語や図表などを用い、データとして客観的に表現された知識
ナレッジマネジメントでは、これらの知識を相互に変換・作用させ経営に役立てていくことを基礎理論としています。
「SECIモデル」によるナレッジマネジメントのプロセス
ナレッジマネジメントを実現する方法として有名なのが、「SECI(セキ)モデル」と呼ばれるフレームワークです。SECIモデルは、以下の4つのプロセスによって成り立っています。
– 共同化(Socialization):共通の体験を通して、暗黙知を伝達・獲得する
– 表出化(Externalization):暗黙知を言語化や図式化により形式知に変換し、共有できるようにする
– 連結化(Combination):複数の形式知を組み合わせて、新たな知識体系を創造する
– 内面化(Internalization):知識体系から各自が学習し、新たな暗黙知として身につける
これらのプロセスを繰り返すことで、組織にナレッジが蓄積されていきます。
ナレッジマネジメントによる知識体系の活用例
ナレッジマネジメントでは、ナレッジをデータとしてどのように集約させていくかが重要です。ナレッジを適切に管理すれば、属人的な仕事の進め方に起因する課題を解決できます。ここでは、ナレッジマネジメントによる知識体系の活用例について見ていきましょう。
– 優秀な人材が実践している方法を共有する
– 知識を集約させて社内FAQを運用する
優秀な人材が実践している方法を共有する
ナレッジの活用方法としてもっとも一般的なのは、優秀な従業員がもつナレッジを、形式知として表現し共有することでしょう。
たとえば、成績トップの営業マンやエンジニアの考え方・行動パターンを分析し、データ化するのです。これは、ベストプラクティスを社内で共有できるようになることを意味しています。このような知識体系を新人教育や人事異動の際に用いれば、組織全体のスキルレベルを短時間で底上げできる可能性があります。
知識を集約させて社内FAQを運用する
組織内の専門知識をデータベース化して、簡単に検索・閲覧できるようにすることも、よく見られるナレッジの活用方法です。
たとえば、集約した専門知識をもとに従業員が利用できるFAQの仕組みを構築すれば、質問事項から知りたい情報に素早くたどり着けるようになるでしょう。これまでは知識のある人に頼らざるを得なかったことも、自力で解決して業務を進められるようになるのです。効率化という面だけでなく、業務品質が均質化される効果も期待できます。
DXにメリットのあるナレッジマネジメントの例
近年では、多くの企業がDXに取り組んでいます。その本来の目的は、顧客視点でのサービス開発や新規ビジネスモデルの創出などによる、競争力の強化です。このような、いわゆる「攻めのDX」による抜本的な変革のためにも、ナレッジマネジメントは重要な施策だといえます。
ここでは、DX推進の面でもメリットのあるナレッジマネジメントの例について紹介します。
– 顧客の声をサービス改善につなげる
– ナレッジを分析してビジネス判断に活かす
関連:「攻めのDX」推進のポイントとは?「守りのDX」との違いから解説
顧客の声をサービス改善につなげる
顧客からの自社への評価は、サービスの改善に役立つ可能性の高い貴重なデータです。ユーザーサポートなどに寄せられた意見やクレームをナレッジとして、データベース化するメリットは大きいといえます。
これらをサポート業務に活用すれば、オペレーターは過去の対応内容にもとづいて、顧客に最適な回答を提供できるようになります。ナレッジを部署間で共有すれば、より顧客満足度の高いサービス開発につなげることもできるでしょう。
ナレッジを分析してビジネス判断に活かす
サービス開発や新規ビジネスモデルの構築は、自社の特徴や強みを加味して行うことが大切です。また、その戦略策定の際には、さまざまな種類のデータを多角的な視点から分析する必要があります。
自社がもつナレッジを分析可能なデータとして集約しておけば、ビジネス判断にメリットをもたらすといえるでしょう。データ量が膨大になることも考えられますが、それに対応できる分析技術があれば、事業スピードの向上も見込めます。
DXにおけるナレッジマネジメントの効果的な進め方
DXを推進するにあたり、どうすればナレッジマネジメントのメリットを最大化できるでしょうか。ここでは、そのために効果的な進め方について紹介していきます。
– ビジネスの「変革」に照準を合わせる
– 組織の「集合知」を活用できるITシステムを整える
– 組織全体の「DXリテラシー」を底上げする
ビジネスの「変革」に照準を合わせる
ナレッジマネジメントのメリットを最大化するには、まず「ナレッジマネジメントの目的」を明確に意識することが大切です。
例えば、業務の効率化や属人性の低減、組織的なスキルレベルの向上などが考えられます。しかし、ナレッジマネジメントをDXの一環としてとらえるならば、より根本的な目的に照準を合わせるようにしましょう。
DXの本来の目的は、ビジネスモデルや自社サービス、それらを支える業務プロセスなどの抜本的な改革により競争力を強化していくことにあります。また、そうした改革に継続的に取り組める企業文化を醸成することも重要です。「形式知」として集約されたナレッジは、DXのこのような目的をふまえた施策を進める際の貴重なデータとなります。
組織の「集合知」を活用できるITシステムを整える
ナレッジマネジメントを通して、ナレッジは「暗黙知」から「形式知」へ変換され連結されて知識体系を形作ります。いわば「集合知」のようなデータが新たに生まれるのです。このようなデータをビジネス判断に的確に活用するには、素早くデータ分析できる能力が求められます。
一方DXにおいては、膨大な量のデータを高速に分析できるようにするためにAIとビッグデータを活用するなど、データとともにデジタル技術の活用が必須とされています。そのようなITシステムを構築すれば、ナレッジをリアルタイム性の高いビジネス判断に役立てられるでしょう。
組織全体の「DXリテラシー」を底上げする
「DXリテラシー」は、DXにおけるナレッジマネジメントをより効果的なものにします。
ナレッジは、社内のどこにでもあるものです。すべての部署でナレッジマネジメントを実施すれば、これまで属人的になっていた知識や専門的なスキル、それぞれの現場が抱えている課題などが全社的に集約されます。
DXにおいては、こうしたナレッジから新規ビジネスの具体的なアイデアが生まれることも少なくありません。価値の高いアイデアをより多く抽出するには、すべての従業員がDXの当事者であることが望ましいでしょう。そのためには、DXに関するリテラシーを組織的に底上げし、新規ビジネスについて考える重要性を誰もが理解している状態を目指すことが大切です。
リテラシー教育の質がDXとナレッジマネジメントのカギとなる
業務を効率化したり、属人性を減らしたりするためには、社内のナレッジを集約・活用することが重要です。これはDXとも合致する施策であり、全社的なリテラシーの底上げをはかることが、ナレッジマネジメントによるメリットの最大化にもつながります。
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