【物流業界のAI活用事例】需要増加に対応するための配送効率化
物流業界について
物流業界は、矢野経済研究所の調査によると、2019年度で約23兆5,410億円の市場規模があり、2020年度は24兆80億円と予想されています。
物流業界の市場規模は年々拡大しており、2016年から毎年前年比で2~6%で右肩上がりに成長しています。
物流業界の成長の要因のひとつとなっているのが、ECの成長です。オンラインショッピングをする消費者が大きく増えることにより、輸送量は増加します。特に2020年から流行した新型コロナウイルスの影響で、いわゆる「巣ごもり消費」が増加しました。
また、最近ではこうした輸送量の増加に対して、業務を効率化するための「フィジカルインターネット」の考え方が注目を集めています。
フィジカルインターネットとは、荷物や貨物を運ぶトラックの荷台サイズ、倉庫スペースなどを規格化することで、積載効率や倉庫保管効率を向上させる考え方のことを指します。
物流の効率化のため、政府も2030年までに「完全無人輸送、配送サービス」の実現に向けたロードマップを発表しています。その中では、トラックの自動運転、ドローンを活用して「2030年を目途に完全に無人化する」という目標が掲げられています。
3段階の工程表が政府から提示されており、第2段階で、AIによる無人化の実現が目標として設定されています。
これらの取り組みによって、増加する輸送量に対応していますが、まだまだ課題が残っているのも事実です。次の見出しでご紹介します。
物流業界の課題
新たなビジネスの登場などで物流の総量が増える中、新型コロナウイルスの流行によりいわゆるニューノーマルの生活様式が広がりを見せ、再配達など事業者に対するニーズの多様化が加速しています。しかし、そのニーズにすぐに応えられるわけではないので、配送がパンクしかねない状況でもあります。
物流業界の主な課題としては、以下の2つがあります。
・人材不足への対応/労働力確保
・ラストワンマイルへの対応
人材不足への対応/労働力確保
物流事業者は慢性的な人手不足・高齢化の課題を抱えています。
厚生労働省が調査を行っている12の業種の労働者不足の割合は、2019年11月の調査では41%でした。運輸業に関しては56%で、平均よりも15%も高い数値となっています。
※労働経済動向調査の概況:産業別正社員等労働者過不足状況と労働者過不足判断D.I.より
また、2019年の国土交通省の調査によると、トラックドライバーは全産業の平均値と比較して40代~50代前半の就業者の割合が10%近く高く(道路貨物運送業は44.8%、全産業の平均値が35.1%)なっています。明らかに高齢化が進んでおり、この傾向は年々強まることでしょう。
ラストワンマイルへの対応
宅配業者が各営業所から消費者の自宅までの配送のことを「ラストワンマイル」と言います。このラストワンマイルへの対応は、物流効率を下げるボトルネックの一つになっています。
ラストワンマイルにおける問題のひとつが、再配達です。
コロナ禍で2020年は改善傾向にありますが、それでも国土交通省の調査によると2020年4月の調査では8.5%が再配達となっています。
なお、前年の2019年4月都市部では、18%の再配達率となっていますから、約5個に1個が再配達となる計算になります。「Stay home」が終わると、また問題は顕在化する可能性もあるでしょう。
再配達は、現場の配達員の課題を肥大化する要因となっているため、配送の効率化・最適化が期待されます。
関連:DX推進のメリットとデメリットを解説!課題を乗り越え効果的に取り組むには
物流業界におけるAIの活用事例
物流業界の課題を解決する、物流業界におけるAIの活用事例をご紹介します。
「ロボネコヤマト」プロジェクトによる自動配送
引用:「ロボネコヤマト」4月24日に神奈川県藤沢市内で自動運転車による配送の実証実験を実施
課題
利用者の不在率の高さと、再配達による人件費が大きな課題となっています。。
また利用者目線では、時間指定の配達や再配達であっても指定できる時間の区切りが広いため、利用者は好きなタイミングで荷物を受け取れず、満足度低下につながってしまうという課題があります。
解決策
「ロボネコヤマト」という、AIによる配送ルートの最適化を行うことで、お届けの時間帯を10分刻みで指定できる、自動運転車による配送の実証実験を行いました。
効果
まだ実用化には至っていませんが、「宅配ドライバーの人件費の削減」「好きなタイミングで受取が可能になることで、利用者満足度の向上」などの効果が期待されています。
ニトリが導入しているピッキングロボット「バトラー」
引用:倉庫の商品棚ごと運んでくる物流ロボット「バトラー」、グレイオレンジが日本市場に本格参入へ 市場規模や販売目標は?
課題
物流業務に於いて、倉庫担当者は、倉庫内の棚を回り、発送予定の在庫商品をピッキングしています。インテリア小売大手のニトリでは、その歩行距離は平均して一日一人あたり11kmにも及んでいました。
また、人力でラック配置を算出し、再配置するのは、難易度が高く、工数も大きい業務でした。
解決策
まず、AIによって、出荷頻度に合わせてシステムが最適なラックの配置を算出します。
その上で、AIがロボットが、出荷する商品が収納されたラック(棚)の下に潜り込み、ラックごと持ち上げてスタッフの元に運んできます。
スタッフはロボットが運んできたラックから商品をピッキングし、バーコード・リーダーをかざした上で同梱発送用のパレットに入れるフローにしました。
効果
人件費の大幅な削減を実現しました。ニトリホールディングスの物流子会社、ホームロジスティクス社が大阪の物流倉庫に導入した結果、人と比較してロボットのピッキング効率は4.2倍を達成しています。
日立製作所 「配送最適化」サービスの提供
引用元:日立、AI・IoT活用で配送計画を自動立案する「配送最適化サービス」を提供開始
課題
ECの拡大による物流量の増加に対応するためには、効率的な配送計画が欠かせません。しかし、現状は熟練者の経験に頼って計画立案が行われており、効率化や業務負荷の軽減などが課題となっています。
解決策
日立製作所の「Hitachi Digital Solution for Logistics/配送最適化サービス」は、物流業務における配送計画を自動で立案するサービスです。車両ごとの配送先・配送日時の割り付けや、配送ルートの策定、積載率や稼働時間/走行距離などを算出できます。
効果
配送計画を自動作成することによって、属人的に行われていた配送の効率化を実現しました。また、経験や感覚値によらず効率的に配送できるようにしたことにより、初心者でも業務を遂行しやすくなりました。
まとめ
物流業界は、ECの普及に加え、コロナショックでの消費者の生活様式の変化よって、大きな変化を求められることになりました。市場規模は拡大しているため嬉しい悲鳴ではあるのですが、労働者不足の状況で輸送量が増加することは、物流がパンクするリスクがあります。
そうした自体を避けるために、AIを活用して業務の最適化・効率化を進めることが強く期待されているのが物流業界です。
もし高効率な配送サービスが実現すれば、これまでの宅配対象だけではなく、ECでの対応が難しかった生鮮食品などの物流が活性化し、地方創生などにもつながる可能性を秘めています。
すでに米国ウォルマートでは、無人自動運転配送で商品を宅配する実証実験も行っていますので、今後の展開に注目です。
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