DXで労働生産性を上げるには?定義や計算式、メリットも解説!
労働生産性の向上は企業にとって重要な要素であり、競争力の向上や持続可能な成長、従業員のモチベーションアップなど多くの利益をもたらします。労働生産性を高めるには、デジタル技術やデータの活用などを通じて経営戦略や組織文化を変革するDXへの取り組みも不可欠です。記事では以下の内容を中心に解説していきます。
- 労働生産性とは
- 労働生産性の計算式
- 労働生産性を上げることのメリット
- 労働生産性が上がらない原因
- DXを通じた労働生産性改善のポイント
労働生産性について知りたい方や、DXを通じて労働生産性改善に取り組みたい方はぜひ参考にしてください。
労働生産性とは
まずは労働生産性とは何かを理解するために、そもそも生産性とは何かを説明した上で、労働生産性の意味を解説します。さらに世界から見た日本の労働生産性の現状も見ていきます。
生産性とは
生産性とは、ある一定期間生産活動に投入された資源に対して、どれだけの価値や製品を生み出すかを示す指標です。資源には、例えば労働力や資本などがあります。
生産性が向上するということは、同じリソースでより多くの価値を生み出すことができるということであり、経済成長をするためには生産性は重要な要因です。
生産性は、資源の視点から大きく3つに分類することができます。1つは労働者が生み出す価値や製品の量を測る労働生産性。2つめは、機械や設備、建物などの資本に対して一定の期間で生み出される価値を測る資本生産性。3つめは技術、知識、イノベーションなど労働と資本以外の要素に対して一定期間で生み出される価値を測る全要素生産性があります。
労働生産性の意味
労働力の視点から生産性を捉える労働生産性は、労働者が一定の労働時間内にどれだけの成果を生み出すかを示す指標です。労働者1人当たりの成果で見る場合と、1人の労働者の1時間当たりの成果で見る場合があります。
労働生産性が向上することによって、より多くの製品やサービスの提供が可能になり競争力の強化につながります。そのため企業は労働生産性を高める努力が求められます。労働生産性を高めるには、業務全体の効率化が必要です。
例えば新しいテクノロジーやツールの導入によって業務を自動化することや、タスクの処理速度を向上させることは業務の効率化にあたります。企業は、業務の効率化に取り組むことで、労働生産性を高め、組織の競争力の向上につなげることができるのです。
世界ランキングで日本の労働生産性の現状
日本の労働生産性は世界ランキングで見ると低めです。公益財団法人 日本生産性本部の「労働生産性の国際比較 2022」を見ると、2021年の日本の時間当たりの労働生産性は、OECD加盟38カ国中27位で、就業者一人当たり労働生産性は29位となっています。
日本には強固な上下ヒエラルキーによって意思決定のプロセスが長くなりがちな文化や長時間労働を良しとする風潮などがあり、それらが労働生産性の向上を阻む原因の1つと考えられます。日本で人口減少が進んでいるなか今後も経済を支えていくためには、労働生産性を高めることが喫緊の課題です。
企業はこれまでのやり方を見直して、必要に応じて自社に合った新しい技術やツールなどを取り入れるなどして業務の効率化をはかり、労働生産性を高め競争力を向上させていく必要があります。そのためには、企業の経営戦略や組織文化をも変革していくDXの取り組みが必要となるのです。
労働生産性の求め方
労働生産性には物的労働生産性と付加価値労働生産性の2つがあります。以下で、それぞれの意味と計算の仕方を解説するので参考にしてください。
物的労働生産性の計算
物的労働生産性=生産物の物量÷労働量
物的労働生産性は、一定の期間において労働者が投入した労働に対して、どれだけの物理的な製品やサービスの数量を生み出したかを示すものです。上記の式で求めることができます。
物的労働生産性の例として、例えばある自動車製造工場で1日の労働時間において、労働者が合計で100台の車を組み立てたとしましょう。この場合、物的労働生産性は100台です。つまり、1日の労働時間で100台の自動車が生産されたことを意味するのです。
物的労働生産性は、主に製造業や農業などの物的な生産活動に関連する場合でよく使われています。
付加価値労働生産性の計算
付加価値労働生産性=付加価値額÷労働量
付加価値労働生産性は、一定の期間において労働者が付加価値を生み出す際の効率性を測定する指標です。付加価値とは、企業が製品やサービスを生み出す際に、原材料や部品などに付け加えた価値のことを指します。付加価値労働生産性の求め方は上記のとおりです。
付加価値労働生産性の例として、例えばあるレストランが1日の労働時間において、労働者が食材を使って料理を提供したとしましょう。料理の提供には調理、盛り付け、サービスなどの工程で付加価値が付け加えられます。1日の労働時間で提供された料理の付加価値の合計が50万円とすると、付加価値労働生産性は50万円です。
付加価値労働生産性は物的な製品の数量だけでなく、その製品にどれだけの価値を付け加えたかを考慮します。企業がより効率的に付加価値を生み出し、顧客価値や収益を向上させるためには、付加価値労働生産性にも着目することが重要です。
労働生産性を上げることの3つのメリット
労働生産性を上げることで、具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。以下で詳しく解説します。
税金や融資での優遇がある
設備投資を通じて中小企業が労働生産性を向上するために設けられている経済産業省の支援として「先端設備等導入計画」の制度があります。労働生産性が年平均3%以上の向上が見込まれることが認定要件の1つとなっていて、これに認定されることで税制支援や金融支援などの支援措置を受けることが可能です。
設備投資をする点や中小企業である点など条件はありますが、労働生産性を上げたいと考えるなら向上させるための計画とシミュレーションをして「先端設備等導入計画」を作成し、申請すると良いでしょう。認定されたら、優遇措置も相まってより労働生産性を向上させ企業の競争力を強化しやすくなるはずです。
企業の競争力を高める
労働生産性の向上は、競争の激しい市場環境において、他の競合他社よりも優位な位置を築くために重要な要因となります。競合他社に対して優位なポジションを築くことで、市場での成功や成長を達成することができるからです。
例えば労働生産性を高めて同じ時間内により多くの製品やサービスを生産できるようになると、コストは下がります。すると競合他社よりも低価格で提供可能となり、顧客の選択肢として選ばれやすくなるでしょう。
また、効率的な生産プロセスが確立されることで、製品の欠陥やサービスの遅延を減らし、顧客の満足度を高めることもできるでしょう。そうすることで顧客からの信頼を築き、リピーターを増やすことにもつながります。
従業員の満足度とエンゲージメントを高める
労働生産性が高まると、従業員は自分の成果を実感しやすくなります。自分の仕事が組織に貢献していると感じると、仕事に対するモチベーションやエンゲージメントも高まります。
また、労働生産性が高まるとともに効率的な生産プロセスも確立されるようになると、従業員の仕事の負担が軽減されるでしょう。するとストレスが減少し、従業員のワークライフバランスが向上します。ひいては、従業員の仕事に対する満足度アップにもつながるのです。従業員が満足し仕事にやりがいを感じることで、組織全体のパフォーマンスが高まるでしょう。
労働生産性が上がらない3つの原因
労働生産性を上げたいけれど、なかなか上がらないという方もいるでしょう。ここでは労働生産性を高めるにあたって、それを阻んでいる主な原因を解説します。労働生産性を上げたいと思っている方は、自社にこれらの原因がないか確認してみましょう。原因に対する対策も解説しているので参考にしてみてください。
長時間労働文化がある
日本では残業や長時間労働を美徳とする風潮があり、一部の企業や産業では依然としてそれが根強く残っています。
長時間労働は従業員の疲労を引き起こしさらに蓄積すると、十分な集中力を持つことが難しくなります。すると仕事の質や効率が低下し、ミスにつながるリスクが高まります。また、労働時間に拘束されてプライベート時間が削られることで、従業員のワークライフバランスが損なわれ、仕事へのやる気や情熱が失われる可能性もあります。
労働生産性を向上させるためには、効率的な働き方の促進やフレキシブルな勤務制度の導入、ワークライフバランスの改善など、長時間労働に対する取り組みが必要です。長時間労働を推奨しないような文化への変革や経営者の意識改革も同時に求められるでしょう。
コミュニケーションがスムーズでない
日本の企業においては、経営者やトップマネジメントが重要な意思決定を行い、その指示にもとづいて全社員が行動する形態が見られます。このような中央集権的な意思決定や上下関係の強さによって、組織内の情報は限られた人々にのみ集中し、従業員の間で情報の共有や透明性が不足することがあります。
すると従業員が組織の全体像を理解しにくくなり、組織の課題や改善点を発見することも困難になりがちです。さらに現場の従業員の判断や提案が反映されない環境が醸成されやすくなり、組織全体の意欲や創造性が抑制される原因ともなるでしょう。
組織全体での協力や創造性を促進して労働生産性の向上につなげるためには、従業員の意見を尊重し、オープンなコミュニケーションが行われる企業文化を形成することが重要です。
デジタル時代への適応が遅れている
デジタル時代への適応が遅れていると、労働生産性が上がらない原因となります。デジタル時代には効率的なツールやシステムが数多く存在しますが、これらを導入せずに従来の手作業や非効率的なプロセスを続けると、すでに効率化を図っている競合企業と比べて業務のスピードや効率が低下しその差は広がるばかりでしょう。
また、デジタル時代には大量のデータが蓄積され、それらにもとづいた分析や洞察によって効果的な戦略やプロセス改善が行われ、労働生産性が向上します。しかし、デジタル化への適応が遅れるとデータ活用の機会を逃すことになります。
企業はデジタル化への積極的な取り組みや新しいテクノロジーの導入、データの活用を通じて生産性向上に取り組むことが重要です。
労働生産性を向上させるDXの4つのポイント
DXとは最新のデジタル技術やデータなどの活用を通して、経営戦略や組織文化を変革し競争力を向上させる取り組みです。DXに取り組むことは、労働生産性を高めることにもつながります。以下でDXによって実現できることと、それがどのように労働生産性を向上させるのかを解説します。
プロセスの自動化と効率化
DXの過程ではデジタル技術やツールなどを活用して、従来の手作業業務をデジタル化し、請求書作成などの煩雑な業務を効率化することが可能です。例えば、請求書作成の自動化ではテンプレートを用意し、データベースから必要な情報を抽出して自動的に請求書を作成することや、メール送信、印刷まで自動化できるようになるのです。
このように業務プロセスの自動化によって従業員は時間と手間を節約でき、さらにヒューマンエラーのリスクも減るため正確性が高まります。これまで手作業で行っていた業務を自動化することで従業員はより高度な業務に集中でき、労働生産性アップにもつながるのです。
データドリブンによる迅速な意思決定の促進
DXではデータを収集・整理し、ビジネスの分析ツールを使って情報をわかりやすく視覚化することができます。また、過去の膨大なデータを元に未来の動向を予測する機械学習も可能です。
ツールなどを活用すると素早くデータを分析でき、それにもとづいて判断していくことによってビジネスの意思決定を迅速かつ正確に行いやすくなり、結果的に労働生産性の向上につなげることができます。
コミュニケーションの改善
コミュニケーションツールを活用してプロジェクトを進めることで、メンバーは個々の進捗だけでなく、全体のタスクの進捗状況も把握しやすくなります。お互いの状況が見えるためフォローがしやすく、また、課題や遅延も見つけやすくなるため早めの対応が可能になり、確実にプロジェクトを進めやすくなります。
これによって、生産性を高めて組織の業績の向上につなげることが期待できます。スムーズなコミュニケーションによって、従業員同士の協力関係やモチベーションも向上し、働く環境もより良くなるでしょう。
リモートワークや柔軟な働き方の促進
DXによってビデオ会議、チャットツールなどのコミュニケーションツールを活用することで、遠隔地や自宅からもリアルタイムでのコミュニケーションが可能です。また、クラウドサービスの活用によって、データやアプリケーションをオンライン上で安全に保管でき、いつでもどこからでも共有やアクセスができます。
これによってリモートワークや柔軟な働き方を実行することが可能です。従業員は自分のベストなペースで仕事に取り組みやすくなり、家庭や個人の時間との調和も取りやすくなります。するとストレスが軽減されモチベーションの向上につながり、結果として労働生産性の向上にもつながるのです。また、リモートワークや柔軟な働き方ができる企業は、地理的な制約を超えて多種多様な人材を採用・活用することも可能になり、競争力を高めることができます。
DXによって労働生産性を高めよう
企業の労働生産性を向上させ、効率的な業務遂行や従業員の満足度向上を実現しながら競争力を強化するには、最新技術やデータを活用して企業を変革するDXへの取り組みが不可欠です。
DX推進は、全社的な取り組みであり成功させるためにはDXに精通したDX人材が必要不可欠となります。経産省が策定した「デジタルスキル標準」でもDX推進において、どのような素養や専門性を備えた人材が必要となるかが整理され、多くの企業がDX人材育成への取り組みに強い関心を持ち始めています。
弊社では、これまで700社以上のDX人材育成実績で培ったノウハウを基に、企業が目指すDX人材像や要件レベルをデジタルスキル標準に準拠した形でアセスメント・トラッキングできるようにすることで、人材成長に合わせた実践型育成カリキュラムを通じて企業ごとに最適化されたDX人材を創出できるサービス「DX人材プランニング」を提供しています。
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