属人化の3つのリスクと解消方法を丁寧に解説! - 株式会社STANDARD

属人化の3つのリスクと解消方法を丁寧に解説!

DX・AIプロジェクト推進

この記事の目次

  1. 業務の属人化とは?
  2. 属人化のリスク
  3. 属人化が起こる原因
  4. 属人化は必ずしも悪くない?スペシャリストとの違い
  5. 属人化の課題を解消するメリット
  6. 属人化を解消すべき業務例
  7. 属人化を解消する方法
  8. 属人化の問題を解消してDX推進につなげよう

現場における属人化の問題を深刻に捉えている方はどれだけいるでしょうか。中には「属人化は問題ではなく、むしろメリットも多い」と感じている方もいることでしょう。そこで今回は属人化をとりまく疑問を解消すると同時に、属人化を解消すべき業務例や解消方法について解説していきます。

業務の属人化とは?

 

業務の属人化とは、ある業務の遂行が特定の人材しか行えない状態になることを意味する言葉です。業務の属人化は主に、組織体制が原因で属人化してしまうケースと、技術的な業務が原因で属人化してしまうケースの2つがあります。

後述しているように、属人化は必ずしも悪い状態ではなく、現場担当者からすればむしろメリットが多いように感じることもあるでしょう。業務に対する理解と熟練度が個人のパフォーマンスを上げていることも事実だからです(スペシャリストの存在)。

しかし同時に覚えておきたいのは、「属人化」が問題としている状態が多くの場合、「特別なスキルを必要としない業務なのに属人化している状態」を指している点です。社内ナレッジとして共有しておけば防げたはずの様々なリスクを放置してしまっている状態にこそ問題の焦点が当てられています。

属人化のリスク

 

では属人化の状態を放置していることで、どのようなリスクが生じてしまうのか?を見ていきましょう。属人化のリスクとして考えられるのは主に以下の3つです。

  • 業務工数にばらつきが出る
  • 業務効率・業務品質が低下する
  • 担当者の異動・退職によりノウハウが蓄積されない

それぞれのリスクについて解説していきます。

業務工数にばらつきが出る

企業の様々な業務はある一定のルールのもとに遂行されています。しかし業務内容や業務手順の複雑さなどの理由から、ある工程を境に業務がブラックボックス化してしまうことがあるでしょう。そうするとあるアウトプットが出来上がるまでのスピードに個人差が発生したとしても、業務効率化のための標準化が速やかに行えません。業務内容や業務手順が複雑であればあるほど、業務の棚卸しには時間がかかるため、しばらく業務工数にばらつきが出る状態が続いてしまいます。

業務効率・業務品質が低下する

業務が属人化していると、業務効率や業務品質も個人に依存するようになります。Aさんは1つのアウトプットを2時間で作成するが、Bさんは5時間かけて作成するといった事態も起こってしまいます。後述するように、属人化による業務効率・業務品質の低下は、社内ナレッジの共有で解決することが可能です。

担当者の異動・退職によりノウハウが蓄積されない

属人化の問題が厄介な点は「いつも通りの業務が遂行されている間は特に問題とされない」ことです。全ての業務手順を完璧に同じ方法で遂行することは、熟練した複数の社員の間でもそう出来るものではありません。やはり「ある部分を境に業務が属人化してしまう」ものなのです。

そうした状態が続いたある日、担当者の異動・退職によって属人化の問題が顕在化します。仮にZというアウトプットを作成する業務が1つ宙に浮いたとして、Zが作成できる社員がチーム内にいれば問題は起こらないでしょう。しかしYというアウトプットの作り方(ノウハウ)を知っている社員が居なければ、Yというアウトプットはいつまでも作成できません。属人化が本当にこわいのは、あるアウトプットを生み出せないことで行き詰まる未来の状態なのです。だからこそ普段の業務が属人化していても、アウトプットさえ通常通り作成できていれば問題が表面化しないといえます。

属人化が起こる原因

属人化には様々なリスクがあり、担当者の異動・退職によるノウハウの消滅といった事態が起こらなければ取り立てて表面化されない問題であることが分かりました。ここからは属人化がどのようにして発生するのかを確認していきます。

  • 多忙により社内ナレッジが共有・管理されていない
  • 間接業務に割く人員が少ない
  • 業務の専門性が高い
  • 個人成果主義のカルチャーがある
  • 正当な人事評価ができていない
  • レガシーシステムがブラックボックス化している

それぞれ解説していきます。

多忙により社内ナレッジが共有・管理されていない

属人化が起こる原因としてよく挙げられるのが「多忙により社内ナレッジが共有・管理されていない」というものです。言い方を変えれば「取り組めばできるが、やっていない状態」となります。多忙であればあるほど、業務のアウトプットの方が重要視され、業務プロセスの改善は後回しになるでしょう。社内ナレッジが共有・管理されていないことで、属人化の程度は酷くなっていきます。

間接業務に割く人員が少ない

間接業務とは、経理や総務・人事などの、いわゆる「バックオフィス業務」のことです。これらの業務は組織や経営を維持するために重要ではあるものの、利益を生み出す活動に直接的に関わるわけではありません。そのため、十分な人員を配置できないケースもみられ、ルールやノウハウの共有が一部の担当者のみで行われる傾向があります。結果として、属人化を引き起こしやすい状況になってしまうのです。

業務の専門性が高い

一方業務の専門性が高いことが原因で、業務が属人化してしまうケースがあります。特にエンジニア職や技術職に多く、業務の複雑さに加えて少数精鋭で担当している場合などに起こりやすいといえます。この場合は属人化がよく問題とする「特別なスキルを必要としない業務なのに属人化している状態」とは異なるため、対策を検討する必要があるでしょう。

ある技術や業務内容が個人に依存せざるを得ない状況もあるため、社員に理解を求めて業務の棚卸しを行い、他の社員が代わりに担当できる業務はないか調べることが重要です。属人化の状態を完全に無くすのではなく、属人化の度合いを減らす努力が必要となります。

個人成果主義のカルチャーがある

個人成果主義のカルチャーがある企業では属人化の問題が表面化しやすくなります。例えば営業部門は企業利益のために日々活動しますが、同時に社内競争にも晒されています。そうした状態では、ある情報やノウハウの共有が、社内競争で負ける要因となることもあるでしょう。こうした属人化のパターンは営業部門に限らず、他の部署でも同じような構造が見いだせるのであれば十分起こりえます。

関連:【法務のAI活用事例】契約業務効率化と属人性の排除

正当な人事評価ができていない

属人化の問題が表面化するのは、そうなる前の段階から「業務の詳細が不明である」という状況があるためです。これは、各自が「うまく仕事をできているのかどうか」が外から見てもわからないことを意味しています。そうした状態で客観性や公平性を保ちながら、正当な人事評価を行うことは難しいでしょう。また、業務上のミスが発生したとしても外部からは気づきにくいため、再発防止を目的とした是正にもつなげられません。さらに、担当者がミスを隠蔽してしまうなどのリスクも考えられます。

このような状況が長く続くと、コミュニケーションがとりにくくなり、意見交換や指導の機会はさらに減っていくかもしれません。担当者が退職してはじめて、属人化が現実的な問題として表面化することとなってしまうのです。

レガシーシステムがブラックボックス化している

レガシーシステムとは、老朽化してしまったITシステムのことです。得られる恩恵に対して維持コストが高くつくにも関わらず、業務に必要なものとして使われ続けるケースが多い現状があります。また、古いシステムであることから改変が困難であり、メンテナンス作業を実施できる人員も限られています。こうしたレガシーシステムを使っている限り、メンテナンス担当者の異動や退職が、つねにリスクとしてつきまとう状態が続くといえるでしょう。

さらに、レガシーシステムには、それ自体がブラックボックス化してしまったものも少なくありません。このことは、「業務の詳細が不明である」という状況を生み出す一因にもなっています。

属人化は必ずしも悪くない?スペシャリストとの違い

ここまで属人化のリスクや、属人化が起こる原因について解説してきましたが、同時に「属人化そのものが悪いわけではない」ということも何となく理解いただけているのではないでしょうか。属人化の問題は、常に企業の管理サイドの人間と現場サイドの人間で対立する問題であり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

以下では属人化は誰にとって問題なのか?という点と、どのような場合に属人化を解消すべきなのか?についてお伝えしていきます。

属人化は誰にとってデメリットなのか?

属人化を問題として認識しているのは、主に企業の管理サイドの人間です。あるアウトプットを適切な形で一定量出し続けるためには、業務品質の向上・維持が欠かせない要素となります。したがって管理サイドの人間が、日頃から業務プロセスに改善の余地を見い出すのは当然のことであり、現場サイドの人間に比べて危機感が強い点も納得できるでしょう。属人化の問題は、企業の管理サイドの人間にとってデメリットである場合がほとんどなのです。

属人化がメリットをもたらすケースとは?

一方で企業の現場サイドの人間は、あるアウトプットを生み出すために日々業務と向き合っています。イレギュラーな事態が発生したり、都度問題を修正したりしてアウトプットを作成していますが、業務が多忙であるほど情報・ノウハウのナレッジ化は難しくなるでしょう。限られた業務時間の中で最大限パフォーマンスを発揮するために、既存のマニュアルやレギュレーションにはない業務を行っていることも多いのではないでしょうか。

そのため現場で日々業務と向き合う社員にとっては、ある程度業務が属人化している方が「業務の進めやすさ」という点でメリットを感じることでしょう。

望ましくない属人化を解消するために

しかし企業にとって大切なことは、安定した品質のアウトプットを一定量滞りなく生み出すことであり、それらを阻害する要因は見つけ次第改善していく必要があります。またこのような管理サイドの働きかけに対して、現場サイドも属人化の問題の解消に積極的になることで、有事の際の業務負担増加を回避できる確率が高まります。現場サイドには業務の棚卸しによって「仕事が増える」と思う社員も一定数いることが想定されるため、管理サイドの人間には「属人化のリスク」について説明する努力が求められます。

属人化の課題を解消するメリット

属人化の課題を解消するメリット

場合によっては、属人的な業務の進め方をあえて残すことにもメリットがあると説明してきました。とはいえ、多くの場合においては、属人化は「解消すべき課題」ととらえるべきものです。ここからは、企業が属人化の課題を解消していくことで、どのようなメリットを得られるのかについて説明していきます。

  • 生産性や品質の低下を防ぐ対策となる
  • マニュアル化によりチームのノウハウを有効活用できる
  • 労働環境の改善につながる
  • DXの推進につながる

生産性や品質の低下を防ぐ対策となる

生産性や品質を向上させるためには、現状の業務内容を正確に把握しておく必要があります。属人化は、これとは反対の状況だといえるでしょう。業務内容が不明であることが、より生産的なプロセスや、高品質な成果を目指す取り組みを阻害する要因になってしまっているのです。属人化の解消は、生産性向上・品質向上の施策へとつながる第一歩だといえます。

マニュアル化によりチームのノウハウを有効活用できる

属人化を解消するために業務内容の詳細を明らかにすれば、それらをマニュアルとして明文化できるようになります。これまで限られたスペシャリストだけができると思われていた仕事のなかにも、マニュアル化が可能な部分はあるかもしれません。つまり、属人化の解消に向けた取り組みは、チーム全体のスキルアップにつながる可能性があるのです。

また、明文化された業務内容は、社内教育の基盤にすることもできます。新人教育を従来よりも短期間でスムーズに進めたり、属人性をさらに減らすためにメンバーをローテーションしたりといった施策も可能になるでしょう。

労働環境の改善につながる

業務内容を詳細に把握できれば、それらをこなすのに適切な業務工数も見えてきます。結果として、担当者ごとに適切な業務量を、偏りなく割り当てやすくなるでしょう。実際の業務工数が想定を超えてしまった担当者がいた場合も、コミュニケーションを通して原因を確認し、長時間労働を是正しやすくなります。

また、より公平で客観的な人事評価が可能になる点も重要です。「なぜ限られたスペシャリストばかりが評価されるのか」というような不満は減り、担当者の退職によって業務が滞ってしまうリスクも低減できるでしょう。

DXの推進につながる

属人化の課題を解消することは、DX推進の土台づくりにつながる施策のひとつだといえます。DXとは、デジタル技術とデータを活用した、継続的な企業変革のことです。社内ツールを導入してデータドリブンな経営を可能にしたり、最新技術をビジネスに融合させてまったく新しいサービスを産み出したりする取り組みを指します。

DXを実現するには自社のビジョンに向けて解決すべき課題を明文化するとともに、社内教育の基盤を整え、組織内のコミュニケーションを活性化する必要があります。また、今後の活用が難しいレガシーシステムから脱却することも重要です。属人化を解消するための取り組みには、DXにも通ずる部分が多いことがわかるでしょう。

属人化を解消すべき業務例

属人化を解消すべき業務例

では実際にどのような業務の属人化を解消すべきなのでしょうか。代表的な業務例を以下に4つ記載していますので参考にしてみてください。

  • バックオフィス業務
  • トラブル・セキュリティインシデント対応
  • 案件対応フロー
  • 自社製品・サービスの説明

それぞれの業務例について解説していきます。

バックオフィス業務

製造業でいえば在庫管理や発注管理、一般的な企業であれば請求書や契約書管理などがバックオフィス業務に当たりますが、これらは一定の業務フローによって管理可能です。企業経営に直接的な影響を与える業務になるため、なるべく業務品質を一定に保っておく必要があります。もしバックオフィス業務が属人化している場合は、様々なツール・WEBサービスを利用した業務の簡略化、マニュアル化を検討しましょう。

トラブル・セキュリティインシデント対応

自社商品・サービスのトラブル対応、セキュリティインシデント対応は勤続年数の長い熟練した社員が担当することが多く、属人化しやすい業務になります。しかし重要な顧客対応の業務であるため、トラブル・セキュリティインシデント対応が可能な社員が複数在籍している方が、有事の際に強い組織体制を築けるでしょう。

案件対応フロー

昨今の営業活動は多岐にわたり、オフライン・オンラインで様々な案件対応が行われています。日々変わる案件対応フローは属人化しやすい業務ですが、現場担当者の異動・退職によって企業の営業機会がそのまま失われてしまう可能性もあるため、早急に属人化を解消すべき業務といえます。

自社製品・サービスの説明

自社製品・サービスの説明も属人化を防ぐべき業務となります。特に営業部門で属人化が起こりやすく、営業担当者間で認識のズレが発生したり、引き継ぎ部門としての他部署との認識の不一致も起こりやすいでしょう。ある程度の業務の属人化は避けられないものの、自社製品・サービスに対する正確な理解は部署内・部署間で共有しておきたいものです。

属人化を解消する方法

属人化の様々な問題点について確認した後は、実際に属人化を解消する方法を知っていきましょう。属人化を解消する方法は主に3つのステップを経ます。

  • STEP1:業務の棚卸しを行う
  • STEP2:標準化業務をFAQとしてナレッジ化する
  • STEP3:業務自動化を検討する

3つのステップについて解説します。

STEP1:業務の棚卸しを行う

まずは業務の棚卸しを行い、業務内容と業務にかかっている時間を可視化しましょう。業務の棚卸しは特別なツール・WEBサービスを使用しなくても実行できるため、現場担当者の理解が得られれば実施可能です。部署内の複数の社員間でどのような業務工数のズレがあるのか、また費やしている時間に違いはあるのか、といった違いを可視化し、最適な情報・ノウハウを持つ社員の業務方法を社内ナレッジに採用します。

STEP2:標準化業務をFAQとしてナレッジ化する

社内ナレッジとして共有・管理するには、他部署の人間でも分かるようなFAQの形式でナレッジ化することが重要です。様々な業務は部署内で完結することは少なく、他部署へと影響するものがほとんどであるため、部署間の連絡・確認作業の時間を減らすためにもFAQの形式を採用することをおすすめします。FAQをExcelやPowerPointで管理するパターンが多いかもしれませんが、「ファイルへのアクセス性」と「情報更新の容易さ」の2つの点から「FAQシステム」の利用がおすすめです。

STEP3:業務自動化を検討する

業務の棚卸しとFAQシステムの導入・管理によって、業務の属人化を解消した後は、業務自動化のフェーズへと入っていきます。業務自動化には様々なものがありますが、例えば作成したFAQを応用して「AIチャットボット」を導入した業務自動化を実現することができます。業務自動化によって現場担当者は属人化していた業務から開放されるため、よりクリエイティブな業務にリソースを割くことが可能です。属人化の解消と業務自動化をセットにした施策を実施することで、現場担当者の業務負担や管理サイドの不安は一気に払拭されるでしょう。

属人化の問題を解消してDX推進につなげよう

属人化の問題を解消すべき業務は、業務の棚卸しを行って最適な業務方法を検討し、FAQとしてナレッジ化することがポイントです。その後のプロセスとしての業務自動化は少々ハードルが高いように感じるかもしれませんが、直感的なUIで利用できるチャットボットツールも多く存在します。

また、この記事で紹介した属人性を解消する方法は、あくまで一例にすぎませんので、FAQやチャットボットに限らず、DXにつながる適切な手段を、普段からナレッジとして積み上げていくことが大切です。是非、この機会に業務の属人化の解消に取りくんでみてはいかがでしょうか。

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