AI創薬とは?注目される理由や業界の動向・製薬企業の課題を解説 - 株式会社STANDARD

AI創薬とは?注目される理由や業界の動向・製薬企業の課題を解説

DX・AI技術・事例解説

この記事の目次

  1. AI創薬とは
  2. AI創薬が注目される理由
  3. AI創薬と製薬業界の動向
  4. AI創薬を実現したい製薬企業の課題
  5. スキルを備えた人材の確保と育成でAI創薬はますます加速する

AI(人口知能)は、近年の飛躍的な発展によりさまざまな分野から注目を集めているテクノロジーです。すでに医療や医薬品の分野でも実用化がはじまっており、新薬開発にAIを活用する「AI創薬」もその一例です。創薬における従来からの手法の問題を解消し、製薬企業の研究・開発プロセスを大幅に改善する可能性があるものとして期待されています。

そこで本記事では、AI創薬が注目される理由や製薬業界の動向、製薬企業が今後解決していくべき課題などについて説明していきます。

AI創薬とは

AI創薬とは、AI技術を用いた新薬の研究・開発プロセスのことです。

AIには、大量のデータから新たな知見を見出すことを得意とする特徴があります。とくに近年では、機械学習に関する技術が大きく前進したことで性能が向上し、応用範囲も広がりました。

このようなAIの特徴を創薬に取り入れれば、研究・開発プロセスを大幅に効率化できる可能性があります。そのため、開発期間の短縮やコスト削減をはかる狙いで、創薬にAIを導入する製薬企業が増えてきているのです。

AI創薬が注目される理由

AI創薬が注目される理由

製薬企業は、今なぜAIを活用した創薬に力を入れようとしているのでしょうか。ここでは、従来の創薬プロセスにおける問題点と、それらがAIによってどのように解消されるのかについて説明していきます。

– 創薬プロセスにおける成功率の低下
– 創薬プロセスの本質的な非効率性
– 従来手法による創薬プロセスの問題をAIが解消

創薬プロセスにおける成功率の低下

新薬開発の成功率は、低下傾向が続いています。厚生労働省がまとめた資料によると、2000〜2004年の成功率は約1万3,000件に1件の割合でした。これに対し、2015〜2019年には約2万3,000件に1件という割合になっています。この20年で、成功率は半分近くまで落ち込んだ計算です。

新薬開発は、そもそも複雑で困難なプロセスです。加えて近年では、開発の対象がこれまで解決できていない疾患へとシフトしてきていることなどから、より難易度が高まっています。その結果として、新薬開発にかかる期間とコストは、年を追うごとに増加しているのです。

創薬プロセスの本質的な非効率性

新薬を開発するには、生体内で薬と結合して効果を発揮するターゲット(創薬標的)の探索と、薬の候補となる化合物の予測・選定が必要です。利用可能な化合物は数万種類にもおよぶため、事前にスクリーニング(絞り込み)を行います。そのうえで、ひとつひとつについて実験し、実際に効果があるかどうかを検証していきます。

スクリーニングは通常、研究者の勘と経験を頼りに行われる難しい作業です。また、数を絞り込んだとしても、ターゲットと化合物との組み合わせは膨大な数にのぼります。新薬開発は難易度が高いうえに、有効な組み合わせを見つけ出すまでに大量の実験をこなさなければならない、本質的に手間と時間のかかるプロセスだといえます。

従来手法による創薬プロセスの問題をAIが解消

創薬プロセスにAIを活用すれば、従来の手法と比較して成功率が向上するとともに、大幅な効率化も期待できます。AIには、人間の勘と経験に頼ることなく、大量のデータを高速かつ正確に処理する能力があるためです。

ターゲットの選定と化合物のスクリーニングでは、AIがとくに力を発揮します。膨大にあるターゲットと化合物の組み合わせを、効果を発揮する可能性の高いものだけに的確に絞り込むことができるのです。これにより成功率の向上が見込まれるとともに、必要な実験の回数を大幅に減らせるため効率化にもつながります。あわせて、開発期間の短縮とコスト削減も実現するでしょう。

加えて、AIを積極的に活用することで、ほかにもさまざまなプロセスを効率化・自動化できる可能性があります。例えば、病理画像から薬効や安全性を効率よく評価するために、AIによる画像解析を応用する方法が考えられます。自然言語処理を用いて、論文を素早く検索できる環境を整えることも可能でしょう。また、AIにロボット技術を組み合わせれば、実験の自動化によるさらなる効率化も視野に入ってきます。

AI創薬と製薬業界の動向

AI創薬と製薬業界の動向

創薬プロセスにAIを活用すればさまざまな効果が期待できることが分かったところで、ここからはAI創薬に関連する国内外の製薬業界の動向を紹介していきます。

– 医療向けのAI市場が拡大
– 産学連携によるAI技術開発が進展
– 創薬以外でもAIとデータの活用が本格化

医療向けのAI市場が拡大

AI技術に強い企業が、医療分野にも進出する動きが活発になってきています。

スイスの製薬大手ノバルティスは、2019年にマイクロソフトとともに「ノバルティスAIイノベーションラボ」を設立しました。ターゲットの探索や化合物のデザイン、スクリーニングなどのプロセスで、マイクロソフトがもつAI技術の活用を進めています。

2021年にはGoogleの親会社アルファベットも、AI創薬事業のための新会社「Isomorphic Labs」を設立しました。また、大手に限らず、AI関連のベンチャー企業やスタートアップと協業する製薬企業も増えています。

こうした動きのなか、創薬における世界のAI市場は、2020年には約3億6,467万ドルという規模に達しました。さらに今後2027年までは、毎年40.8%のペースで成長するという予測もあります。テクノロジー系企業とのパートナーシップにより新薬開発を効率化していこうとする製薬業界の流れは、今後も続いていくでしょう。

産学連携によるAI技術開発が進展

国内では、新薬開発へのAI活用を推進すべく、産学連携による技術開発が進められています。

「創薬支援推進事業-産学連携による次世代創薬AI開発-(DAIIA)」は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が2020年8月にスタートさせたプロジェクトです。製薬企業17社に加えて京都大学、理化学研究所、九州工業大学とAI技術をもつIT企業などが参画しています。

同プロジェクトは、これまで製薬企業に蓄積されてきた情報を活用しながら、化合物の最適化にいたるまでの効率を飛躍的に向上させる「創薬AIプラットフォーム」の構築を目指しています。

創薬以外でもAIとデータの活用が本格化

現代は、世界的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れのなかにあります。AI創薬も、製薬業界におけるDXへの取り組みの一環だという見方もできるでしょう。

製薬業界ではAIのみならず、さまざまなデジタル技術をマーケティングやサービス開発に応用する動きがトレンドとなっています。デジタル技術の導入によって、医療データの活用範囲が広がっているということです。

製薬業界におけるデジタル技術の活用に関しては、その一例を紹介した記事があるので、あわせて参考にしてください。

AI創薬を実現したい製薬企業の課題

AI創薬を実現したい製薬企業の課題

ここからは、製薬企業がAI創薬を実現するにあたり、乗り越えるべき課題について説明していきます。

– 研究者に求められるAIの知識とスキル
– AIシステム開発のリソース確保
– データ提供者のプライバシーへの配慮

研究者に求められるAIの知識とスキル

AI創薬を実現するには、研究者がAIの知識やスキルをある程度備えていなければなりません。製薬企業にとって、研究者を対象とした人材育成が課題になるということです。

AIの導入にあたっては、まず数学や統計学に関する基礎的な知識が必要となります。これらについては、研究者として求められる知識とも共通する部分が多いでしょう。そのうえで、AIを使いこなし成果を出すには、機械学習モデルやニューラルネットワークに関する理解のほか、専門的なツールを利用するスキルなども求められます。

また、AIを理想の状態に近づけていくための、マネジメント手法の確立も重要なポイントです。検証と改善のスパイラルを通してAIを適切にコントロールしていくことを可能にする、「アジャイル型」の推進方法を取り入れるのが効果的でしょう。

弊社では、短期間でAIの知識・スキルの獲得を目指せるサービス「AI_STANDARD」を提供しております。充実したサポート体制で確実な知識習得を後押ししますので、ぜひご活用ください。

AIシステム開発のリソース確保

AIを利用するには、対象となるデータをソフトウェアで処理できる形式に加工しなければなりません。また、加工済みのデータを蓄積しておく場所や、創薬プロセスにAIを組み込むための基盤となるシステムも必要となるでしょう。AI創薬を実用化するまでの道のりにおいて、システム開発は避けて通れないということです。

研究者がAIの知識とスキルを獲得すれば、このようなシステムの開発も可能かもしれません。しかし、開発作業が本来時間を割くべき研究・開発業務を圧迫してしまっては本末転倒です。そのため、創薬プロセスを効率化するには、システム開発のためのリソース確保が製薬企業の課題となります。

この課題に取り組むには、ITベンダーの力を借りるのが現実的だといえるでしょう。ただし、AIによるシステム開発は専門性が高いため、依頼先はどのようなITベンダーでもよいというわけではない点に注意が必要です。

弊社では、高精度なAIモデルのスピーディな構築などを可能にする「AI実装支援」サービスを提供しています。AI開発のリソース確保にも適したサービスとなっていますので、ぜひご活用ください。

データ提供者のプライバシーへの配慮

研究者にとって、質の高い豊富なデータにアクセスできるかどうかは重要なポイントです。

今後は各企業が個別に整えたAI活用基盤だけでなく、業界全体で利用できるプラットフォームへのニーズも高まっていくと予想されます。電子カルテなどの医療データを標準化し、相互に連結して利便性の高いエコシステムを構築するイメージです。

これを実現するには、医療データ提供者のプライバシー保護についても考えなければなりません。現在は、そのための法整備などが進められている段階です。個々の製薬企業にとっても、これから業界内で協力しながら解決していかなければならない課題になっていくといえるでしょう。

スキルを備えた人材の確保と育成でAI創薬はますます加速する

DXへと向かう世界的な動きのなか、AIは創薬プロセスにも大きな変化をもたらしています。今後もさらなる発展が期待されており、AI技術を備えた人材の必要性は高まっていくでしょう。

AI開発のリソース確保には、弊社の「AI実装支援」サービスをぜひご活用ください。また、AI創薬を成功させるには、研究者自身がAIを使いこなすことも大切です。AIの知識・スキルを短期間で身につけるには、「AI_STANDARD」の2つの講座もお役立てください。

詳しい資料は、下記の「資料ダウンロード」よりご覧いただけます。

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