【2021年最新版】SIer各社のDX動向まとめ
これまでSIerは、ユーザー企業からの発注された要件に沿ってシステムを開発するというスタイルでビジネスを推進してきました。
しかし、”2025年の崖”を越えた先のDX(デジタル・トランスフォーメーション)時代では、破壊的な変化に柔軟に対応することができない従来の開発スタイルに頼ったビジネス展開は難しくなると考えられます。
多くのSIerがDX時代を見据えた取り組みを本格化させられていない中、先行する大手各社では従来型SI案件を受託するビジネスとは一線を画した、新たな取り組みが活発化しています。
今回は、DXに取り組むSIer各社の最新動向をご紹介します。
SIerにおけるDXの必要性
昨今、企業が競争力を高めるための手段として、あらゆる産業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が求められています。政府としても、ガイドラインの公開やDXに対する補助金の予算化など、強力に企業のデジタル変革を後押ししています。
DXとは、平たく言えば「ITを活用して、変化に対応しながら新しいビジネス・価値を創出し続けること」です。このような特性を踏まえると、単に一時的な課題への対応である従来型SI案件のように、企業のIT部門とのやり取りのみで要件を詰めてから開発するスタイルでは、DX時代における破壊的な変化に柔軟には対応できないと考えられます。
そのため、SIerが今後のユーザー企業のDXにおけるパートナーとなるためには、これまでとは異なるスキルを持つ、DXのプロフェッショナル人材を抱えることが必要になってくるのです。
SIerがDXへの取り組みを本格化できない要因
一方、SIerを取り巻く環境を見ると、“2025年の崖”を控えて、ユーザー企業からは既存システムの更改ニーズが高まっています。実際、そのニーズを捉えた従来型SI案件の受注が好調なSIerは多いものの、現状はDX人材の育成が進んでいないため、DXに関わる案件の獲得は十分できていないのではないでしょうか。
さらに従来型SI案件が活況で、IT人材の稼働に余力はないことも加わり、将来のDX案件に対応できる人材の育成も十分実施できていない状況が多くのSIerで見られます。
このような環境にあることが、将来的なDX人材の必要性は十分認識しながら、多くのSIerがその確保に向けた取り組みを本格化することができていない要因と考えられます。
関連記事:DX時代にSIerは不要?DX時代に求められる役割とは
DXに取り組むSIerの最新動向
しかしながら、先述のような環境下でも、先行する大手各社ではDXに関わる提携やジョイント・ベンチャー設立、新規事業開始などのこれまでのビジネスとは一線を画した新たな取り組みを着実に進めている例も見られます。
日立ソリューションズ
日立ソリューションズでは、独自の自然言語処理AIの技術を保有していましたが、ユーザー企業側ではAIで解決する課題の設定がなされていないために、導入がAIの性能検証(PoC)に留まり、本格的なDX案件に繋がらない事例が多く存在していました。
そこで、AIやDXのコンサルテーションで実績を有する企業との間で、DXの課題と解決策を整理するコンサルティングに関する業務提携を実施し、DXの案件獲得を目指しています。
出典:「ビジネスデータから価値を創出し、DXを実現する「活文」のAIソリューションを強化」
野村総合研究所
野村総合研究所では、「顧客との価値共創によるDXビジネスの創出と拡大」を成長戦略の一つとして位置付け、近年大手企業各社とのDXビジネスを実現するためのJV(ジョイント・ベンチャー)設立を加速させています。
いずれもユーザー企業の要求仕様に応じたシステムを構築するのではなく、ITを活用した新たなビジネスの立ち上げに向けて、SIer自らリスクを取った資本参加を行っています。
出典:「日本航空と野村総合研究所、共同出資会社「JALデジタルエクスペリエンス」を設立」
アクセンチュア
アクセンチュアでも、事業会社とのジョイント・ベンチャーを設立し、デジタル技術を駆使した新規ビジネスの創造や大規模な事業変革に取り組んでいます。
まず、2018年には関西電力との合弁でK4 Digital株式会社を設立しました。アクセンチュアは、元々委託契約として、関西電力のDX推進を支援していましたが、「業界内での競争に勝つという意味では、スピード感も意識しなければならない。そこで、通常の委託契約ではない形、ジョイントベンチャーがベストな選択であるという考えに至った」としています。
さらに、2019年には、味の素デジタルビジネスパートナー株式会社を味の素との合弁で設立しました。同社は、味の素のコーポレート組織(人事、総務、広報、調達など)が持つオペレーション業務を集約し、一貫して担っています。
JV設立によって、味の素単独では実現できない革新的な業務改革を実現しうると同時に、一層付加価値の高いプロフェッショナル人財の育成を実現できると判断し、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)や人工知能(AI)を活用した、先進技術の活用で、業務の高度化・効率化を推進するとしています。
出典:「Forbes 受発注の関係、垣根を超えて-辿り着いた、真のパートナーシップ」
出典:「味の素株式会社とアクセンチュア株式会社、味の素㈱のオペレーション業務変革を目的とした合弁会社設立に合意」
富士通
富士通では、2019年にDXコンサルティングを行う新会社構想を発表しました。その後、2020年4月に「Ridgelinez(リッジラインズ)株式会社」を設立し、約300名の体制で事業を開始しています。設立に伴っては、富士通や富士通総研からの移籍に加えて、外資系のコンサルティングファーム等からもDX人材の積極的な獲得を行いました。
Ridgelinezは、「SIerになろうとしているわけではないため、SIはやらない。その部分は、富士通グループをはじめとした他社の力を利用する」としており、従来型SI案件で売上を上げるビジネスとは一線を画した形でのDXに関わる事業展開を目指しています。
出典:「日本企業のために日本の文化・歴史に根ざしたDXを提案する――、Ridgelinezが説明した、これまでとこれからの取り組み」
SIerのDXの進め方
自らリスクを取って顧客企業のDXを実現するパートナーになると考えると、自社にはまだ遠いと感じられるSIer各社も多いと思います。しかしながら、上記のような取り組みを進めている大手各社も一足飛びで上記のような取り組みに至ったわけではありません。
ユーザー企業とジョイント・ベンチャーを設立しているアクセンチュアや野村総合研究所においても、その前段階として、各社とDXにおける協業などの取り組みを行い、DXに関する知見やスキルを蓄積し、ビジネスパートナーとしての協力関係を構築した上で、現在に至っています。
富士通発のRidgelinezも6~7割の案件は富士通や富士通総研の顧客とのビジネスから始まっています。
つまり、着実にDXスキル獲得・人材育成に対して投資を行い、DX案件獲得、DX案件遂行・ナレッジ獲得という流れを、一歩一歩進めていった結果として実現されている姿なのです。
SIer各社は、業績が好調である今を逃さず、まずはDXスキル獲得のための人材育成から取り組みを進めることが重要となってくるのではないでしょうか。
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