【マスコミ業界でのAI活用事例】激変する市場環境への対応
マスコミ業界について
マスコミ業界について、ここでは主に新聞、テレビ、ラジオの3つの媒体を挙げます。新聞は安価で詳細な情報を手に入れられます。また、特徴の1つとして地域密着性があり、地元紙は非常に支持されています。テレビは多くの視聴者を有するために非常に大きな影響力を持っています。ラジオには他のことをしながら聞くことができるという特徴があります。また、質の高い双方向性のコミュニケーションも促進しています。
総務省が発表している『令和元年度版 情報通信白書』によると、情報通信産業の実質GDPは99.8兆円と全産業の10.2%を占めており、全産業の中でも最大の規模を誇ります。その情報通信業の中でも、マスコミ業界を示す放送業と映像・音声・文字情報制作業は合計9.7兆円と高い売上比率を占めています。
このように、マスコミ業界は多くの生活者に多様な情報を伝達する役割を担っており、社会的役割が非常に大きいです。
また、ここ数年ではSNS、YouTubeや動画配信サービスなどが急速に台頭してきており、マスコミ業界に匹敵する影響力も持ち始めています。それに伴ってマスコミ業界の市場環境や規模も大きく変化しています。
これからも、5G、AIやIoTの進歩によって、この傾向はより一層大きくなることが見込まれます。そのため、マスコミ業界の各企業はこの激変する市場環境に対応する必要に迫られています。
マスコミ業界の課題
現在のマスコミ業界が抱えている課題は大きく下記の2つが挙げられます。
1. 報道までの効率化と自動化
2. 利用者の維持と増加
ひとつずつ見ていきましょう。
報道までの効率化と自動化
マスコミ業界は生活者に非常に大きな影響を与えています。そのため、質の高い情報を発信することが求められ、それに伴って膨大な時間と人的労力を必要とします。
新聞業界では非常に激務であることが問題となっています。決まった勤務時間がなく、長時間の残業が当たり前となっており、社員への負担が計り知れません。そのため、AIを活用して、取材、執筆などにおける効率化と自動化が求められています。
テレビ業界においても、テレビ番組の制作には出演者だけでなく、撮影現場で多くの職種の人が関わっているため、多くのお金と時間がかかっています。例えば、2時間の特番では企画、ロケ、編集、プレビュー、本編集などを含めると、1年かかることもあります。一方でYouTubeなどの動画作成は少人数で数日で終わらせることが可能です。実際に、ある有名YouTuberは1本平均50万回再生されるクオリティの動画を毎日投稿しています。1000万回を超える動画もいくつかあります。
このように、マスコミ業界では、高い質を保ったままAIによる効率化と自動化を進めていく必要があります。
関連記事:【AIによる画像認識の活用事例】画像認識による高精度・高効率な仕事
利用者の維持と増加
マスコミ業界では、ここ数年台頭してきているSNS、YouTubeや動画配信サービスなどのコンテンツに利用者が流れていることが課題となっています。
特に若年層は動画を見る際に、好きな時間に見ることのできるストリーミングコンテンツとして、YouTubeやニコニコ動画を利用し、時間が制約されるテレビを利用する人が減ってきています。
また、コロナ禍ではテレビ番組を見る人が増えた割合よりも、無料動画を見る人が増えた割合の方が多くなっているということも課題として挙げられます。
そのため、AIを活用して、利用者と接点を多く持つようなマルチチャネル化を進めることで、利用者と積極的なコミュニケーションを取る機会を増やすことが求められます。
マスコミ業界におけるAIの活用事例
AIによる記事要約の自動化
AIを活用することで、マスコミ業界における、社員への負担が非常に大きいという課題を改善することができます。業務が効率化されることで、社員の満足度の向上にも繋がるでしょう。
※赤字箇所が実際に掲載された箇所です。編集者と同レベルの要約ができています。従来の技術と比較しても、記事冒頭以外からも要約すべき箇所を抽出できています。(引用元:FUJITSU JOURNAL)
事例
信濃毎日新聞社が富士通研究所と共同で、ネット発信する記事の自動要約をAIで行いました。
課題
ニュースのネット配信では、記事を要約する過程で重要な部分を人が見て判断する必要があり、時間がかかっていました。また、従来の自動要約方法として、記事の冒頭から数文を抜粋する「LEAD法」がありますが、重要な部分が冒頭以外にもある際に抽出しきれないことが課題でした。
解決策
自然言語処理技術と機械学習を導入することで、それぞれの文に点数をつけて重要度を評価しました。記事の冒頭以外にある重要な部分も抽出でき、高い精度で要約できるようになりました。
効果
一件につき3分〜5分かかっていた記事の要約を瞬時に終わらせることができるようになり、従来よりも約5割の時間短縮がされました。(参照元:記事要約をAIで瞬時に!ネット配信をスピードアップする技術)
AIアナウンサーの導入による番組制作の効率化
マスコミ業界では、高い質の情報を発信するために、非常に多くの人的労力を必要とすることが課題となっていました。AIアナウンサーを導入することで、それに伴う多くの作業が省力化され、業務効果が大きく向上されました。(引用元:specteeホームページ)
事例
高知県の地上波テレビ局が株式会社SpecteeのAIアナウンサー「荒木ゆい」を番組アナウンサーに起用しました。
課題
従来の番組制作における音入れ作業では、アナウンサーなどの音声収録に関わる社員の人員確保とスタジオスケジュールの調整が課題でした。
解決策
文章を音声に変換する「Text to Speech」技術に深層学習を活用することで、一般的なスペックのパソコンでも原稿の入力のみでアナウンス音声を作成できるようになりました。
効果
スケジュール調整が必要なくなり、作業が省力化されました。社員の拘束時間も削減され、業務効果も大きく向上しました。(参照元:AIアナウンサー「荒木ゆい」を地上波テレビ局が採用。放送現場の働き方が変わる?)
AIチャットボット導入による利用者の増加
利用者がSNS、Youtubeや動画配信サービスなどの他のコンテンツに流れていることが課題となっているマスコミ業界では、利用者を保つことと増やすことが大切になっています。利用者が簡単にアクセスできて、コミュニーケーションができる場を増やすことで、利用者の増加が見込めます。
事例
ニッポン放送がラジオ番組のリスナーとコミュニケーションを活発化させるために、LINEでのAIチャットボットを導入しました。
課題
最近ではスマホを利用してラジオを聞く人が増えており、ハガキを送るハードルが高くなってきました。そのため、応募も少なくなり、コミュニケーションが発生しづらくなっていました。
解決策
レスポンスが早くて安心感があり、リスナーに情報が届きやすいLINEでのチャットボットを導入しました。
効果
LINEでプッシュ通知をすると瞬時に100-200件の返事が来るようになりました。リアルタイムのユーザー参加型の企画でも応募数が一気に増え、開催のプッシュ通知によって15分で着信が100件、アクセス数も200件ありました。他の番組との差別化にもつながりました。(参照元:ラジオ番組のリスナーとのコミュニケーションをLINE×チャットボットで実現)
まとめ
マスコミ業界は社員への負担が非常に大きいことが課題として挙げられますが、AIの活用によってこの先大きく改善されることが期待されます。
また、マスコミ業界はSNS、YouTubeや動画配信サービスなどの他のコンテンツの台頭により、市場環境が大きく変化しています。これからの社会でも、5G、AIやIoTの進歩によって市場環境が大きく変化する傾向はより一層激しくなると見込まれるため、AIを活用して対応することが求められます。
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