DTx(デジタルセラピューティクス)とは?企業の動向と可能性 - 株式会社STANDARD

DTx(デジタルセラピューティクス)とは?企業の動向と可能性

DX・AI技術・事例解説

この記事の目次

  1. DTx(デジタルセラピューティクス)とは
  2. DTxがもたらすメリット
  3. 日本におけるDTxの動向
  4. デジタルリテラシーの獲得が新たな治療法の基盤に

デジタル技術を活用した革新が、近年さまざまな分野に広がっています。

「DTx(デジタルセラピューティクス)」は、医療や健康にデジタル技術を役立てる「デジタルヘルス」の分野で注目される技術のひとつです。患者自身が利用するスマートフォンアプリなどを介して、医療行為を支援します。

本記事では、DTxの概要とメリット、国内における動向などについて紹介していきます。

DTx(デジタルセラピューティクス)とは

DTxは「Digital Therapeutics」の略で、「デジタル治療」とも呼ばれている技術です。明確な定義はありませんが、デジタル技術で疾病の予防や診断・治療を支援するソフトウェアなどを指します。端的にいえば、患者のスマートフォンやタブレットにアプリをインストールして、治療に役立てるということです。

デジタルヘルスの分野には、歩数の計測やダイエットなどを目的としたアプリがすでに多数あります。しかし、DTxはこれらとは明確に区別されます。以下が、DTxと呼ばれるものの条件です。

– エビデンスや薬事承認が必要な「SaMD(医療機器プログラム)」に分類される
– 治療介入を目的として医師の管理下で処方される

日本国内でDTxを販売するには、その効果や安全性を臨床試験により確認したうえで、PMDA(医薬品医療機器総合機構)を通して薬事承認を得る必要があります。

DTxがもたらすメリット

DTxには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、医療にDTxを活用することで得られる、以下のようなメリットについて説明します。

– 治療の「空白」を埋められる
– 医療上の多様なニーズに対応できる
– 開発費・医療費を削減できる

治療の「空白」を埋められる

通常、医師による診察がない(いわゆる治療の「空白」)期間は、患者へのフォローを十分に行うことができません。しかし、DTxを利用すれば、患者の日々の状態をデータとして収集できます。こうしたデータがあることで経過を分析しやすくなり、治療の空白を埋めやすくなる点がDTxによるメリットのひとつです。

また、集めたデータを医師と共有することで、オンライン診療などもできるようになります。非接触・短時間での診療が可能になることから、ポストコロナ時代における医療従事者の負担軽減も期待されています。

医療上の多様なニーズに対応できる

近年では、まだ有効な医薬品や治療法が少ない疾患を治療の対象とするDTxも多く出てきています。例えば、がん患者のQOL改善やうつ病のケア、偏頭痛を対象とする製品などです。このように医療上の多様なニーズに対応できる点も、DTxを利用することで得られるメリットです。

また、薬だけでは症状が改善しにくい生活習慣病などについても、一般的な治療とDTxを併用することで効果が高まると期待されています。

開発費・医療費を削減できる

DTxの開発には、開発そのもののほかに臨床試験のためのコストもかかります。しかし、新薬開発などと比べれば、より短期間かつ低コストでの開発が可能です。これは、DTxは従来の医薬品を補完・代替するものとしても提供しやすいことを意味しています。

また、DTxには実用化後の治療費も抑えやすいという特徴があります。開発側だけでなく、患者側にもメリットがあるといえるでしょう。

日本におけるDTxの動向

日本におけるDTxの動向

DTxは、2018年に厚生労働省の「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」で取り上げられたことをきっかけに、日本でも注目されるようになりました。ここからは、国内におけるDTxのその後の動向について紹介します。

国内初のケースとなったのは禁煙治療用DTx製品

日本で初めてのDTxとして製品化されたのは、ニコチン依存症を対象とする治療アプリ「CureApp(キュア・アップ)」です。2019年に薬事申請が行われ、2020年の承認を経て、現在では禁煙外来で処方されています。

本製品を開発したのは、「株式会社CureApp」というベンチャー企業です。また同社は、国内2例目となる高血圧症の治療アプリの開発元でもあります。こちらについては、2022年秋頃から利用できるようになる見込みです。

大手製薬会社もDTx開発に積極的

大手製薬会社にも、DTx市場の拡大に向けた動きが見られます。

アステラス製薬は、2019年に米WellDoc社と共同で、糖尿病患者向けの治療アプリ「BlueStar」の開発を発表しました。日本国内のほか、アジアの一部の地域でも販売を目指しています。

塩野義製薬も同年、米Akili社とのパートナーシップにより、ADHD患者向けの治療アプリ「AKL-T01」の展開に着手しています。スマートフォンやタブレットを用いた、ゲーム形式の治療法となっているのが本製品の特徴です。

デジタルリテラシーの獲得が新たな治療法の基盤に

DTxは、データとデジタル技術を活用して疾病の予防や治療に役立てる革新的な取り組みです。今後は製薬会社や医療機器メーカーだけでなく、医療情報システムや生命保険などを扱う企業も参入して、国内のDTx市場はさらに拡大していくと予想されています。こうした動向は、特定の分野に限らずさまざまな企業が推進に取り組んでいる、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」のひとつの現れだといえるでしょう。

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