【AI導入事例】不動産業界におけるAI活用事例をご紹介
不動産業界について
不動産業界は日本国内の市場において成長を遂げてきました。財務省が発表した『法人企業統計調査(平成30年度)』によると、2018年度の国内不動産業の市場規模は46兆5,363億円で、2015年度の市場規模と比較すると約7兆円拡大しています。(参照元:年次別法人企業統計調査(平成30年度)資料)
ここまで不動産業界が拡大傾向にある理由は、2020年に開催予定であった東京オリンピックによる需要と、東京都心部が国家戦略特区に指定されたオフィスビル需要により、都心部を中心にビル建設が活発になったためです。
加えて帝国データバンクが2020年3月に発表した『「業界天気図」動向調査(2020年度見通し)』でも、「東京都心の好調な賃貸オフィス市場が継続、各社の業績をけん引する見通し」として不動産業界の好況感を抱かせるものとなっています。(参照元:「業界天気図」動向調査(2020年度見通し))
一方で業界内の課題を解決しようとAIの活用が徐々に浸透してきています。浸透してきている証拠として「不動産テック」と呼ばれる、不動産とテクノロジーをかけ合わせた新語まで生まれました。
不動産業界はこれまで当たり前として考えられてきたやり方から、テクノロジーを利用したやり方へとシフトする転換点を迎えていると言えます。
不動産業界の課題
堅調に見える不動産業界ですが、課題がないわけではありません。現在、不動産業界が抱える課題は主に下記の3つです。
1.業者の経験と勘による値段設定
2.膨大なデータの活用
3.人口減少による需要低下
業者の経験と勘による値段設定
不動産業界における家賃設定や購買価格は、これまで業者の経験と勘に頼ってきました。理由としては「マーケットが複雑である」「同一特性を持った物件を比較するためのデータ入手が困難である」「本社主導の数値的なアプローチを好まない業界の体質が存在している」といったものが挙げられます。
物件は一軒一軒違うものであり、数式やデータによって決めるものではないという考えが不動産業界には根強く残っているのが現状です。
(参照元:不動産賃貸市場への価格最適化モデルの適用)
膨大なデータの活用
不動産にはさまざまなデータが存在しています。
「公示地価」「基準地価」「路線価」「築年数」「最寄駅からの距離、徒歩時間」など多くのデータを基に金額の設定を行いますが、最後は先述した経験と勘に頼っているため、有効活用にまでいたっていません。
そのため、業者や個人によって金額が変わってきてしまうのが課題となります。さらにこうしたデータを多角的に活用するために、多くの時間を取られてしまっている点も課題です。
人口減少による需要低下
日本は少子高齢化に伴う人口減少の一途を辿っています。
国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口」によると、日本の人口は2026年に1億2,000万人を下回り、2048年には1億人を下回ると予想されています。
(参照元:平成24年版 高齢社会白書(全体版))
人口が減少することは、不動産の需要が減ることにつながります。少ない需要の中で、他とは差別化を図るための業務体系や業務の効率化、不動産そのものの質向上が求められます。
AIでできること
業務効率化
人口減少に伴う需要の低下により、不動産業界における業務効率化の必要性が高まっています。
そのため、少ない時間で顧客に的確にアプローチを行うことが必要になります。このアプローチを今後は担当営業ではなく、一部をAIに任せるという手法が取られていくとされています。
事例
神戸市内で賃貸仲介、売買仲介、不動産買取、販売、リノベーション事業などを展開している株式会社ライフデザインの事例をご紹介します。
課題
これまでは、展開している6店舗の各営業スタッフが反響対応をしてきました。しかし、営業スタッフや月によって来店率に差があることが課題となっていました。
解決策
それぞれの営業スタッフが行なっていた反響対応を一つの所に集約させて、効率化を図っていくために、イタンジ株式会社が提供するAIツール『ノマドクラウド』を導入しました。
効果
来店率が導入前は40%程だったのに対して、50%前後に改善されました。
理由はチャット形式でのメッセージのため、顧客とのやり取りを行いやすく返信がすぐに行えるようになったこと、自動で来店・内見の予約をできる機能が備わっていることが挙げられています。
反響によって顧客への対応を切り替えていき、優先度の低い顧客へは『ノマドクラウド』の自動物件提案機能を利用してさらなる効率化を図っています。(参照元:ノマドクラウド導入事例)
評価基準の標準化
不動産業界の価格設定は業者の経験や勘に頼るところが大きいのが現状です。そのため顧客は価格の妥当性や客観性を見出せないまま、契約することもあるといいます。
今後はAIの活用によって、物件の評価基準の標準化が図られていくとされています。
事例
不動産総合ディベロッパーとして、1968年から50年以上不動産業界の第一線を走っている株式会社明豊エンタープライズの事例をご紹介します。
課題
賃料設定において、開発側と管理側で基準の違いが生まれていました。そのため会社として一貫性を持った基準が必要でした。
解決策
開発側と管理側の賃料設定基準を統一するために、リーウェイズ株式会社が提供する不動産査定システム「Gate.IP」を導入しました。開発側、管理側のどちらでもない第三者の目線を取り入れることで、会社としての方向性に一貫性を保たせることを目標にしました。
効果
業者の主観ではないビッグデータを基づいた第三者目線での提案が可能になりました。
そのため、購入を検討しているお客様からの不安の声に答えられ、物件購入の材料として「Gate.IP」が利用可能となりました。
今後は不動産業界の情報開示が進んでいき、透明性の高い取引を行えるとさらなる発展を期待しています。(参照元:Gate導入事例|株式会社明豊エンタープライズ)
住居者への安心・安全の提供と利便性の向上
昨今、マンションにおけるセキュリティ需要は高まっています。
安心・安全に暮らしていくだけでなく、利便性のニーズも高まっているのが現状です。
背景にはAmazonなどネット通販の普及により、自身が不在の時でもスムーズに荷物を受け取れるようにしたいなどのニーズがあるからです。
事例
不動産開発、販売、建設請負などの事業を行なっている株式会社穴吹工務店が全国展開しているマンション入居者のニーズ対応をご紹介します。
課題
マンション入居者から「鍵の紛失・置き忘れ」に関する相談が増加していました。
加えて住居者、物流事業者、双方の負担軽減のため、利便性の高い宅配ボックスを設置したいとの要望もありました。
解決策
鍵の紛失や置き忘れがそもそも発生しないようにするために、生体認証技術を利用した顔認証によってマンション全体の利便性とセキュリティを高めます。
生体認証技術には「顔認証マンションセキュリティシステム『F-ace』」を開発し、低コストで運用を行います。
効果
マンション入居者は自分の鍵が不要になり、利便性が高まりました。
導入した顔認証システムによって、マンション共用部分のオートロック解除、エレベーターの呼び出し、宅配ボックスに届いた荷物の取り出しが生体認証によってスムーズになりました。
(参照元:オートロック&宅配ボックスに、顔認証技術を組み合わせた日本初のセキュリティサービスをパートナー企業と共創)
関連記事:【AIによる需要予測の活用事例】AIを活用して未来を作る
まとめ
不動産業界では業務効率化や入居者へのニーズに応えるためにAI導入が徐々に浸透してきています。
他の業界にはない「不動産テック」と呼ばれる造語まで出てきているため、今後もAI導入が積極的に進められていく業界と言えます。
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