経産省の「デジタルスキル標準」が示すDX人材育成の2つの指針とは - 株式会社STANDARD

経産省の「デジタルスキル標準」が示すDX人材育成の2つの指針とは

DX・AI人材育成

この記事の目次

  1. 経済産業省とIPAが策定した「デジタルスキル標準」とは
  2. 「デジタルスキル標準」が示すDX人材育成の2つの指針
  3. 「DXリテラシー標準(DSS-L)」の概要
  4. 「DX推進スキル標準(DSS-P)」の概要
  5. デジタルスキル標準に準拠したDX人材育成を行うために

DXへの取り組みが多くの企業に広がるにつれ、その推進にたずさわる人材の重要性は益々高まっています。DX人材の不足に頭を悩ませる経営者や人事担当の方も多いのではないでしょうか。

このような背景を踏まえ、経済産業省と情報処理推進機構(IPA)は2022年12月に「デジタルスキル標準(DSS)ver.1.0」を公開しました。PDFにして139ページにも及ぶその内容は、DX人材の育成や採用に役立つ指針として注目されています。

そこで本記事では、「デジタルスキル標準」の概要について説明します。また、企業が実際のDXに適用していく方法についても触れるので、併せて参考にしてください。

経済産業省とIPAが策定した「デジタルスキル標準」とは

「デジタルスキル標準」は経済産業省が、「ITパスポート試験」などを運営する情報処理推進機構(IPA)とともに策定したものです。DX推進において、どのような素養や専門性を備えた人材が必要となるかが整理されています。

DXは、データとデジタル技術を活用してビジネスを変革していく取り組みです。DXの推進は今や世界的な流れとなっており、産業全体の構造にも変化が起きつつあります。一方、日本企業の多くはDXの取り組みにおいて遅れをとっているのが現状です。その大きな要因の一つに、人材不足が挙げられます。

企業にとって人材は、変化しつつある産業構造のなかで競争力を発揮し続けるためにも欠かせない存在です。「デジタルスキル標準」は、人材不足を解消してDXを実現したいと考えている日本企業に役立つものだといえます。

あらゆる企業が活用できる指針

DXによる産業構造の変化はグローバルであり、また、さまざまなジャンルで起こっています。これに対して「デジタルスキル標準」は、特定の業界や業種に関する知識を問わないような汎用性をもたせた表現で書かれています。そのため、DX実現を目指すあらゆる企業・組織で共通的な指標として活用することが可能です。

企業ごとの違いに合わせた具体化が前提

あらゆる企業が活用可能な汎用的な表現で書かれているのは、裏を返せば、そのままの形で特定の企業に適用するのは難しい場面もあるということです。企業にはそれぞれ、他社とは違う独自の強みや特徴があるでしょう。そのため、「デジタルスキル標準」を自社のDXにあてはめる際には、企業ごとの事業の方向性に合わせて内容を具体化することが前提となります。

「デジタルスキル標準」が示すDX人材育成の2つの指針

「デジタルスキル標準」が示すDX人材育成の2つの指針

「デジタルスキル標準」は、以下の2つの指針から構成されています。

– 「DXリテラシー標準(DSS-L)」2022年3月に公表
– 「DX推進スキル標準(DSS-P)」2022年12月に公表

ここではまず、それぞれの指針の役割や構成について説明します。

社内研修にも活用しやすい「DXリテラシー標準(DSS-L)」

「DXリテラシー標準(DSS-L)」では、DXに関する基礎的な知識とスキルの標準が示されています。すべてのビジネスパーソンが対象となっており、DXに参画するために必要な学びの指針として活用することが想定されています。

誰もがDXに関するリテラシーを身につけて、当事者意識をもって変革に向けた行動をとれるようにすることが、この標準の狙いです。企業においては、研修やセミナーなど従業員向けの学習コンテンツに取り入れ、DXに向けた意思統一に役立てるのもよいでしょう。

DXリテラシー標準は、以下の4つの大項目で構成されています。

– マインド・スタンス
– Why
– What
– How

また、それぞれの項目について現場での具体的な行動や学習すべき事項の例が紹介されています。

人材育成の指針となる「DX推進スキル標準(DSS-P)」

「DX推進スキル標準(DSS-P)」では、DX推進に求められる役割とスキルの標準が示されています。専門性を発揮しながらDXを推進する人が対象となっており、企業が人材を育成・採用する際の指針として活用することが想定されています。

人材育成の枠組みにスキルの定義を結びつけ、リスキリングや実践的な学習、能力の可視化などを促すことがこの標準の狙いです。企業においては、自社のビジョンや戦略に合う人材像の具体化と、そのような人材の確保・育成に役立てていけるでしょう。

DX推進スキル標準では、以下の5つの人材類型が定義されています。

– ビジネスアーキテクト
– デザイナー
– データサイエンティスト
– ソフトウェアエンジニア
– サイバーセキュリティ

また、それぞれについてロール(役割)と必要なスキル・知識が定義されているほか、どの人材類型にも求められる「共通スキルリスト」が定義されています。

「DXリテラシー標準(DSS-L)」の概要

「DXリテラシー標準(DSS-L)」の概要

ここからは、すべてのビジネスパーソンに求められる「DXリテラシー標準(DSS-L)」を構成する、4つの大項目の内容について概要を説明していきます。

マインド・スタンス

「マインド・スタンス」の大項目の内容は、大きく2つに分けられています。

1つ目は、新たな価値を生み出す基礎としてのマインド・スタンスで、以下の4項目です。

– 変化への適応
– コラボレーション
– 柔軟な意思決定
– 事実に基づく判断

2つ目では、デザイン思考やアジャイルな働き方として、以下の3項目が定義されています。

– 顧客・ユーザーへの共感
– 常識にとらわれない発想
– 反復的なアプローチ

これらの項目は、変化する社会のなかでも企業が新たな価値を生み出し続けるために、各自にどのような意識や姿勢・行動が求められるのかを示しています。

Why:DXの背景

「Why」の大項目は、DXの必要性や重要性についての理解を求める「背景」にあたる内容です。社会・経済や人々の価値観といったビジネス環境の変化について知るための、以下の3項目が定義されています。

– 社会の変化
– 顧客価値の変化
– 競争環境の変化

各項目には、それぞれに対応する学習項目の例が示されています。また、なぜDXを推進する必要があるのかを各自が理解することが、学習のゴールとなります。

What:DXで活用されるデータ・技術

「What」の大項目は、DXで活用されるデータ・技術に関するものです。データとデジタル技術について知っておくべき内容が、それぞれ4項目に分けて定義されています。

データ:
– 社会におけるデータ
– データを読む・説明する
– データを扱う
– データによって判断する

デジタル技術:
– AI
– クラウド
– ハードウェア・ソフトウェア
– ネットワーク

上記はいずれも、DX実現の「手段」として活用されるものです。そのため、常に最新の情報を含めて学習し、知識を深めておくことが大切です。

How:データ・技術の利活用

「What」が知っておくべき項目であるのに対し、「How」では業務遂行やツールの利用に関することが挙げられています。活用事例・利用方法として2項目、留意点として3項目が定義されています。

活用事例・利用方法:
– データ・デジタル技術の活用事例
– ツール利用

留意点:
– セキュリティ
– モラル
– コンプライアンス

上記の内容は、DXに参画するにあたってデジタルツールを適切に用いるスキルの習得が重要となることを示しています。

「DX推進スキル標準(DSS-P)」の概要

「DX推進スキル標準(DSS-P)」の概要

ここからは、DXを推進する人に求められる「DX推進スキル標準(DSS-P)」に定義されている、5つの人材類型の概要についてそれぞれ説明していきます。

ビジネスアーキテクト

「ビジネスアーキテクト」は、DXによって何を実現したいのかを明確にしたうえで、その実現に向けて行動できる人材のことです。必要に応じて関係各所と連携するとともに、目的実現のプロセスを一貫して推進することが求められます。

ビジネスアーキテクトは取り組むテーマの違いにより、以下の3つのロールに分けられています。

– ビジネスアーキテクト(新規事業開発)
– ビジネスアーキテクト(既存事業の高度化)
– ビジネスアーキテクト(社内業務の高度化・効率化)

デザイナー

「デザイナー」は、ビジネスの視点や顧客の視点から、製品・サービスをデザインできる人材のことです。製品・サービスのコンセプトを策定したり、ユーザー体験を設計したりといったことが求められます。

デザイナーは対象とする領域の違いにより、以下の3つのロールに分けられています。

– サービスデザイナー
– UX/UIデザイナー
– グラフィックデザイナー

データサイエンティスト

「データサイエンティスト」は、データをどのようにビジネスに活用するかを考えるとともに、データを収集・解析するための仕組みを設計・実装・運用できる人材のことです。業務変革や新規ビジネスの実現において、こうしたデータ活用の戦略は重要な役割を果たします。

データサイエンティストは業務の違いにより、以下の3つのロールに分けられています。

– データビジネスストラテジスト
– データサイエンスプロフェッショナル
– データエンジニア

ソフトウェアエンジニア

「ソフトウェアエンジニア」は、製品・サービスの提供に必要となるシステムやソフトウェアの設計・実装・運用ができる人材のことです。DXの推進においては、AIやIoTといった最新のデジタル技術を活用するスキルが求められることも少なくありません。

ソフトウェアエンジニアは得意とする領域の違いにより、以下の4つのロールに分けられています。

– フロントエンドエンジニア
– バックエンドエンジニア
– クラウドエンジニア/SRE(Service Reliability Engineering)
– フィジカルコンピューティングエンジニア

サイバーセキュリティ

「サイバーセキュリティ」は、ビジネスを支えるデジタル環境において、セキュリティに関するリスクを抑制できる人材のことです。どのようなリスクが潜んでいるかを適切に評価するためには、常に技術動向を把握しながら、その内容も理解しておかなければなりません。

サイバーセキュリティは業務の違いにより、以下の2つのロールに分けられています。

– サイバーセキュリティマネージャー
– サイバーセキュリティエンジニア

デジタルスキル標準に準拠したDX人材育成を行うために

「デジタルスキル標準」に準拠したDX人材育成に取り組むためには、自社において誰がDXを推進できる人材なのかを可視化することが欠かせません。スキルのみならず、マインド面でのアセスメントも重要になるといえるでしょう。また、DX推進に必要な人材像・スキルを定義するとともに、定義した人材像を実現するための育成カリキュラム策定や実施も必要です。

弊社では、これまで700社以上のDX人材育成実績で培ったノウハウを基に、企業が目指すDX人材像や要件レベルをデジタルスキル標準に準拠した形でアセスメント・トラッキングできるようにすることで、人材成長に合わせた実践型育成カリキュラムを通じて企業ごとに最適化されたDX人材を創出できるサービスを提供しています。詳しい資料は、下部「ダウンロード」ボタンより無料でご覧いただけます。

デジタルスキル標準に準拠したDX人材像とスキルの定義、カリキュラム策定の進め方
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